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「せんせい」と呼び続けさせていただいた方です。 日野啓三 の短編集の出版が 2002年 、この 論考 が出版されたのは 2010年 、その間に8年の間隔がありますが、 日野啓三 の晩年の作品群が出版されていた当時です。
1 もう一つの戦後文学 という書き出しの文章を読みながら、 先生のお声 が吶々と、しかし、力強く聴こえてくることを実感しました。
まことに単純なことだが、「われとは何か」、「自我のレーゾンデートルは何処にあるか」、「おのがアイデンティティーは何処に求めるべきか」等々の問いは、必然的に、「ひとは如何に生くべきか」という問いと隣り合っている。これらは、近・現代に生を受けた人間の意識に課せられた宿命的な問いであり、近・現代文学そのものに課せられた宿命的な問いでもある。(P11)
「ひとは如何に生くべきか」という問いこそが、近・現代文学そのものに課せられた宿命的な問い だ。 と喝破されている、その文学的態度の宣言にこそ、 相馬先生の声の響き が聴こえてきました。こみあげてくる懐かしさの中で、 この書き出しを読みながら、もう、50年ほども昔のことなので定かではありませんが、確か、 石川啄木の評論の購読授業 だったと思います。同席の生真面目な学生の発言に対してからかいの発言をした学生だったボクに対して
「シマクマ君、そういういい方はダメですよ。」 と穏やかに窘められた経験がありありと思いだされたのでした。
一作、一作、丁寧に読みこまれた論文集です。 日野啓三 は 読売新聞社の外報部の特派員 としての軍政下の 韓国 、戦争最中の ベトナム での経験を文学化した作家ですが、肝臓癌が発見された後の 「断崖の年」 以降、 「台風の眼」 から最晩年の 「落葉」 にいたるまで、闘病生活での自己凝視が作品の特徴ですが、本書において 相馬先生 は、それぞれの作品について一作、一作、噛みしめるように丹念に論じていらっしゃって、ボクの中では、あの、 相馬先生の「声」 が響き始める読書でした。
目次
1 日野啓三序説
2 『断崖の年』
3 『梯の立つ都市 冥府と永遠の花』
4 『聖岩』
5 晩年の長編小説
6 『落葉 神の小さな庭で』
追記
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