マトビチ政権が最初に批判にさらされたのは、武漢風邪対策が厳しすぎることに対してだった。新政権が正式に誕生するまでの間は、暫定的に退任するベレグリーニ政権が対策をとっていたのだが、マトビチ氏はその対策が緩すぎると言って強く批判していた。スロバキアで感染者数が少ないのも検査数が少ないからだと、政権発足後検査数を大幅に増やしたものの患者数は微増に留まった。感染の可能性のある人に対する隔離では、自宅ではなく指定された施設に放り込んで食費を取りながら、その額に値しない食事が出てくると批判をあびた。この辺は、日本の野党と同じ、政権批判をしておけばいい、前政権と違うことをすればいいという野党体質が表ざたになった印象だった。
流行が収束に向かい始め、チェコやオーストリアなどが、規制の緩和に向けて動き出してからも、マトビチ政権の動きは非常に鈍く、チェコの政治家の言葉からももう少し何とかしてくれという本音が見え隠れしていた。当然、国内の産業界からは規制解除を求めて突き上げを食っていたようだ。それで結局はチェコ、オーストリアなどに引っ張られる形でハンガリーも含めて、ミニシェンゲンとして相互に国境の出入りを自由化する協定を結ぶことになった。
この疑惑に対して、連立与党のうちキスカ元大統領が率いる「ZA ?UDI」党と「SAS」党が議長の自認を要求したようだが、マトビチ氏はそれに組みしなかった。結局国会で解任動議が出され秘密選挙で裁決が行なわれた結果、コラール氏の留任が決まった。以前同じ国会議長が学位論文の盗作疑惑で批判されたときには、マトビチ氏も強硬に辞任を求めていたはずなのだけど、変節したのかな。
その後、「SAS」党の文部大臣のブラニスラフ・グリュフリンク氏にも同様の盗作疑惑が発覚したというのだが、詳細はよくわからない。政治家に学歴なんか求めても仕方がないと思うし、卒論の出来よりも政治家としての能力、あればの話だけど、のほうが重要だと思うのだが、学位の管轄省庁である文部大臣だけは、論文の盗作者を就任させてはいけないだろう。こちらもまだ辞任はしていないようだ。
そして、最後かどうかはわからないが、マトビチ氏にも同様の疑惑が登場した。本人は22年前のことであまり覚えていないけれども、引用ですまない範囲で他者の論文を自分の論文に使って学位をとったのだとしたら、私は泥棒だなどと疑惑を認めたような、開き直ったような発言をしている。かなり無責任な印象を受けたのだが、これも与党に厳しく自党に甘い野党体質といっていいのかなあ。ここからどう立て直していくか、このままつぶれるのか見物である。
ちなみに、こちらは学位をとったのがブラチスラバのコメンスキー大学だというから、本人以上に指導教官の責任も大きいと思うのだけど。チェコでもそうだけどまともな大学でまともな先生の指導の下で論文を書いていれば、引用の仕方とか、引用と盗作の違いとか指導されるはずで、盗作のレベルにある物は書き直しが命じられるの普通だから、政治家の盗作論文を合格させた大学教員が批判されないのが不思議である。中央ヨーロッパ大学? 何も期待してはいけない。
ともかく、現時点ではマトビチ氏には辞任する考えはなく、世論調査などでもマトビチ党は支持はそれほど減らしていないようだ。チェコのANOと同じで固定支持者がいてあまり増減しないタイプなのかもしれないけど。フィツォ外しで選ばれた首相が政治への信頼を取り戻せなかった場合、スロバキアはどうなるのだろうか。下手をすればコトレバ首相なんて事態が起こるかもしれない。外国の政治なんて基本的に他人事なんだけど、スロバキアに関してだけはちょっとだけ心配しながら見守っている。
2020年7月21日9時。
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