では、チェコ語のsokolのイメージはというと、正直よくわからない。チェコ語で鳥の名前以外に使われるsokolと言えば、日本でも知る人ぞ知る体操団体「ソコル」で、団体だけではなく会員たちのこともsokolと呼んでいる。女性はsokolkaだったかな。この団体は民族の身体能力向上を目標として19世紀後半に設立され、去年が設立160周年になるのだが、移民などを通じて世界各地に支部が存在する。6年に一度開催される全ソコル大会は、チェコでは大きなニュースとなる。
なぜこの団体が、sokolと名付けられたのかというと、日本語版のウィキペディアでは、「英雄を「ソコル」と呼ぶ南スラヴの習慣から名付けられた」という説を、紹介している。ちなみにこの項目では、チェコ語のsokolを鷹として説明している。この辺にも、動物学と無関係なところでは、「sokol=タカ」という図式が反映されていると考えてよさそうである。
チェコスロバキアの民族的団結の象徴の一つであったソコルは、マサリク大統領には賞賛されたが、ナチスとソビエトには完全に忌避され、ナチスの占領下では活動を禁止され組織も解散を命じられた。ソ連の支配下では、全国的な体操大会は存在したが、ソコルの名は完全に消され、スパルタキアーダという名前の下に、社会主義的なテーマを与えられたマスゲームを中心とした大会が開催されていた。市町村単位から始まる地区予選を勝ち抜いたグループだけが、プラハのストラホフで行われる全国大会に出場することができ、全国から勝ち抜いてきたグループが共同でマスゲームを披露していたという。社会主義的なテーマと、ほぼすべての学校の子供たちが予選に参加していたことを除けば、大会で披露されるマスゲームは、ソコルの時代と極めてよく似ている。
ただし、ソコルの役割は、sletという鳥が跳び集まることを意味する言葉で名付けられた体操大会を開催することだけではない。現在でもチェコの各地に、大きな町になるとその町だけで、いくつかのソコルの支部があり、sokolovnaという体育施設の入った建物が置かれている。そして、多くの場合スポーツチームの拠点、母体となっているのである。支部によって扱うスポーツは違うのだが、オロモウツの場合には、陸上競技場とテニスコートが併設された二つのソコロブナを確認している。
スポーツチームの母体という点では、特に新たなスポーツクラブを立ち上げるのが経済的に割に合わないマイナースポーツの場合には、一部リーグのチームのなかにさえソコルのチームが存在する。例えば、ハンドボールの場合は、男女とも二つのソコルのチームが一部リーグで活動している。スポンサーなどの関係でチーム名からは外しているだけで、実際にはソコルが母体になったチームは、ハンドボールでも、それ以外のスポーツでも他にも多いし、アマチュアや少年スポーツのレベルになるとその数は更に多くなる。
一言で言えば、軍のチーム、もしくはその後継チームであるドゥクラと並んで、チェコではよく見かけるスポーツチームの名前なのである。プロレベルだと選手を一応軍人にして最低の収入を保証している(と思われる)ドゥクラのほうが目立っているけど。それから旧共産圏には、ディナモという名前の、かつては秘密警察とつながりがあったとも言われるチームもあるが、流石にチェコでもその数は多くない。
ということで、ハヤブサの仲間の鳥についてはまた次回。
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