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私の家には、何か隠されたことがある。まえがき の最後に書かれている、いわば本書のモチーフの吐露といったところです。
ごく小さなころから、そう感じていた。
でも、こういうことだったかもしれない。
―私の国には、何か隠されたことがある。
「なに、これ?なぜ、そうなの?」という、ちょっと子供じみた問いの 社会学的 というか、 フィールドワーク的 というか、対象は 赤坂真理子 という 少女の目 で見た 「ニホン」 です。
遠いアメリカ 日本 の 中学を卒業して、 アメリカ の高校に進学するという、まあ、その世代だからこその新しい体験が、
十六歳のとき、自分の歴史がつながらなくなった。
あまりの異物を、たったひとりで、突然見たからだと思う。処理しきれなかった。おそらくは。
その異物の名をアメリカと言う。
幼少期からの世界は、切れた。
その後の世界は、前と同じではなくなった。
世界はおそらく主観的だけではなく、客観的にも、変わってしまった。(P22)
「なに、これ?なぜ、そうなの?」 に
「これはなんなの?」 が加わった 問い を生み、その問いの分析が始まります。分析しているのは 50歳の作家 ですが、たどられるのは 彼女 の、その当時の実感です。
プロローグ 二つの川 作家 として 「東京プリズン」 とか、 「箱の中の天皇」 といった作品を書くに至った 作家自身 の 「今」 の意識の背景にある世界の探索ですね。
第1章 母と沈黙と私
第2章 日本語はどこまで私たちのものか
第3章 消えた空き地とガキ大将
第4章 安保闘争とは何だったのか
第5章 一九八〇年の断絶
第6章 オウムはなぜ語りにくいか
第7章 この国を覆う閉塞感の正体
第8章 憲法を考える補助線
終 章 誰が犠牲になったのか
エピローグ まったく新しい物語のために
現代社会に対する「閉塞感」 がモチーフだと思いますが、すでに、 土管のころがる空き地 なんてなくなっているにもかかわらず、相変わらず
ドラえもんが活躍し続けていた日本! の 戦後社会 で暮らすの中学生が、
「昭和天皇は戦争犯罪人である」 という 論題 で ディベート する アメリカの高校 へ飛び込んだ時から始まった、 ズレ というのでしょうか、 世界に対する違和感 というべきなのでしょうか、そこが、作家がこの論考で解き明かしたいキモだと思いました。
自身の アメリカ体験 を、それぞれの 思想的な基盤 として 考えた人 として、たとえばボクの記憶に浮かび上がってくるのは、 鶴見俊輔(1922生) の 「北米体験再考」(岩波新書) 、 江藤淳(1932生) の 「アメリカと私」(朝日新聞社・講談社文芸文庫) 、戦後生まれでは 加藤典洋(1947生・カナダ) の 「アメリカの影」(講談社文芸文庫)・ 「敗戦後論』(ちくま学芸文庫 ) といった 哲学者 や 文芸批評家 の著作なのですが、 本書 の 赤坂真理(1964生) が、いちばん若い 加藤典洋 とさえ、 20歳以上も若い というところもボクにとっては面白さの理由でした。
追記
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