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2022年02月08日

諸戸博士のモラビア・シレジア紀行 五日目







 六月九日、金曜日、晴天。午前八時、独逸マイステル森林事務所前に集合し施業按の説明あり。之れより林道を視察して、十一時ルードヴイヒタール村に達し、木材工業場を視察す。此の工場にては桶製造、曲木細工(椅子、玩具用車輪等)、木醋製鉋片製造あり。工場長の丁寧なる説明あり。ぶなの曲木は山林局目黒林学試験場の試験にては非常に困難なりしが、此の工場にては実に容易にして、余は其簡単なるに驚けり。ぶなの材質の異る為か、蒸煮の加減なるか、職工の熟練なるか、不明なれども、実に簡単なり。又佐藤林学士は曲木工場視察に非常に苦心せられ、半年も運動して漸く縦覧を許されたりとのことなるが、余は幸にして少しの故障なく縦覧を許され、且つ非常に歓迎せられて丁寧に説明を聞くを得たり。且つ所長曰く、貴下教授として曲木細工に趣味あれば、二三ケ月間滞在して研究せられよ。少しも秘密なし。唯だ熟練のみ唯一日や二日間の目撃にて出来るものにあらずと。余は所長の此の言の正当なるを信ず。午後一時半ヴルベンタール(Würben thal)小林区署附近の森林内にて午餐を喫す。


ルードヴイヒタール ルドビーコフ(Ludvíkov)のドイツ名。カルロバ・ストゥダーンカからブルブノ・ポド・プラデデムに続く道路沿いの村。
ヴルベンタール ブルブノ・ポド・プラデデム(Vrbno pod Prad?dem)のドイツ名。



 午後三時半出立。林道、及び鹿の害を視察して、午後七時カールスブルンに帰る。
此の夜八時、晩餐会あり。午後寄宿す(旅館へ)。





 短いけどこれでお仕舞い。
2022年2月7日





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