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「私は芥川龍之介が、子どものころから好きだった、雲の意図なんて、絵本で読んだし!」 という方に、まず、おススメします。「杜子春」とか「蜘蛛の糸」とか、童話とか絵本でなじんでいる人って結構いらっしゃるのですね(笑)。
一気読み! が、おススメです。途中で止まってはなりません。立ち止まって、原作が気になったりすると、止まっちゃうんです(笑)。
これらの物語は我々の世界の、鉄の城の一つにいる患者X(ペイシェント・エックス)が、聞く耳と時間のある者には誰にでもしゃべる話である。 「序」 がこうして書き始められます。
彼は実際の年齢より若く見える日もあれば、老けて見える日もある。痩せこけている日もあれば、肥っている日もある。三界の苦をその身に受け、幽霊と幻影に苛まれ、千の自己に分裂して、無数の悲惨な人生を経験した挙句に、ここへつれて来られた。彼がどんな経験を、・・・いや、詳しい話はしばらく措くとしよう。(P9)
「糸の後、糸の前」 という 11篇 の物語が語られていきます。 短編小説集 というわけです。たとえば最初の 「糸の後、糸の前」 はこんなふうに書きだされます。
「地獄変の屏風」
「反復」
「切り裂きジャックの寝室」
「二度語られた話」
「黄いろい基督」
「戦争の後、戦争の前」
「悪魔祓い師たち」
「災禍の後、災禍の前」『河童聖人』
「基督の幽霊たち」
「事の後、事の前」
ある日のことでございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色の蕊からは、何とも云えない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります。極楽は丁度明方なのでございましょう。(P13) どうでしょう、
「えっ?」 とお気づきの方はお気づきでしょうね。そうです、 芥川龍之介 の名作 「蜘蛛の糸」 の書き出しそのままです。
ところが御釈迦様が御歩きになっていると、泣声が聞こえて来ます。 原作にもこんな文はありませんし、本来、極楽では 「泣声」 など聞こえてくるはずがないのですが、 お釈迦様 がご覧になっている蓮の花のそばに佇んでいたのが 基督 で、その 基督 が泣いていたということになれば、
なんじゃ、それ? ですよね(笑)。
基督さまはあるものを御覧になって泣いていらっしゃるのでした。 原作で 御釈迦様 がご覧になるのは、蓮池の底、地獄でうごめいていた カンタダ という男の姿でしたが、この作品で 基督さま がご覧になったのは、誰あろう 芥川龍之介 でした。
で、どうなるの? は、まあ、本書を手に取っていただく他ありませんが、これが 「龍之介幻想」 の始まりです。 11の短編 に登場するのは 龍之介自身 であったり、 堀川保吉 であったりします。 漱石門下 はもちろんですが、友人の 小穴隆一 や 川端康成、斎藤茂吉 とかも登場します。
自嘲 とあります。
水洟や鼻の先だけ暮れ残る
芥川龍之介
昭和二年(一九二七年)七月二十三日
芥川作品の見事なコラージュぶり! です。
追記
ところで、このブログをご覧いただいた皆様で 楽天ID
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