ということで、チェコ語のそれぞれの言葉について、『悪魔の辞典』ような箴言的な解説を加えてみようと思ったのだけど、その路線で行くと、多分実用には役に立たなくなるから、それよりはもう少し現実的で、普通の辞書とは違うひねくれた文章を書いてみることにする。思いつきで始めたから、どの言葉を対象にするかや、どのぐらい長く書くかなんてことは、書きながら決めていくことになる。言いかれば、いつも通りの行き当たりばったりということである。
新しいシリーズの最初の記事は、枕の部分で分量が稼げてありがたいなんてことを考えつつも、最初の言葉を何にするかである。あれこれ考えたが、無難にチェコ語の辞書の一番最初に出てくる言葉で、チェコ語の単語別の使用頻度で恐らく一番になるだろう「a」から始める。こんなところで奇を衒っても仕方がないしね。
日本語がある程度できるチェコ人と話していて、一つの文が終わったところで「と」、もしくは「とー」を連発するのを聞いたことがある人もいるのではないだろうか。これは日本語の「ええと」の「ええ」が落ちたものでも、昔の武田鉄矢が昔やっていた方言ギャグでもなく、本来名詞と名詞の間にしか使えない日本語の「と」を文と文の間にも使えるチェコ語の「a」と同じような使い方をした結果発生した間違いである。
チェコ語で名詞と名詞の間にこの「a」を使う場合に気をつけなければならないことは、三つ以上のものを並列する際には、「a」を使うのは最後の名詞の前だけだということである。このルールは名詞だけでなく他の品詞が三つ以上並ぶときにも適用されるけれども、三つ以上並べる可能性が一番高いのは名詞なので名詞を使うときの説明に入れておく。
日本語であれば、「日本と中国と韓国と北朝鮮」のようにすべての名詞の間に入れてもいいし、「日本と中国、韓国、北朝鮮」とか「日本、中国、韓国と北朝鮮」、「日本、中国、韓国、北朝鮮」などそれぞれ微妙にニュアンスが変わらなくもないけれども、様々なパターンで使用することができる。それに対して、「正字法」なんていう正しいとされる書き方が決められているチェコ語では、「Japonsko, ?ína, Ji?ní Korea a Severní Korea」と最後だけ「a」を使ってそれ以外は「,」で済ませなければならないのである。
日本語的に「a」を連発して師匠にあきれられたこともあるのだけど、それは「,」が頻出すると、長い文の場合に文の構造が、自分で書いたものであってもわかりにくくなるので、それを避けたいという気持ちが無意識に働いた結果である。もちろんこれは言い訳で、この間違いを頻発していた頃のチェコ語力では言うことができなかった。もう一つ、間違えていた原因を探すとすれば、最初から並べるものをすべて決めておらず、一つ一つ思いついたものを追加していったために、口に出す時点では最後の名詞だから「a」をつけたけど、次を思いついて追加したために「a」が不要になったなんて間違いも多かったかな。
もう一つ注意点を挙げておくとすれば、日本語でも助詞の「と」で並列できないような二つ、場合によっては二つ以上の名詞は、チェコでも「a」で並列することはできないということである。並列できるできないは、文脈やら、その文で使われている動詞、形容詞なんかによって変わるから、一概にこれとこれは絶対に並べられないとは言えないけど、日本語でなら、これとこれ並べちゃ駄目だよなあなんてことはわかるはずだ。そんなのはチェコ語でも並べちゃいけない。「私は日本とミカンが嫌いだ」なんていう文を見ると、使える状況が想定しづらいのは、チェコ語でも同じなのである。
あれ、何でこんなに長くなったんだろう。せっかく分量が稼げたので二つに分けることにする。ということで以下次号。
2018年11月26日23時。
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