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2024.10.25
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『遊牧民、はじめました。』という新書を、手にしたのです。
モンゴルといえば、今では大相撲で幅をきかせている民族であるが・・・
大草原で遊牧民として暮らしてきた民族であり、興味深いのである♪




相馬拓也著、光文社、2024年刊

<「BOOK」データベース>より
地平線の先までずっと続くモンゴルの大草原。そこに生きる“悠々自適”な遊牧民。大自然に囲まれた彼らの暮らしを想像して、一度は憧れたことがある人もいるだろう。しかし、彼らの暮らしは本当に“悠々自適”なものなのだろうか。一度で150㎞にも及ぶ遊牧、マイナス40℃を下回る極寒の冬、家畜という懐事情をご近所に曝け出した生活ー。本書では、そんな遊牧暮らしのリアルを、長年、彼の地でフィールドワークを続けてきた著者が赤裸々に綴る。ときに草原を馬で駆け、ときに大自然に牙を剥かれ、ときに遊牧民たちにどつかれる日々の中で気づいた、草原世界で生き抜くための「掟」とはー?

<読む前の大使寸評>
モンゴルといえば、今では大相撲で幅をきかせている民族であるが・・・
大草原で遊牧民として暮らしてきた民族であり、興味深いのである♪

rakuten 遊牧民、はじめました。


「第5章 ゴビ砂漠の暮らしを追う」で、過酷な砂漠暮らしを、見てみましょう。
砂漠は大使のツボでもあるわけだし。
p281~285
<5-1  砂漠の暮らしを求めて>
■モンゴルでもっとも〝辛い〟土地
 長年付き合いのあるモンゴル人助手に、「モンゴル国内で一番、環境が厳しくて辛いところに行ってみたい!」と尋ねてみると、「オブス県のテス村ってとこがあるよ」と教えてくれた。オブス湖の東側には、広大な砂漠が広がっており、少なく測っても1万km2、レバノンやキプロス島くらいのゴビが広がっている。しかも「テス」とは「辛い」という意味らしく、これは期待できそうだとなって、2016年7月に訪れることになった。

 モンゴルの砂漠というと、南方のゴビ砂漠が思い浮かぶ人も多いと思うが、モンゴル全土で砂漠のような場所はかなり多い。オブス県、ザブハン県、ゴビアルタイ県も、じつは面積の大部分が砂漠だったり荒野だったりする。モンゴルでの研究では、「人類の極限環境への適応」をテーマにしていたので、砂漠や礫砂漠への適応などの解明に期待が膨らんだ。

 そしてテス村に着いて、この場所の本当の辛さがわかることになった。テス村の北側を流れるテス河から「蚊」の大群が無数に生み出されるのだ。ロシア国境に近いオブス県は、「酷寒県」としても知られているが、まさか全国有数の蚊の大発生地帯でもあったとは、当初の意図した「辛い場所」とは、少々趣の異なる生活困難地にくることになってしまった・・・。

 この土地での暮らしは本当に辛いことがよくわかる。シベリア圏特有の見たこともないくらいの巨大な蚊が飛び回り、服の上からでも平気で刺してくる。テス村の中心集落に着いたのは17時頃だったが、車輛を降りた瞬間から蚊の大群に取り囲まれて、鼻の穴にも口のなかにも飛び込んできて、薄明薄暮の時分にはとても外で滞在できるものではなかった。全体的に辛い場所が多いモンゴル国内にありながらも、「人間と家畜の双方がもっとも生活困難な場所」と形容されるわけである。

 蚊の活動が活発となる早朝や夕暮れ時には、畜糞をいぶした蚊よけや虫よけから立ち上がる煙があちこちで見られた。家屋の入口や窓、ゲルの入口にすら網戸が設けられており、夕刻にはその網戸にも外が見えなくなるほどの蚊が張りつくようになる。

 現地では「白いヒツジが黒くなっていたが、よく見ると蚊の大群がヒツジにとまっていた」という冗談まである。ただ、これはあながち冗談とも言えず、蚊の飛来期である7~8月には、まるで黒い煙が漂っているかのように、蚊の大群が草原の空を埋め尽くす。白いゲルも蚊の付着で、くすんで見えてしまうこともある。そして、蚊は人間と家畜の双方を刺すため、家畜への影響も深刻であるのだ。

「テスの夏牧場じゃあさ、家畜が蚊を嫌がってあちこちに歩き回るもんで、すっかり体力を使い切ってぐったりしていくんだよね。とくに(蚊の来ない)風が吹いている場所とか、風上を目指して勝手に移動したがるんだよ」

 ゆえに、小家畜たちの群れの統制がきかなくなり、とくに夕暮れの集約のときには群れがつねに蚊で攪乱されているような状態に陥る。蚊を厭がって歩き回るヒツジとヤギの群れを、頻繁に宿営地付近へとどめる牧童たちの叫び声や騎馬放牧も、コミュニティのあちこちで見られた。


『遊牧民、はじめました。』4 :遊牧暮らしのイロハ
『遊牧民、はじめました。』3 :遊牧民の心
『遊牧民、はじめました。』2 :遊牧民の心模様
『遊牧民、はじめました。』1 :第一章の冒頭





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Last updated  2024.10.25 00:16:22
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