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2022.09.21
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カテゴリ: メディア
「内田樹の研究室」の内田先生が日々つづる言葉のなかで、自分にヒットするお言葉をホームページに残しておきます。
内田

最近は池田香代子さんや、関さんや、雨宮さんなどの言葉も取り入れています。
(池田香代子さんは☆で、関さんは△で、雨宮さんは○で、池田信夫さんは▲、高野さんは■で、金子先生は★、田原さんは#、湯浅さんは〇、印鑰さんは@、櫻井さんは*、西加奈子さんは♪で区別します)

・統一教会、安倍国葬について他
・安倍政治を総括する
・選挙と公約
・無作法と批評性
・徒然草 訳者あとがき
・勇気について

・「アウトサイダー」についての個人的な思い出とささやかな感想
・コロナ後の世界 
・格差について
・『コロナ後の世界』まえがき
・紀伊田辺聖地巡礼の旅
・成長と統治コスト
・『日本習合論』中国語版序文
・日本のイデオクラシー
・後手に回る政治
・倉吉の汽水空港でこんな話をした。

(目次全文は ここ

(その47):『統一教会、安倍国葬について他』を追記
********************************************************************



2022-09-12 統一教会、安倍国葬について他 より
―安倍さんを「嫌韓」と思っていた勢力は、実は安倍さんが反日的な韓国の団体と親しかったと判明し、「親韓」にすら見えかねない。

内田 安倍元首相の韓国に対するスタンスは、ネトウヨの感情的な「嫌韓」とはかなり異質なものだったと思います。彼の場合は感情的な「嫌韓」でも「親韓」でもない、もっと複雑なものです。とりあえず彼にとって優先するのは、国と国との関係じゃなくて、誰が自分の味方で、誰が敵かということです。自分に反対する人間は自国民であっても敵だし、自分を支援する人間は隣国の人間でも味方である。そういう人のことを「ナショナリスト」とは言いません。

―岸首相のころから韓国とは反共で提携してきたわけですが。

内田 僕の遠い親戚に平野力三という人がいました。戦前は農村組合の活動家で、戦後は社会党の片山哲内閣の農相を務めた政治家でしたが、彼のオフィスに朴正煕大統領からの贈り物の金と翡翠の置物が飾ってありました。どうして社会主義者のはずの人が朴大統領と繋がりがあるのか訊いたら「君らには分からないことがいろいろあるんだ」と笑っていました。反共主義の日韓ネットワークはかなり幅広く、奥の深いものであることだけは分かりました。

 朴正煕は日本の陸軍士官学校の出身で、関東軍に配備された後に満洲国軍中尉で終戦を迎えています。大日本帝国の軍人的エートスがかなり深く浸み込んでいる。ですから、大日本帝国への回帰を夢見る日本の右翼と体質的に親和性があっても不思議はありません。ただ、韓国民に根強い反日感情を配慮して、親日的と解されかねない言動についてはきびしく自制していたのだと思います。1965年の日韓基本条約については韓国内ではこれを「売国的」な条約だとして、激しい反対運動があったわけですけれど、朴大統領は強行採決した。おそらく、条約が締結された場合に見返りとして巨額の政治資金の提供を日本側が大統領に約束したからでしょう。

 でも、こういう日韓の権力者間のアンダーグラウンドのつながりについては、当時の日本人たちはほとんど知らなかった。もちろん野党やメディアの調査力が弱かったということもありますけれど、おおかたの日本人は日本と韓国が複雑なパワーゲームをしているという事実そのものに興味がなかったか、興味がないふりをしていた。

 韓国の最初の大統領李承晩は日韓併合時代はアメリカにいて、現実の日本人との交渉経験のなかった人物です。ですから、李承晩の対日政策は非常に敵対的、硬直的なものでした。それに比べると、朴正煕の対日政策はもっとリアルで複雑なものだったと思います。でも、李承晩から朴正煕へのシフトによって日韓関係がその後どういうふうにねじれてゆくのかを理解していた人は、両国のインターフェイスにいた一握りの「フィクサー」たちを除くと、日本の一般国民の中にはほとんどいなかったと思います。事情は韓国でも同じでしょう。日韓の両国民ともが日韓の権力者の間には入り組んだ利害関係があるというような話は知らなかったし、知りたくもなかったんだと思います。





2022-09-01 安倍政治を総括する より
この10年間で日本の国力は劇的に衰えた。
 経済力や学術的発信力だけではない。報道の自由度、ジェンダーギャップ指数、教育への公的支出の対GDP比ランキングなどは「先進度」の指標だが、そのほとんどで日本は先進国最下位が久しく定位置になっている。
 だが、「国力が衰えている」という国民にとって死活的に重要な事実そのものが(報道の自由度の低さゆえに)適切に報道されていない。安倍時代が残した最大の負の遺産は「国力が衰微しているという事実が隠蔽されている」ということだろう。
 国力はさまざまなチャートでの世界ランキングによって近似的には知られる。1995年世界のGDPで日本は17・6%だったが、現在は5.6%である。1989年の時価総額上位50社のうち日本企業は32社だったが、現在は1社。経済力における日本の没落は顕著である。だが、日本のメディアはこの経年変化についてはできるだけ触れないようにしている。だから、多くの国民はこの事実そのものを知らないか、軽視している。それどころか、政権支持者たちは安倍政権下でアベノミクスが成功し、外交はみごとな成果を上げ、日本は世界的強国であるという「妄想」のうちに安んじている。
 安倍時代における支配的なイデオロギーは新自由主義であった(今もそうである)。すべての組織は株式会社のような上意下達組織でなければならない。「選択と集中」原理に基づき、生産性の高いセクターに資源を集中し、生産性の低い国民はそれにふさわしい貧困と無権利状態を甘受すべきだ。そう信じる人々たちが法案を作り、メディアの論調を導いて来た。
 その結果がこの没落である。だが、誰も非を認めない。すべては「成功」したことになっている。それは、政権与党が選挙に勝ち続けたからである。安倍元首相は6回の選挙に勝利した。しばしば圧勝した。それは「国民の過半は安倍政権が適切な政策を行ってきたと判断した」ことを証し立てていると政府は強弁した。
 たしかに株式会社ではトップに全権が与えられる。トップのアジェンダに同意する社員が重用され、反対する社員ははじき出される。それが許されるのは、経営の適否についてはただちにマーケットが過たず判定を下すと信じられているからである。「マーケットは間違えない」というのはビジネスマンの揺らぐことのない信仰である。社内的にどれほど独裁的な権力をふるう経営者であっても、収益が減り、株価が下がれば、ただちに退場を命じられる。
 国の場合であれば「国際社会における地位」が株価に相当するだろう。経済力、地政学的プレゼンス、危機管理能力、文化的発信力などで国力は表示される。その点で言えば「日本株式会社の株価」は下落を続けている。しかし、安倍政権下で経営者は交代させられなった。もし、経営が失敗し、株価が急落しているにもかかわらず、経営者が「すべては成功している」と言い続け、それを信じた従業員たちの「人気投票」で経営者がその座にとどまりつづけている株式会社があったとすれば(ないが)、それが今の日本である。


もう少し見てみましょう。

 国の場合であれば「国際社会における地位」が株価に相当するだろう。経済力、地政学的プレゼンス、危機管理能力、文化的発信力などで国力は表示される。その点で言えば「日本株式会社の株価」は下落を続けている。しかし、安倍政権下で経営者は交代させられなった。もし、経営が失敗し、株価が急落しているにもかかわらず、経営者が「すべては成功している」と言い続け、それを信じた従業員たちの「人気投票」で経営者がその座にとどまりつづけている株式会社があったとすれば(ないが)、それが今の日本である。
 新自由主義者たちは「マーケットは間違えない」と言い張るが、彼らが「マーケット」と言っているのは国際社会における評価のことではなく、選挙結果のことなのである。選挙で多数派を占めれば、それはすべての政策が正しかったということなのだと彼らは言い張る。
 だが、選挙での得票の多寡と政策の適否の間には相関はない。亡国的政策に国民が喝采を送り、国民の福利を配慮した政策に国民が渋面をつくるというような事例は枚挙にいとまがない。政策の適否を考量する基準は国民の「気分」ではなく、客観的的な「指標」であるべきなのだが、安倍政権下でこの常識は覆された。
 決して非を認めないこと。批判に一切譲歩しないこと。すべての政策は成功していると言い張ること。その言葉を有権者の20%が(疑心を抱きつつも)信じてくれたら、棄権率が50%を超える選挙では勝ち続けることができる。
 安倍政権が最終的に終わったのはパンデミック対策に失敗したからである。人間相手なら「感染症対策に政府は大成功している」と言って騙すことはできるが、ウイルスに嘘は通じない。科学的に適切な対策をとる以外に感染を抑制する手立てはない。
 安倍政権下で政権担当者たちは「成功すること」と「成功しているように見えること」は同じことだと本気で信じ始めていた。だから、「どうすれば感染を抑えられるか」よりも、「どうすれば感染対策が成功しているように見えるか」ばかりを気づかった。東京五輪の強行に際しても、「感染症が効果的に抑制されているように見せる」ことが優先された。それを有権者が信じるなら、それ以上のことをする必要はないと思っていたのだ。今の岸田政権もたぶんそう思っている。
 パンデミックについても、気候変動についても、東アジアの地政学的安定についても、人口減少についても、トランス・ナショナルな危機に対してこの10年間日本はついに一度も国際社会に対してついに指南力のあるビジョンを提示することもできなかった。
 司馬遼太郎は日露戦争から敗戦までの40年間を「のけて」、明治の日本と戦後の日本を繋ぐことで敗戦後の日本人を自己嫌悪から救い出そうとした。その風儀にならうなら、安倍時代という没落の時代を「のけて」、10年前まで時計の針を戻して、そこからやり直すしかない。




以降の全文は 内田先生かく語りき38 による。





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Last updated  2022.09.21 00:08:55
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