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詩 La poesia 映画を見たことのない人には、何をいっているのかわからないと思いますが、 マリオ という、実にどんくさい 郵便配達の青年 が ベアトリーチェ という笑顔のとても素敵な女性に、まあ、一目ぼれというストーリーなのですが、
その年齢だった・・・・詩がわたしを探しにきたのは
どこからやってきたのかは わからない
冬からきたのか 川からきたのか
どのようにしてか いつだったのかも わからない
声でもなかったし ことばでも 沈黙でもなかった
だが わたしは呼びかけられたのだ
街角から 夜の枝々から
突然 さまざまなもののあいだから
燃えさかる火のあわいから
あるいは ひとりで帰宅しているとき
そこに 貌がないままいて
わたしをさわったのだ
わたしはなんていっていいかわからなかった
わたしの口は
名づけられなかったのだ
わたしの目は盲いだった
しかし なにかがわたしの魂をノックしていた
熱病 あるいは 失くした翼かが
それから わたしは孤独を好むようになり
あの熱傷の謎を解きあかそうと
そして 最初のとりとめのない一行を書いた
ぼんやりとした 肉体のない
まったくつまらないこと
なんにも知らない という
完璧な学識
それから わたしは ふと
見上げた
ほどけて
ひろびろとした天空を
惑星
鼓動うつ大農場
矢や 火や 花々によって
穴だらけの闇
圧倒する夜 宇宙
そしてわたしは ちいさな存在
神秘のイメージにもにた
星でおおわれた
大きな空間に酔いしれながら
わたしが深淵の
純然たる一部だと感じ
星々といっしょに転がり落ちてしまった
風の中で わたしの心は解き放たれていた
ああ、マリオに詩がやってきたんだとボクは感じたのですね。
二十の愛の詩と一つの絶望の歌 そして、とどのつまりは、 ベアトリーチェのおばさん が、 マリオ の 詩の師匠 だと ネルーダ に苦情を言ってくるシーンがあるのですが、そこで
十五
黙っているときのおまえが好きだ うつろなようすで
遠くで おれに耳を傾けているのに おれの声はおまえに届かない
おまえの目はどこかに飛び去ってしまったのようだ
一度のくちづけが おまえの口を閉じさせてしまうかのようだ
あらゆるものは おれの魂でみちているので
いろんなものからおまえは浮かびでてくる おれの魂でみちて
夢の蝶よ おまえはおれの魂に似ている
そして メランコリーということばに似ている
黙っているときのおまえが好きだ ひっそりしていて
嘆いているようで 甘くささやく蝶よ
遠くでおれに耳を傾けているのに おれの声はおまえに聞こえない
おまえの沈黙で おれを黙らせてくれないか
おれも ランプのように明るく 指輪のように素朴な
おまえの沈黙で おまえに話しかけさせてくれないか
おまえは 星をちりばめた静かな夜のようだ
おまえの沈黙は はるか遠くにある素朴な星のものだ
黙っているときのおまえが好きだ うつろなようすで
息絶えたかのように かなたにいて いたいたしくて
そんなときは ひとつのことばと微笑みだけでいい
すると おれは楽しくなる 楽しくなくても楽しくなる
「裸がどうだとか、みだらな言葉を口にしてうちの姪っ子を口説いている!」 とくってかかると ネルーダ が
「それはメタファーだ」 と答えます。すると、
「そうだ、メタファーが悪い!」 というようなトンチンカンな会話になって、かなり楽しいのですが、浮かぶのはこの 詩 ですね。
100の愛のソネット ネルーダ は 1973年 に祖国 チリ でなくっています。映画が作られたの、彼の死後20年くらいたった後なので、監督たちは彼の詩についてはよく知っているはずですね。
裸のあなたはあなたの手のように簡単です:
滑らかで、陸上で、最小で、丸く、透明です。
あなたは月の線、リンゴの道を持っています。
あなたは裸で、裸の小麦のように薄いです。
裸のあなたはキューバの夜のように青いです:
あなたは髪の毛にブドウと星を持っています。
裸のあなたは丸くて黄色です
黄金の教会で夏のように。
裸のあなたはあなたの爪の一つと同じくらい小さいです:
日が誕生するまで曲線、微妙、ピンク
あなたは世界の地下鉄に乗る
長い衣装と仕事のトンネルのように:
あなたの明快さは消え、ドレス、枯葉剤
そして再びそれは裸の手です。

ネルーダ,パブロNeruda,Pablo
1904年チリのパラル生まれ。チリ大学在学中に出版した『二十の愛の詩と一つの絶望の歌』により、中南米の有望な詩人として認められる。27年外交官となり、34年赴任したスペインでロルカ等と親交を結び、内戦では人民戦線を支援して『わが心のスペイン』を書く。45年上院議員に選出され、共産党に入党。48年独裁色を強める大統領を非難、逮捕命令が出たため地下に潜伏しながらアメリカ大陸の文化、地理、歴史、世界の階級闘争を包含する一大叙事詩『おおいなる歌』を執筆。49年亡命、52年帰国。70年世界初の民主革命政権の樹立に尽力、同政権下のフランス大使として赴任。71年ノーベル文学賞受賞。癌のため、帰国し療養中の73年9月、クーデター勃発、軍部監視の下、死去。伝統詩、ヘルメス主義、シュールレアリスモ、プロパガンダなど多彩な主張とスタイルが混在する豊かでスケールの大きな作品群により、20世紀最大の詩人と評価されている 。
田村さと子
1947年和歌山県生まれ。2020年逝去。メキシコ国立自治大学、マドリード大学留学後、お茶の水女子大学で学術博士号(Ph.D)。スペイン王立アカデミー・チリ支部、チリ言語アカデミー外国人会員。著書に『イベリアの秋』(現代詩女流賞)など
追記
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