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2019年12月13日

悲劇のオストラバ(十二月十日)





 朝、と言っても、8時は過ぎていたと思うのだが、チェコのスポーツ新聞のHPを見ていたら、一番上に緊急速報みたいな形で、オストラバの病院で銃撃事件が起こったことが書かれていた。普通は広告のある部分なので、気づくのに時間がかかったが、すぐにセズナムを開いて確認すると、犯人は逃走中で、テキスト速報みたいな形で事件の推移を伝えていた。
 チェコテレビのニュースによると、事件の発生を伝える連絡が入ったのは朝の7時19分のことで、最初の警察の部隊が現場に駆けつけたのは、7時24分のことだったという。事件が起こった外科の待合室は病院の建物の4階にあったというから、病院の中に入ってからも、警戒しながら階段を上っていくことで多少時間がかかったのかもしれない。警察の発表では通報後3分で到着したということになっていた。


 ただ、同時の事件の大きさを考えると、姿形が犯人の特徴に似ている人物を放置することは警察としてはできなかったと付け加えていた。日本だったら野党が人権侵害だとか言って大騒ぎするのだろうなあ。日本でいちゃもんがつきそうと言えば、結果的には必要にならなかったとはいえ狙撃部隊の投入も決定された。銃を持った犯人が街中をうろつき、どれだけの犠牲者がでるかわからないという状況に、射殺してでも次の犠牲者を出さないという方針だったようだ。
 実際には狙撃部隊がオストラバの病院のヘリポートに到着した時点で、警察のヘリによって犯人が乗った車が発見され、追跡中に犯人が自殺したことで実践への投入ということにはならなかったようである。犯人の死亡が確認されたのが、11時過ぎ、事件発生からほぼ4時間のことだった。犯人が自殺したのはオストラバからオパバ方面に6キロほど行ったところらしい。警察の発表では逃走の途中で実家に立ち寄り、母親に犯行について話したのだとか。

 現時点でわかっているのは、犯人は40台の男性で、使用した銃は不法に所持していたものだという。銃の入手経路や犯行の動機などについては現在も捜査が進められているようだ。動機に関しては、オストラバの大学病院で満足な治療を受けられなかったことを怨んでのことだという説も出されていたが、確証はないという。銃撃を行なった待合室のある外科の外来は、犯人が受診したところだともいうけれども、一階から順番に待合室を見て回って、一番人の数が多かったこの待合室を選んだだけだという説もある。
 亡くなった方々については、日本と違って取材が抑制的なため、それほど多くの情報が報道されているわけではないが、2人が刑務所の監督官として勤務している人だったらしい。そのうちの一人は、娘とともに病院に来ていて、娘の命を守るために自らの体を盾にしたという話が伝わっている。同僚達の悲しみの声は報道されたが、遺族に対する無神経な取材は行なわれていないようだ。ほっと一安心である。

 銃を所持した個人が、ある日突然、人を殺すことを決意して実行した場合、警察にできるのは最初の事件が発生した後、次の犠牲者を出さないようにすることぐらいだろう。今回の対応に関しては、肯定的に評価されているようだが、警察の話では、これは数年前にウヘルスキー・ブロトのレストランで起こった銃の乱射事件の際の対応を教訓に改善に取り組んだ結果だという。あのときは今回よりも多い8人の人が亡くなったのだった。
 このような事件が起こるたびに、民間人の銃の所持を禁止したほうがいいという声が上がるのだが、チェコもアメリカと同様に反対する意見が強い。不法所持の銃が使われたということは所持の禁止よりも生産に規制をかけたほうがいいような気もする。ただ銃の生産大国であるチェコでは難しいだろう。それよりは、環境保護団体に花火なども含めた火薬の生産の規制を訴えてもらいたいところだ。二酸化炭素の排出量も減るし一石二鳥だと思うけど。

 最後に、犠牲になった方々の御冥福とこのような事件が二度と起こらないことを願っておきたい。
2019年12月11日23時。









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