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高校の古典の授業で 「枕草子」
をお読みになりましたね。教員の立場から申し上げますと、高校生の古典との出会いというのは 「説話集」
があって、 「徒然草」
とか 「方丈記」
、女もしてみんと偽った 「土佐日記」
、そこから 「枕草子」
とやってきます。 春って曙よ!段々白くなっていく山の上のほうが少し明るくなって、紫っぽい雲が細くたなびいてんの!夏は夜よね。月の頃はモチロン!闇夜もね・・・。蛍が一杯飛びかってるの。あと、ホントに一つか二つなんかが、ぼんやりポーッと光ってくのも素敵。雨なんか降るのも素敵ね。 書き写していて、笑ってしまいますが、お分かりですね。なんか真面目でないような感じがするでしょ。
まァさ、宮中にね 「清涼殿」 ていうのがあるのよ。帝が普段いらっしゃるところでさ、いってみれば 「御殿の中の御殿」 よね。広い所でさ、ここに 「殿上の間」 っていうのがあるの。ここに上がるのを許されることを 「昇殿」 て言ってさ、それが許された人達のことを 「殿上人」 って言うのね。 「殿上の間の人達」 だから殿上人よ。これになれるのが、位が五位から上の人、そしてあと六位でも「蔵人」っていう官職についている人ならいいの。だから殿上人っていうのはエリートでさ、言ってみれば本物の貴族の証明ね。 とまあ、こんな調子ですね。こういうことが、面白がって、いったん頭に入ってしまうと、文法とかも、さほど気に気にならなくなるはずなんだと思うのですが、どうして教員は文法に走るんでしょうね。
そしてその次に来るのが 「 上 達 部 」 。「上達部」って、見れば分かるでしょ? 「上の人達」 なのよ。殿上人は五位以上だけれども、その中で更に三位以上の位の人たちを上達部って言うのね。メンドクサイかもしれないけど、こんなもんどうせすぐに慣れますから、あたしは全然気にしません。なにしろ上達部は偉いんだから!三位以上の位の人たちがどういう官職についているかっていうとね、これがすごいの。関白ね、大臣ね。大納言、中納言、それから、多分これは「上院議員」とかっていうようなポストになるんじゃないかと思うんだけどね、 参議 ―あ、あなたたちの 「参議院」 ってこっちから来てるんでしょ?以上の方達をひっくるめて「上達部」とお呼びするのよ。日本の貴族のことをさ、お公家さんとか公卿って言うでしょ?その公卿が実に上達部のことなんだなァ。貴族の中の貴族というか、エグゼクティブで上層部だから上達部なのよ。分かるでしょ?覚えといてね。
追記2019・10・19
以前、高校生に向けて 「案内」
したもののリニューアルなんですが、こうして記事にしてみると誰に向かって書いているのかわからないですね。そこが、ちょっと困っているところです。
橋本治さん
の 「古典」
ものには 「案内」
したいものが山ほどあります。でも、読みなおすのも、案外疲れるんですよね。
追記2022・02・01
最近 「失われた近代を求めて」(朝日選書)
を読み直しています。 二葉亭四迷
にはじまる、この国の近代文学を論じた(?)評論ですが、 言文一致
を 橋本治
がどう考えていたかというあたりで、ここに案内している 「桃尻語訳 枕草子(上・中・下)」
が書かれた意図のようなものが、ボンヤリ浮かんできてとてもスリリングな読書になっています。
まあ、ぼく自身が高校生にこの本を紹介していたころの薄っぺらさに、ちょっと気付くところもあって、それはまた 「失われた近代を求めて」
の感想で触れるのでしょうが、実は 松岡正剛
が 「日本文化の核心」(現代新書)
で 紀貫之
の 「土佐日記」
から 「枕草子」
をはじめとする宮廷女性たちの かな日記
に至る 「仮名」表現
の意味を論じているところがあって、それも相まってちょっとドキドキしていますが、今のところうまく言えないので、また今度という感じなのです(笑)
それにしても 「桃尻訳」
は 1988年
、30代の終わりの 橋本治
の作品ですが、後の 「源氏物語」、「平家物語」
へのとば口にある仕事でもあるわけで、面白いですね。
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