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2024.09.02
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『世界(2024年7月号)』という雑誌を、手にしたのです。
特集2「日本の中の外国人」が・・・気になるのです。

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雑誌、文藝春秋、2024年刊

<出版社>より
【特集2】日本の中の外国人
 日本に暮らす外国人は340万人を超える。働く現場は、小売、流通、介護、製造、建築、農業、漁業など多岐にわたる。だが、その法的地位は常に不安定だ。奴隷労働との批判が強かった「技能実習制度」に代わり、新たに「育成就労制度」が創設されるが、看板と実態には依然へだたりがある。容易に永住権取り消しができる入管法改正案も準備され、安定して日本で暮らす人々も生活をおびやかされている。難民の受け入れは依然として少なく、3回目以上の申請は強制送還が可能に。排外主義からくるヘイトにさらされる人々もいる。

<読む前の大使寸評>
追って記入

iwanami 世界(2024年7月号)



まず特集2「日本の中の外国人」で埼玉クルド人コミュニティを、見てみましょう。
クルド人移民やマイノリティに対する街宣、フェイク情報はかくも過酷になっているのかと、暗然とするわけです。

p116~118
<埼玉クルド人コミュニティ:安田浩一>
■日本語教室の内と外
 正しい日本語が仕えているかどうかチェックしてほしい・・・クルド人男性(43歳)に頼まれた。
 毎週日曜日、外国人支援団体「在日クルド人と共に」(埼玉県蕨市)が主催している日本語教室。たまたま近くにいた男性を取材しようと思っただけなのに、話しかけたら即席の“講師”をするはめになった。

 彼が“教科書”として用意していたのは『産業廃棄物叉は特別管理産業廃棄物処理業の許可申請に関する講習会テキスト』なる冊子である。
「廃石綿等及び石綿含有廃棄物」「特定粉じん排出等作業実施」といった難解な言葉が並ぶ。男性がそれをゆっくり読み上げながら、漢字の意味を私に問う。私だって、よくわからない。

―これ、日本人でも難しいです。
「でも、覚えないとね」
―なんで?
「産廃事業の管理者になりたいんです。講習会を受けて試験に通れば、許可してもらえるかもしれない」
―許可って?
「滞在」
 そう、ここでいう「許可」とは、日本での在留資格のことである。

 彼が生まれた故郷のトルコを離れたのは、いまから20年前。多くのトルコ出身クルド人がそうであるように、差別から逃れるための“脱出”だった。たどり着いた日本で難民申請を繰り返したが認められることはなく、現在は「仮放免」の身である。

 同胞の多い川口市に居を定め、難民申請中に覚えた産廃の仕事を、いつかは自身で切り盛りしたいと考えている。必要なのは、彼が言うところの「許可」だ。そのための近道が、資格取得だと信じている。
「日本の役に立つことをすれば、日本だって私を認めてくれる」
 どんな形でもいい。正規の在留資格さえ得ることができれば、仕事をすることもできる。健康保険にも入ることができる。当たり前の人間として生きることができる。自分も、妻も、子どもたちも。だから小難しいテキストを日本語教室に持ち込み、ひとつひとつの文言を頭に焼き付けているのだ。

 日本国内に住んでいるクルド人は約3000人と言われ、そのうち約2000人が川口市や蕨市など埼玉県南部に住む。仮放免者などの非正規滞在者も少なくない。
 「在日クルド人と共に」は、こうした人々に日本語を教えるだけでなく、交流の場として日曜日に事務所を開放している。温井立央代表理事によると、「日本人と普通に話したことのない人もけっこういる」のだという。

 ここに集まるクルド人は、年齢も立場もさまざまな人々だ。日常生活に不便を感じて日本語を学びに来る人がいる。学校の授業に追いつくために通う子どもたちもいる。子どものいる母親は、学校からの「お便り」を理解するために教室に足を運ぶ。

 日本人スタッフのひとりも、こう話す。
「ボランティアの日本人と会話するためだけに来ている人も多いですよ。日本語が上達したね、と声をかけるだけで、みんな嬉しそうな顔を見せてくれるんです。日常生活の中で成功体験を持たない人がほとんどですから」 
 みんな表情が明るい。「学ぶ」というより、まさに楽しんでいる。

 私の“教え子”となってしまった男性も、実は日本語能力は相当に高く、会話にはまったく不自由しない。テキストに記された「中和処理」なる文言を私に確認しながら、「中国と日本のことだと思った」と大声で笑った。

 だが・・・その数時間後、事務所の目と鼻の先で、クルド人たちの笑顔を奪い取るような醜悪な風景が広がった。
 この日(5月19日)午後、蕨市内ではクルド人排斥を訴えるヘイトデモがおこなわれたのだ。デモを主催したのは、これまで川崎駅前で在日コリアンに対する差別デモや街宣を繰り返してきた「日の丸街宣倶楽部」なる団体。旭日旗や日章旗を振り回しながら外国人に向けてヘイトスピーチを繰り返してきた“実績”を持つヘイト団体だ。

 同日のデモに参加したのは、代表の渡辺賢一氏を中心にわずか5名だったが、それでも埼玉県警は数百人の機動隊を動員。周辺の道路を封鎖しただけでなく、県警自らが“人間の盾”となって、ヘイト団体のデモを守った。
 少人数のデモであっても、地域への影響は大きい。「強〇、誘拐、危険運転」などクルド人そのものを中傷するプラカードを掲げた隊列のおかげで、少なくないクルド人はこの日、外出を諦めた。クルド料理店の前から険しい表情でデモを見ていた30代のクルド人男性は、「子どもには見せたくない」と独り言のようにつぶやいた。
 当然だろう、デモ隊は個別の「犯罪」やトラブルを理由に、クルド人全体を中傷しているだけでなく、明確に差別を煽っているのだ。

 しかも、デモはこの日が初めてではない。これまで幾度となく、蕨、川口のクルド人集住地域で繰り返されてきた。在特会(在日特権を許さない市民の会)の流れをくむ日本第一党なども、「クルド人は出ていけ」と叫びながらデモをおこなっている。5月26日にも「日本侵略を許さない国民の会」ナルヘイト団体が、「移民は日本から出ていけ!」とわめきながら、蕨、川口両市を練り歩いた。

 いずれの団体も、これまで各地で在日コリアンなどのマイノリティにヘイトスピーチをぶつけてきた差別者集団だ。外国人集住地域への理解も思い入れもなく、面白半分に差別と排外主義を煽っているようにしか見えない。だが、そのたびに旭日旗が打ち振られ、排斥が叫ばれ、ただ地域で暮らしているだけのクルド人に不安と恐怖を与える。

 5月12日に川口駅前でおこなわれた「日の丸街宣倶楽部」の街宣では、ヘイトに抗議する市民が、街宣参加メンバーから暴行されるといった事件も起きた。
 被害者の50代男性によると、同団体がヘイト街宣を終えて引き揚げる際、「早く帰れ」と抗議。すると、参加メンバーのひとりが男性の左目付近を殴打し、かぶっていた帽子も吹き飛んだという。男性は川口署に被害届を出し、現在、埼玉県警が捜査中だ。
 実は、同団体メンバーらは、過去にもヘイトデモ、街宣を繰り返すなか、同種の事件を三回も起こしている。

 被害男性が続ける。
「暴力のエスカレートを怖れます。私は日本人ですから直接的なヘイトクライムではないにせよ、クルド人差別に抗議したことで暴行を受けました。内実は差別事件でもあるわけですよ」





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Last updated  2024.09.02 00:10:09
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