犯人はポーランド人とブルガリア人、それにオランダ人のサッカーファンで、遠く離れた国の連中がわざわざスロバキアのブラチスラバまでやってきて争ったというのは、正直どうしてそんなことになるのか理解できなかった。例えばスロバキアのスロバン・ブラチスラバのファンとチェコのバニーク・オストラバのファンが、ブラチスラバの路上で激突したとか言うのなら、驚きもしないのだけど、チェコ人、スロバキア人であれば、街のレストランが路上に出していたザフラートカをいくつも壊滅させるような暴れ方はしなかっただろう。
報道によると、ブルガリア人は、レフスキ・ソフィアのファンで、ポーランド人はクラコビア・クラコフ、オランダ人はアヤックス・アムステルダムのファンたちだったという。レフスキは、今日行なわれるヨーロッパリーグの予選で、ドゥナイスカー・ストレダと対戦することになっており、クラコフは、ルジョンベロクで試合をすることになっていた。同じ日にスロバキアで試合をすることが、決まった時点で両チームのファンが話し合って、前日にブラチスラバで対決することを決めていたらしい。過去に因縁でもあったのだろうか。
レフスキのファンが前日にブラチスラバに滞在するのは、理解できる。ドゥナイスカー・ストレダはブラチスラバから電車でもバスでも一時間ほどのところにある町で、ブルガリアから飛行機で来るならブラチスラバか、ウィーンの空港だろうし、ドゥナイスカー・ストレダはそれほど大きい町ではないので、宿泊施設が充実しているとも思えない。
一方のルジョンベロクは、スロバキア北部のポーランドとの国境に近い町で、ブラチスラバからは、最短でも電車で2時間半以上の時間がかかる。ポーランドのクラコフから毎日一本ある直通のバスを使えば3時間ちょっとでつくし、鉄道でも乗り換えの待ち時間が長いとはいえ5時間ちょっとで到着するのである。わざわざ一度ブラチスラバまで南下しなければならない理由は存在しないはずである。その理由がレフスキファン相手の立ち回りということなのだろうが、サッカーファンというのは度し難いものである。
さらに度し難いのは、スロバキアで試合があるわけでもないのに、オランダからしゃしゃり出てきたアヤックスのファンである。実は、クラコフファンからの支援要請に応じて、暴れるためにブラチスラバまで遠征したらしい。ポーランドのカトビツェとバニークのファンの間にあるような同盟関係が、クラコフファンと、アヤックスファンの間にあるのだろうか。こうなると、国際的な暴力シンジゲートである。
近年、EUでは、難民の流入を防ぐ目的でシェンゲン圏の外側の国境の警備を強化することを主張する声が高まっているが、社会の迷惑でしかないサッカーファンの存在を考えると、シェンゲン圏内の国境のチェックを復活させたほうがいいような気がする。暴力沙汰を引き起こすために外国に行くようなファンは、国内ではブラックリストに載っていて、スタジアムでの感染が禁止されているのが大半のはずである。現時点では、外国から来たこの手の問題人物を排除することはできていない。
EU全体で問題を起こしたサッカーファンのブラックリストを作成して共有し、国境でパスポートじゃなくても、身分証明書のチェックをすることで入国を拒否できるはずである。そうすれば今回のような惨劇はかなり防げると思うのだけど。迷惑サッカーファンの存在は、違法入国する難民並みに困り者なのである。
今回の騒ぎでは、ファンたちが手近にあったザフラートカの椅子やテーブルを投げつけあうというとんでもないもので、被害額も器物破損の分だけでも大きな額になりそうである。ここは、サッカーファンが同じような問題を起こした場合には、営業妨害の被害額も含めて、クラブが賠償するという制度を導入してほしいところである。クラブには実際に問題を起したファンから取り立てる権利を与えればいい。
そうすれば、チームに害を与える自称ファンとクラブの関係が多少はマシになるはずだ。客席で発炎筒焚こうが、スタジアムへの途中で破壊行為をしようが、大声で声援を送っているからというだけの理由で。うちのチームのファンは素晴らしいなんてことを言うのが健全なことだとは思えない。迷惑行為はしないで応援だけをしているファンに対して失礼である。迷惑ファンにはきっちり罰が与えられるようにしないと、観客の数も増えず、クラブの財政にも悪景況を与えるだろうし。
とにかく、迷惑サッカーファンは国外に出られないように、檻の中にでも閉じ込めておいてほしいものである。この問題に関して、EUが沈黙しているのが不思議で仕方がない。試合の結果? そんなのこの手の迷惑ファンにはどうでもいいことだろう。
2019年7月11日24時。
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