いろいろ問題があったのは確かだけど、安倍政権が久しぶりのまともに機能する政権で、東日本大震災の混乱の中にあった日本をある程度立ち直らせたというのも、また事実である。あれこれ批判していた人たちの中の誰にやらせても、ここまでの結果は出せなかったに違いない。ここはその功績を高く評価し、病をおして首相の重責を務めてくれたことに感謝の言葉を送るのが正しかろう。
辞任が前回に続いて突然だとか、健康管理能力が欠けているとか批判する人もいるようだが、病気の進行なんて人間が管理できるものではない以上、病気による辞任が突然のものになりがちなのは当然である。任期中に病気で倒れて亡くなった場合にも同様の批判をする気だろうか。無理して首相を続けて病状が悪化して現職のまま亡くなった場合には、混乱は辞任の場合よりもはるかに大きくなるはずだ。それを避けるための辞任だと考えれば、無責任なのではなく、責任を全うしたと評価すべきである。
マスコミとしては、現職のまま入院してくれた方が、長々と根拠もない憶説ばかりの報道を続けられるから美味しかったのにと考えているのだろう。その本性が図らずも現れたのが、辞任の仕方に対する批判だったに違いない。個人的にはスキャンダルで辞任する方が突然政権を投げ出す無責任さを感じるが、その場合はマスコミには自分たちが報道で追い詰めてやめさせたという達成感があるから、辞任したこと自体は批判しないのだ。
安倍内閣の政治を評価するとなると、外国にいて日本の空気を感じられず、報道を通じてしか知れないので難しい。アベノミクスという経済政策も、賛否両論あって、いや与党支持者は称賛し、野党支持者は酷評していたから、実際のところは大成功でも大失敗でもなく、それなりの効果があった、もしくはそれなりの効果しかなかったということか。
知人にあれこれ便宜を図ったとかで集中砲火にさらされていたのも、何の問題もないとは言えないけど、口を極めて批判しなければならないほど重大な問題でもなく、いわば陳情に毛が生えてしまったようなものである。批判していた側も含めて、同じようなことをやっている政治家は多いだろうし、報道するマスコミの側も陳情はしているだろうに、陳情して政治家を動かさなければどうにもならない、陳情すれば便宜を図ってもらえる制度の運営のほうを批判すべきじゃないのかね。
安倍首相の悪かったところは、自分は何もしていないと断言してしまったところで、陳情を受けただけとか、皆さんもやってるでしょとか答えておいて、以後常にお題目だけに終わる行政改革に取り組めばよかったのに。それで首相をうそをついていると批判するマスコミが担ぎ上げていたのが、スキャンダルで詰め腹切らされたことを怨みに思っていそうな元官僚というので、批判の信憑性が薄れていたのには笑ったけどさ。
外交だと、チェコスロバキアとの国交樹立百周年でスロバキアに来られたのは大きなプラス、ついでにチェコに寄ってくれなかったのはちょっと残念だった。全体的に言うと、日本の存在感は増したように思う。特にトランプ大統領の出現も利用して、中国や韓国、北朝鮮に対して、無意味な譲歩をせずに、きっちりと主張すべきことを主張していたのは、賞賛に値する。後任が誰になるにせよ、この路線だけは引き継いでもらいたいところだ。
日本国内で井の中の蛙になっていると、対話路線とか相手のことを考えてとかいう一見正しそうな意見に賛成してしまいそうなるのもわかるが、一方的に譲歩させられるのは対話とは言わないし、相手がこちらのことを配慮しないのに配慮するのは相手を付けあがらせるだけである。チェコと中国の近年の関係を見ていれば一目瞭然で、EUに対してはチェコは主権国家なんだからとえらそうなことをいう連中が、中国の顔色を伺ってダライラマやら台湾やらに対応しているのは滑稽ですらある。
内政干渉という言葉を、自国がする場合と、される場合とで、別の意味で使用するような国とはまともな外交関係なんて結べないし、結ぶべきでもない。経済優先とかで経済的な関係を深めていくと、そこからつけ込まれるから、慎重にした方がいいと思うんだけどねえ。手遅れになる前に手を切って外交上必要最低限の付き合いにとどめておくのが一番である。ドイツに真似するべきところがあるとすれば、第二次世界大戦中のことはすでに終わったこととして、追悼などの儀式は行なっても、それを現実の政治や国際関係の中には持ち込ませないようにしているところだけである。
安倍首相は、首相は辞任しても国会議員は続ける意向のようだ。上にも書いたが、安倍首相のことはこれまでの首相たちとの比較では、かなり高く評価している。これで、国会議員を辞めるときに、地元の後援会の意向に反して後継者を立てなかったら、過去最高と評価してもいいところである。
2020年8月29日9時。
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