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2017年01月18日

悩み多きものよ(正月十五日)




 先日会った日本の方が、若いのに「トルコ」という言葉を、昭和の終わりに使われなくなった特殊な意味で使用しているのを聞いて、いくつなんだろうと不思議に思ったのだけど、人のことはいえないのである。同時代よりも、一昔前の音楽や文学に惹かれることが多かったのだ。ああ、だから再放送だらけの、七十年代、八十年代の音楽やドラマ、映画が繰り返されるチェコが心地いいのか。

 それはともかく、最近停滞気味の『小右記』関係であれこれ史料を漁っている。日本から本を取り寄せるようなお金はないので、ネット上で手に入るものを探すと、本文はすでに書いたように東京大学資料編纂所が、『大日本古記録』の各ページの画像データを提供しており、しかも裏にテキスト化されたものがあるようで、検索をかけて必要な記事を探せるようにもなっている。学生時代に、思い切って大枚はたいて、『大日本古記録小右記』全十一巻を購入したんだけど、今の学生はそんな必要もないということか。あの時は購入してからかなり経って、最終巻に大きな印刷ミスがあるのに気づいて、岩波書店まで交換をお願いしに行ったのだったなあ。
 この『大日本古記録』については、かなり前から知っていたのだが、気がついたら『大日本史料』も同じようにデータベース化されて、画像データが提供されていた。これは学生時代には、こちらが見たい年代の編集が終わっておらず、まだかまだかと思っていたのを思い出す。今でも完全には編集は終了していないのだろうが、以前は存在しなかった、年代の分冊も刊行、いやネット上に公開されていてうらやましくなってしまう。

 知らない人にちょっとだけ解説すると、『大日本史料』は、歴史上の出来事について、典拠となる史料の関係ある記述を引用して、まとめた史料集である。体裁としてまず日付があって、その日に起こった出来事が項目として立てられ、その後に史料の引用が続く。一つの件に複数の史料が引用されていることも多い。『扶桑略記』のような私撰の歴史書から、『大鏡』のような歴史物語、『小右記』のような個人の日記、それにどこで読めるかもわからないような史料からの引用もあって非常に重宝する。日付がはっきりしない出来事に関しては月ごとにまとめて月の末尾に掲載されているんだったかな。対象となる時期は、六国史以後なので、平安時代の宇多天皇の時代からということになる。
 学生時代には、この『大日本史料』よりも、『史料綜覧』を利用することが多かった。こちらは引用の本文はなかったが、出典が上がっているので自分で記事を探す際の参考にできたのだ。とはいえ、こんなものを個人で自宅に持っていても仕方がなく、出典となる史料を確認できる大学などの図書館でなければ使う意味はあまりなかった。

 しかし、今や『小右記』もネット上で閲覧できる時代である。『大日本史料』とは違って本文の確認はできないが、手元においても損はないような気がしてきた。もちろん、ネット上で使用できるのならである。そこで、もしかしたらと、国会図書館の「近代デジタルライブラリー」で検索を掛けてみたら出てきてしまった。それどころか、『大日本史料』うち刊行年代が古いものも閲覧できるようになっている。画像の表示に時間がかかるのが玉に瑕だけど、チェコから閲覧できることのありがたさを考えたら、贅沢は言えない。
 閲覧だけでなく、書く見開きページを画像としてダウンロードして保存することもできた。だけど、何百ページもあるものを、見開きだから半分になるとは言っても、一枚一枚落としていくのは面倒で、何か方法はないかと探したら、印刷ボタンで、PDFファイルを作成できることに気づいた。一度にPDFにできるのは最大五十ページなので、いくつかに分割する必要はあったが、一枚一枚ちまちまやっていくのに比べたら、雲泥の差である。

 この近代デジタルライブラリーでは、『公卿補任』『尊卑分脈』、史料大成版の『小右記』、それに『北山抄』も、発見できてしまった。儀式書の『北山抄』なんか、詠む機会はないだろうなあとおもいつつ、小野宮流の公任の著作だし、実頼の『水心記』の逸文もありそうだよなあとか考えて、せっかくだからダウンロードしてしまった。貧乏性である。『北山抄』は、この手の蔵書の豊富だったうちの大学の図書館でも閲覧できなかったんじゃなかったかな。『西宮記』があればいいと考えて探しもしなかった可能性もあるけど。

 とまれ、ジャパンナレッジのおかげで、『新編古典日本文学全集』『日本国語大辞典』『国史大辞典』なんかも、ネット上で使用できるようになっているのである。ということは、今の国史国文の大学生って、一部の史料の版が古いことを気にしなければ、大学の図書館にこもる必要はないってことじゃないか。図書館の閲覧室の机の上に史料を積み上げていた昔が懐かしいぜ。
 あとは、『平安時代史事典』と『大漢和』、『漢文大系』あたりがネット上で使用できるようになるところまで時代が変わることを期待しよう。
1月16日22時30分。




posted by olomou?an at 06:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 戯言
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