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2023.05.13
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カテゴリ: カテゴリ未分類
図書館で『タイワニーズ』という本を、手にしたのです。
温又柔、余貴美子、陳舜臣、蓮舫など、この本が取り上げている在日台湾人がええわけです。


【タイワニーズ】

野嶋剛著、小学館、2018年刊

<「BOOK」データベース>より
日本は台湾を二度も捨てた。それでも彼らがいたから、強く、深くつながり続けた。在日台湾人のファミリーヒストリー。

<読む前の大使寸評>
温又柔、余貴美子、陳舜臣、蓮舫など、この本が取り上げている在日台湾人がええわけです。

rakuten タイワニーズ


温又柔は以前から気になる作家であったが、そのエッジはいかにして鋭いのか、見てみましょう。
p118~122
<おかっぱの喧嘩上等娘、排除と同化に抗する温又柔>
 名前も外見も穏やかそうに見えるが、いつでも「戦闘モード」にスイッチが入る。話していても、反応の一つひとつに、妙な鋭さと、緊張感が、匂ってくる。
 台湾出身の「ニホン」語作家・温又柔。
 日本語では「おんゆうじゅう」。本人いわく「おまんじゅうに似た響き」。中国語では「うぇんようろう」となる。こちらも可愛い響きだ。しかも、中国語の「温柔」は「優しい」を意味する。「キラキラネームみたいです」。これも本人の弁だ。

 彼女との出会いは、2012年だったと思う。台湾文学関係のイベントでゲストとして同席したときのことだった。温又柔は『来福の家』を発表した作家として、私は台湾社会や歴史に詳しいジャーナリストとして、ともに登壇した。
 おかっぱの小さな女の子がいて、人当たりも丁寧だな、という印象しかなく、彼女の根っこにある文学的闘争のエネルギーに気づくことはなかった。

 しばらくしてから、温又柔のエッセイ『台湾生まれ 日本語育ち』を手に取った。中国語の言語環境における表現の「揺らぎ」をテーマに、言葉と人間の関係に深く切り込んだ文章に、いままでにない独特な視座を感じた。

 温又柔は過程で使われていた「日本語」「中国語(北京語)」「台湾語」の3言語の世界で、複数言語を行き来することを楽しむセンスを自然に体得しており、なかでもリズミカルで楽しげに聞こえる台湾語の音を巧みに文章化していた。

 台湾、香港、アモイ、シンガポールといった、北京語、福建語、広東語などが入り乱れた複雑な中国語環境でそれなりに長い生活歴のある私が、実は長年書きたいと思っていた話を「先にやられてしまった」といういささかの悔しさもあった。
 この本とは別のところに温又柔が寄せたエッセイには、こんなくだりがある。
〈日本語では、タイワンと尻下がりのイントネーションで発音するのがふつうだろう。タイワンの『ワン』を、ワーンと平らに伸ばして長めに発音すると、途端に中国語っぽくなる。『タ』を少々濁らせて『ダイ』と『ワン』をそれぞれ低く抑え込みながら言えば、もう立派な台湾語〉(「音の彼方へ」/「すばる」2012年8月号)

 これは、台湾や香港、あるいは海外華僑・華人などが使う「辺境の中国語」に触れるチャンスがないと分かりにくい世界だ。そして、中国語世界から離れて生きている人にとってはまったくどうでもいいことかもしれない。
 しかし、台湾とそれなりに近いところで生きている私のような人間にとっては、けっこう切実で、身近で、楽しい問題である。

 台湾という、ともすれば重苦しい論述になってしまいがちなテーマで、こうした微妙なところを、さらりとエッセイにできる作家の登場に私は身震いするところがあった。『台湾生まれ 日本語育ち』はのちに日本エッセイスト・クラブ賞が与えられた。

<怒りこそ創作を生む>
 温又柔のエッセイを読んでいてわかったもう一つのことは、この作家の表面的なイメージに、やすやすと騙されてはいけない、ということだ。
 小学生の頃から基本変えたことがないというキノコのようなおかっぱの髪型。
 どうしても警戒心を解いてしまいがちだが、実際のところ、彼女は、優しさの対極にある「怒り」をエネルギーを創作に向かう。『台湾生まれ 日本語育ち』を読んでいて、そのことに気付かされた。

 その「怒り」の根源にあるものと、向けられる対象を考えることが、私にとっての温又柔理解のアプローチとなった。
 温又柔には怒りを向ける相手を常に探している「意地の悪さ」がある。それは、自分の文学が「敵」とするものがわかっているからだ。
 インタビューで本人にその点をただしてみると、嬉しそうに「そこを見てくださって、ありがとうございます」と、満面の笑みをもらった。

 人畜無害な外見と地雷つきの文学。この落差が温又柔の持ち味である。
 温又柔の家庭にはそれほど複雑な要素がない。両親は、温又柔いわく「ばりばりの本省人。職人だった祖父は国民党が大嫌いで、台湾社会ではマジョリティの人々です」。

 父は、知人や家族と電子部品関係の会社を立ち上げ、日本での仕事を受け持つことになり、温又柔が3歳のときに日本に渡った。両親とも日本語能力はないに等しかったが、台湾の人たちは、それでも日本に気軽にやってくる。日本と台湾の距離は、特に台湾の人たちにとって、日本人が想像するよりはるかに近い。

 やがて廉価な労働力から会社の生産拠点を置くようになった中国にも父は長期出張を重ねるようになる。これも台湾人家庭の一つの典型でもある。
 幼い頃は自然に中国語と台湾語を使いこなした。家庭では、中国語と台湾語が混ざったうえに、日本語が重なる言語環境で育った。温又柔にとっては母語という感覚はあいまいだ。人生のなかで、最初になじんだのは中国語と台湾語だった。

 しかし日本で暮らすにつれ、次第に日本語が頭の中に「侵入」を始めた。中国語や台湾語は、ますます台湾人らしくなくなり、日本語が「言語」の中心にどっかと座るようになった。楽に話せるのは日本語になり、文章も日本語で書く。

 中学3年で選んだ進学先の高校は中国語が学べる新設校。そこで使ったテキストは簡体字という中国大陸で使用される文字だった。台湾の繁体字という旧字体ではなかった。母親は温又柔のテキストを読むことすらできなかった。
 温又柔にとって、しばらく離れていた中国語世界との再会であり、同時に、最初の中国語世界との「ずれ」との出会いでもあった。 


以前に読んだ『台湾生まれ 日本語育ち』という作品を紹介します。

【台湾生まれ 日本語育ち】

温又柔著、白水社、2016年刊

<「BOOK」データベース>より
3歳から東京に住む台湾人作家が、台湾語・中国語・日本語、三つの母語の狭間で揺れ、惑いながら、自身のルーツを探った4年の歩み。

<読む前の大使寸評>
著者の母語体験や台湾語と中国語の違いが語られているそうで・・・興味深いのです。

<図書館予約:(9/22予約、10/19受取)>

rakuten 台湾生まれ 日本語育ち

『台湾生まれ 日本語育ち』1 :わたしのニホン語事始め





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Last updated  2023.05.15 06:26:50
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