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科学者の著作が二冊つづいて、SFですね。でも、まだ 「宇宙」
の話なので、 「猿の惑星」
くらいから 「サル学」
か 「環境論」
、 「原子力」
の話も悪くないと、いつもなら思うのでしょうが、今回は、いきなりジャスト・ミートとする本を読んでる最中で、一発で決まりました。
「悪童日記」 です。ね、ピタリでしょ。というわけで、今回はこの本です。
おばあちゃん 少し長いですが、小説の冒頭近く、双子の少年が預けられた 「おばあちゃん」 の紹介です。小説は、こうして 少年たちの日記 として綴られてゆきます。場所はよくわかりませんが、二つの進駐軍がやって来て、それぞれ異なった言葉を使います。あとからやって来た進駐軍の言葉は 「おばあちゃん」 の言葉と同じでした。
おばあちゃんは、ぼくらのお母さんの母親だ。彼女の家で暮らすようになるまで、お母さんに、さらにお母さんがいるとは、知らなかった。
ぼくらは、彼女を「おばあちゃん」と呼ぶ。
人々は、彼女を“魔女”と呼ぶ。
彼女は、ぼくらを「牝犬の子」と呼ぶ。
おばあちゃんは背が低くて、痩せている。彼女は頭に。黒い三角巾を被っている。着ている服は黒ずんだ灰色だ。古い軍靴を履いている。天気が好ければ、裸足で歩く。彼女の顔は皺と、黒褐色のシミと、毛の生えたイボだらけだ。歯はもうない。少なくとも、外に見える歯はもうない。
おばあちゃんは、顏も体も決して洗わない。食べたあと、飲んだあとは、三角巾の端で口を拭う。彼女は下穿きを穿いていない。オシッコがしたくなると、その場で立ち止まり、脚を広げて、スカートの下から地面に垂れ流す。もちろん、家の中では、そんなことはしない。
おばあちゃんの裸は、見たことがない。夜更けに、ぼくらは彼女の寝室を覗いた。おばあちゃんは、スカートを一枚脱いだけれど、その下にもう一枚スカートを穿いていた。ブラウスを一枚脱いだけれど、その下にもう一枚ブラウスを着ていた。おばあちゃんはそういう格好で寝るのだ。三角巾も被ったままだ。おばあちゃんは、めったに口をか行かない。もっとも、夜は別だ。夜になると、彼女は棚の酒びんを取り、ラッパ飲みする。するとまもなく、ぼくらの知らない言葉で独り言を言いはじめる。その言葉は、進駐軍の兵隊が話す外国語でもない。一つのまったく違う言葉だ。
ぼくらには意味の通じないその言語で、おばあちゃんは自問自答する。時々、笑う。そうかと思うと、怒り、叫ぶ。最後には、ほとんど決まって泣きだす。よろよろと寝室に入る。ベッドに倒れ込む。そしてぼくらは、深夜、彼女が長い間すすり泣くのを聞く。
「おばあちゃん」 という日本語に訳されているけれど、日本語訳で読む作品の印象は 「おばあちゃん」 という言葉に 救われている よね。フランス語でもそうなんだろうか。 この発言は、この作品の肝をつかんでいると思いました。たしかに 「祖母」 という記述ではこの作品のよさは半減しそうなのです。まあ、そのあたり、興味をお持ちになった方は、本書をお読みいただければと思います。
追記
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