その一見、希望者を対象にしていながら、実質的には強制となる今回の検査には野党側からやり口が姑息だという批判の声も上がっている。腐敗し果てたとみなされていたフィツォ氏率いるスメル党の政権を倒して、全国民の期待を集めて成立したマトビチ内閣だが、今のところ、期待に応え切れているとはいえない印象である。前の内閣が、前の内閣だけに、前の方がましという声までは出ていないようだけど。
とまれ、250万人という規模で行われた検査の結果は、陽性者の割合が1パーセントほどというものだった。つまり週末二日かけて2万5千人ほどの新規感染者が確認されたということなのだが、この数字多いと見るべきか、少ないと見るべきか。マトビチ首相は来週末にも第二回の全国的な検査を行い今回検査を受けなかった人たちにも受けさせたいと考えているようだが、実務を担当した地方自治体からは、人的な面で実施は不可能だという声も上がっている。
また、たかだか100人にひとりの患者を暴き出すのに、これだけの手間をかけるのは、特に感染者の割合が低かった地域で繰り返すのは意味がないと考え、割合の高かった地域だけで、それでもせいぜい3パーセントだったか、5パーセントだったかのレベルなのだが、二度目の検査を行うべきだという意見も専門家の中にはあるようだ。
スロバキアの結果を見ていると、チェコでも実施してもあまり意味がないようにも思われる。特に最近は、検査数に対する陽性者の数が30パーセントを越えていることが問題にされているが、逆に言えば、保健所や開業医の判断で検査を受けさせる判断が適切で、感染者の多くを検査に送り込めているとも考えられる。全国的な全員検査が行われた自分の検査に行かなければならないから、それが嫌だからこんなことを言うというのもあるのだけどさ。
空港で検査を受けた知り合いの日本人の話では、めちゃくちゃ痛かった上に、結果が出るまで何時間も待っていなければならいのも辛かったらしい。それなのに、今回検査を受けて陰性だったという知り合いのスロバキア人は、大して痛くもなかった上に、10分ほど待つだけで、検査の結果を受け取ることができたという。いわゆる簡易検査という奴なのだろう。春の流行期にチェコが中国から高額で押し付けられた奴は不良品ばかりでない方がましという代物だったけど、今回のは使い物になるのかな。中国製でなければある程度の信頼性は確保できているのだろうけど。
それよりも気になったのは、検査を受けに来ていた人たちが、冷たい雨の降る中行列を作っていたことで、これで体調を崩したという人が多数出ても不思議には思わない。また行列の人間距離も奨励されている2メートルを越えているようには見えなかったし、下手をすればこの検査で感染したという人もいかねない。ほとんどみんなちゃんとマスクをしていたから、大丈夫だとは思うけれども。
もう一つの問題は、今日の検査で陰性だったからといって、明日も陰性とは限らないということをスロバキアの政府がどう考えているのかよくわからないことにある。この手の全員検査は感染症の流行状況の傾向を調べるのには使えても、個々の人の感染の有無を確定させるのには使えない。本気で検査によって陽性者を洗い出し、隔離することで封じ込めを図るのであれば、定期的に検査を行うしかない。
それこそチェコのサッカー界がやっていたように、最低でも毎週一回試合前に検査を行い陽性者がいたら、いなくなるまで陰性者の再検査を繰り返すという方法である。これなら最終的には、すべての陽性者を洗い出すことは可能だろうけど、全国民を対象にというのは非現実的である。
とまれ、今週末の第二回全国検査がどうなるか注目しておこう。結果次第ではマトビチ政権が意外と求心力を失っていることが明らかになるかもしれない。
2020年11月3日14時。
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