ヨーロッパで人権侵害国家とみなされているのは、ベラルーシである。ルカシェンコ大統領のやっていることが、ロシアのプーチン大統領と比べてどうなのかというのは、よくわからないが、石油を握っているロシアに対しては、経済制裁をするといっても腰の引けたものになるEUも、そんな制約のないベラルーシに対しては強気の制裁を続けていて、東の外れとはいえヨーロッパの一部なのに、政治的には村八分状態に置かれている。以前、確かプラハで行われたヨーロッパ諸国を集めて行われた会議に、ベラルーシだけが独裁政権であることを理由に招かれていなかった。
ロシアは正式にだったか、オブザーバーだったか忘れたけれども招待されて参加していて、それに不満なウクライナの反ロシアのグループが、腐った卵だったかトマトだったかをロシアの代表に投げつけるという事件を起していた。とにかくベラルーシは、かなり前から政治的には、悪い意味で特別扱いを受けていたわけだ。
それが、昨年の大統領選挙を巡る不正、反体制派に対する弾圧などに不満なヨーロッパの人権派の人たちが、ベラルーシの反体制派の求めに応じて、大会のスポンサーに圧力をかけて、ベラルーシでの開催を拒否させようという運動を始めた。その動きに、スポンサーのシュコダ社が乗って、主催者のIIHFに、ベラルーシで開催するならスポンサーを降りるという通告をした。その結果IIHFは、ベラルーシから開催権を剥奪し、最終的にはラトビア単独での開催ということになった。
一応安全上の理由という名目上の理由は立てられているが、この開催地の変更は政治的な決断であることは否定できまい。アイスホッケーの世界選手権が、反体制派を支援する人たちに政治的に利用されると同時に、アイスホッケー協会、ひいてはスポーツがベラルーシの国内政治に口を出したことになる。いや、ヨーロッパの良識派たちがスポーツを通して口を出したというほうが正しいか。
このことの是非を云々するつもりはないが、スポーツに政治を持ち込まないということは、逆に言えばスポーツが政治に口を挟まない、スポーツを政治的に利用しないということでもあったはずだ。その理念を破る前例がここに生まれたわけである。ならば、人権を守ることを第一義として活動している人たちに、次に期待されるのは、人権侵害のひどさではベラルーシどころではない中国で行なわれる国際大会の開催地変更を訴えることだろう。
当然、オリンピックもその対象になるから、IOCのオフィシャルスポンサーなんかに対して不買運動を展開して、北京オリンピックの開催中止を求めなければならない。本気で世界から人権侵害をなくそうと考えているのなら、それぐらいのことは期待してもいいよなあ。やってくれたら、この手の正論好きの人のことを見直してもいいのだけど実現はしないだろうなあ。親玉のEU自体が中国に対しては、経済的なことを考えて及び腰だしさ。
東京、北京と中止になれば、オリンピックを開催し続ける意味があるのかという議論も巻き起こるのだろうけど、何があっても惰性で次の大会が行われ続けるということになりそうだ。うーん、うまく落としどころを見つけられなかった。
2021年3月24日24時30分
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