それはともかく、1980年代に初めてアメリカの大統領選挙を見たときから疑問に思っているのは、何でアメリカではこんなややこしい方法で大統領の選挙が行なわれるのだろうということである。今でも覚えているのは、初めてアメリカの大統領選挙について、テレビで見たときに、アメリカでは大統領を直接選ぶのではなく、選挙人という大統領を選挙する権利を持っている人を選ぶのだという説明である。
その時はへえと思ったのだが、同時に、選挙人の選挙の後選挙人が大統領を選ぶ選挙が行なわれるものと思っていたらそんなことはなかった。選挙人はどちらの候補者に投票するか事前に表明しているから、わざわざ選挙人による投票をする必要はないのだという説明があっただろうか。それでも、選挙の結果、一つの州の選挙人は必ず一人の候補者を選ぶ選挙人しか当選しないのは理解できなかった。
選挙人に投票して、得票数の多いほうから当選者を決めていくのであれば、得票数によって順番がつけられ、上から当選者が決まっていくはずである。その場合、当選者がどちらかの候補者の選挙人だけということはありえない。結局、選挙人を選ぶ選挙というのは、建前、もしくはまやかしであって、その実態は候補者による州を対象とした陣取り合戦だということを理解したのは、かなり時間が経ってからのことだった。うちのは、西部開拓時代に作られた制度を後生大事に使い続けているだけだと言っている。
それはともかく、その後、大統領選挙で投票したい人は、有権者登録というものをしなければ行けないという話を聞いて驚いた。日本なんて、チェコもだけど、住民登録さえしてあれば、住民票のある自治体の有権者として認定されて、何もしなくても選挙の案内が届くのと比べると、有権者に対して不親切な制度である。
アメリカ人というと、自分の義務は棚に挙げて、権利権利とうるさい人たちだという印象があるのだが、権利の一つである選挙権を行使するのに、余計な手間がかかる制度を許容しているのが不思議だった。権利にうるさいからこそ、自分の権利は自分で守れとか、権利を行使したければ、そのための行動を取れということなのだろうか。
今回の選挙では、郵送による投票の数が多いことがニュースになっていたが、これも疑念の対象になる。選挙の際には普通に行われるはずの本人確認に関して、どのようにして行なっているのか、そもそも実施しているのかどうかさえわからなかった。こんな適当さなら、有権者登録の際にもあまり細かい確認はしていないのではないかとさえ疑ってしまう。
トランプ大統領の肩を持つ気はないが、チェコでこのレベルの投票システムだったら、不正はやりたい放題だろうなあと思ってしまう。大統領も前回の選挙の経験があるのだから、選挙のやり方、特に郵送での投票や期日前投票という問題になりそうな部分の改正をすればよかったのに。そうしていれば、今の不正投票だという主張に多少は説得力があったはずである。
とまれ、アメリカの大統領選挙に関しては、以前も、どこかの州で表の数え直しがあった結果、勝敗が変わったとか、後で確認したら本当の勝敗は逆だったけど、就任してしまったから仕方がないなんて、真偽も定かではない話を聞いたことがあるが、アメリカの有権者はこの選挙制度に満足しているのだろうか。政党内の候補者選びから始まる大統領選挙を、エンターテイメントのイベントのように捕らえている人が多いのかもしれない。選挙中、選挙後の舌戦も含めて楽しんでしまうということか。流石は娯楽の国アメリカである。今回の娯楽イベントは、トランプ大統領が裁判とか言っているから、いつもより長引きそうだし、アメリカの人たちも満足できることだろう。
2020年11月6日12時。
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