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2017年01月14日

クリスマスツリーの行方(正月十一日)




 また一般の家庭でも、鉄やプラスチックで作られた人工のクリスマスツリーを使っている家もあるが、クリスマスマーケットなどで販売されている小さな針葉樹を購入し、それを台座にセットしてクリスマスツリーにするところが多い。こちらは森林から切り出してくるのではなく、クリスマスツリー用に、特別の畑?で育てたものらしい。

 問題は役割を終えたクリスマスツリーをどうするかである。飾りは取り外して翌年また使用するにしても、切られて根から離れた木を再利用することはできない。家庭の場合には普通のごみとして捨てようにも、ゴミ回収用のゴミ箱の中に入りきらないし、他のゴミと同じように燃やしてしまうのは、もったいないというか、罪悪感を感じるというか、とにかくこれではいけないと考えた人がいたのだろう。
 びっくりするような再利用法を考え出された。初めて聞いたときには耳を疑ったのだが、家庭で役割を終えたクリスマスツリーを、動物園に提供するというのだ。かつては、ゴミの収集場所の大きなゴミ箱の脇に何本もの飾りの外されたクリスマスツリーの成れの果てが積まれていて、それだけを回収するゴミ回収車がこの時期だけは走っていたのではなかったか。
 回収されたクリスマスツリーは、象などの巨大な草食動物の餌として使われていた。熱帯の広葉樹の葉っぱを食べているはずの象やキリンが、針葉樹の松の細くとがった葉っぱを食べるというのがまったくイメージできなかったのだが、ニュースで象が嬉しそうに食べているのを見せられて納得するしかなかった。冬場に青々とした餌が食べられるだけでも嬉しいのだろうか。

 その後、この手の廃クリスマスツリーに飾りをぶら下げるために使った針金が残っていたり、花火の火薬がついていたりするのが問題だというニュースも見たので、現在でも以前のような回収と動物園への提供が行なわれているのかどうかはわからない。ちなみに、チェコでは花火は、人が手に持って火をつけるような花火も冬のもので、特にクリスマスの時期に家の中ですることがある。以前クリスマスツリーの飾りに花火をぶら下げて、それに火をつけているのを見かけて、目を疑ったことがある。
 田舎に行くと、広い庭で野菜を育てている人が多いので、クリスマスツリーも最近流行の有機肥料を作るためのコンポストに切り刻んで放り込むという人が増えているだろうし、最近、ゴミの回収に当たっては、木の枝や草などのコンポストに使えるものを分別して回収しコンポスト化することを自治体に義務付ける法律が施行されたらしいので、それならゴミに出しても、無駄だという印象は小さくなるだろう。

 一方で、クリスマスマーケットに立てられたクリスマスツリーのほうは、今でも動物園に提供されているようで、プラハの旧市街広場のクリスマスツリーが、プラハのトロヤにある動物園に提供され、子象がもらった針葉樹の枝を食べるのではなく、枝で遊んでいるシーンが放送された。さすがに幹や太い枝は餌にはできないので、粉砕して小さなかけらにして別な用途に使用するらしいが、動物達にとってはこの時期の特別な食事となっているようだ。もちろん、家庭から出されたものよりは信用できるとは言っても、動物達に与える前に切り分けながら針金などの動物を傷つけかねないものがついていないかどうか入念なチェックをしているらしい。

 悩ましいのが、この事実をどのように評価するかということだ。針葉樹の大木を高々何週間かのクリスマスマーケットの飾りとして使用して、そのまま捨ててしまうのはもったいないから再利用しようというのにはまったく異論はないのだけど、それを手間隙かけてまで動物の餌にするというのはどうなのだろうか。象やキリンと針葉樹という組み合わせになじめないせいか、他にもっといい再利用の方法はないのかと考えてしまう。
 さらに言えば、一部の自治体のように木を植えてしまったほうがいいような気がする。すでに成長したものを移植というのは難しいだろうから、苗木を植えて、それが成長したらクリスマスツリーとして使用するという長期的な計画はどうだろうか。家庭にしても鉢植えじゃ駄目なのかなと感じてしまうのは、クリスマスツリーなんぞのために、木の命を奪うのはおかしいと考えてしまう日本人的な思考なのだろうか。
 そう考えると、不思議に思われた、シュマバの森の害虫にやられてしまった木々を被害が広がらないように伐採することに対して、強硬に反対している環境保護論者たちが、クリスマスツリーのための木の伐採に対しては特に声を上げていないのも、あいつら日本人的な思考じゃないからと考えておけばいいのか。まあチェコ人だしね。
1月11日23時。



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