マトビチ氏率いる政党OLaNOでは、ワクチン輸入が明らかになった際に、厚生大臣が辞任しているが、その後、マトビチ氏に対する抗議で、連立を組む政党SaSが、大臣を次々に辞任させ、キスカ氏の党の大臣も一人辞任していたため、マトビチ内閣は存在はするけれども、半数近くの大臣を欠くという状態に陥っていた。
SaS党が大臣が復任する条件として、マトビチ首相の辞任を求め、マトビチ首相が辞任する条件として、SaSに飲めそうもない条件を突きつけたことで、このまま機能しない内閣が続くか、内閣総辞職で解散、総選挙になるかと期待していたのだけど(制度上一院制の議会の解散ができるのかどうかは知らない)、マトビチ氏があっさり譲歩したことで、政治上の危機は一応終結した。
もう一つの心配としては、へゲル氏が首相になっても、実態はマトビチ氏の操り人形に針はしないかということで、そうなるとまた、連立を組むSaS党との対立が起こって、内閣が機能しない政治危機を迎えることになりかねない。この連立内閣は、成立当初からOLaNO党の党首マトビチ氏と、SaS党のスリーク氏の過剰なライバル意識が見え隠れしていたから、ワクチンの件がなくても遅かれ早かれ、二党の対立に至ったのではないかと思う。いや、今後も対立して倒閣の危機が繰り返されるだろうと予測しておく。
現時点でマトビチ氏は去年の選挙のときの熱狂的な支持が嘘のように、支持を落としているようだ。結局、去年の選挙の時点では、フィツォ政権の犠牲者とも言えなくはないジャーナリストのクツィアク氏が暗殺されて最初の選挙では、フィツォ党、コトレバ党以外であれば誰でもよかったのだろう。つまり、マトビチ氏が選ばれたのは、この人ならという積極的な選択ではなく、消去法で選ばれたということだ。だからこそ、迷走を始めるとやっぱり駄目だったかとすぐに見限られるのである。
言ってみれば、十年ほど前の日本の民主党政権みたいなものだ。お試しでチャンスを与えられて、能力を示せば、支持者を増やして長期的に政権をになうことになったのだろうけど、どちらも、批判するのは得意だけど、実務能力に欠け、それを批判されるのには耐えられないという典型的な野党体質を露呈してしまった。日本チェコに限らず、与党も野党も、偉そうなことを言っていても、なべてポピュリスト政党と化してしまっている世界的な傾向は、スロバキアも同じということか。
次の選挙で、すぐにフィツォ党が復活するとは思えないが、大統領だったキスカ氏が設立した新政党も期待したほど存在感を発揮できていないし、注目に値しそうなのは、フィツォ党内にいながらフィツォ氏からはちょっと距離を置いていて、フィツォ氏が対人を余儀なくされた後に首相を勤めたペリグリーニ氏が設立した新政党だろうか。無責任に予言しておく。
2021年3月31日24時。
【このカテゴリーの最新記事】
- no image
- no image
- no image
- no image
- no image