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大学を卒業して、まあいろいろあって、30を過ぎた頃から大学で助手という、通常は3年で終わるはずのポストを、58歳まで27年間努めました。その10年目くらいの頃に星子(せいこ)という4番目の子が、ダウン症として生まれたんです。 若い人たち に対して、 最首さん が最初に語り始めた、まあ、 自己紹介の1節 です。もちろん、 最首さん の 自己紹介 は、もっと、あれこれあるのですが、 「いのちと価値のあいだ」 というテーマで、 最首さん が 若い人たち と一緒に考えよう、伝えようとしているのは、この1節で語っている 星子さんとの暮らし によって育ててきたに違いない考え方、思想だったということを読み終えて実感しました。
星子は、最初はね、言葉が出るのも遅かったけど、なんとか少しずつしゃべるようになって、歩いてもいたんです。小学校にも、2年遅れでしたが普通学級に入ったんですけれども、その最初の春に白内障が見つかって、目の手術をしたところが、2,3か月たつうちに目がまったく見えなくなってしまった。さらに1か月ぐらいで、言葉がなくなってきて、歩くことをしなくなった。それまでは結構歩いていたんですけどね。なぜ目が見えなくなり、言葉をなくしてしまったのか、わからないままです。(P14)
「お嬢さんのいのちのことね、もしも、彼女に害をなす人がいたらっていうことを、はっきり殺すとおっしゃってたところがよかったね。」 同居人 のことばを聞いて、ああ、この本のキモは、やっぱり、そこなんだよなと気付き直したのですが、 彼女の感想の箇所 を探しなおして引用しておきますね。
いのちっていうのは、決して善きものではない。善きものも含んでいるけど、人間にとってどうしようもない、酷い苦しみとか悪魔的なものも含んでいる。いのちっていうことについて、私たちは全容がわからないんです。 本書 で話し合われる具体的なテーマは、 能力主義、優生思想、 からはじまり、 社会、個人、差別、 と広がりますが、その中で、 津久井やまゆり園事件 の犯人 「植松青年」 との手紙のやりとりの紹介があり 、脳死 から、 「生と死」 の問題へ進み、 石牟礼道子 が語った 「あの世とこの世」 をへて、 最首流 の 「その世」 へと展開していく中での一言でした。
私は、もし星子が殺されたら、絶対にというくらい、その人を殺しますよ。自分の手で。それはやると思っている。星子が殺されたら絶対そいつを殺し、星子がレイプされたら、その男を単純に殺したりしても飽き足らないと思う。それは責任を取らせるとかなんとかいう問題ではなくて、もっと何か、いのちに対する感覚がある。そういう、いのちの暴力性みたいなものを思うんですよ。
大きなところでは、死と生は同等だと、死は生につながるのだと知りながらもね。殺すなと思い、殺したいと思い、生きたい、生かされている、生きているだけでいいって思う。そういう、現実の世界でのどうしようもない思いを全部含めてのいのちであり、開いた世界なんです。(P111 )
いい本だな・・・としみじみ思いました。 創元社 、がんばってますね(笑)。
追記
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