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2019年10月18日

中華スラビアの終わり?(十月十六日)




 プラハ市長が、協定の、いわゆる一つの中国条項を問題にして削除しようとし始めた時点で、海賊党の政治的パフォーマンスだとか言って批判していたが、破棄の話が出てくると、チェコ中関係で何が起こってもおかしくないとか、何が起こってもプラハの責任だとか、お前どこの国の人間だよと言いたくなるような脅迫じみた発言をしていた。

 その脅迫の一環としてもらしたのが、今のままではスラビア・プラハのオーナーを務めている政府系の金融機関が撤退する可能性が高いというものだった。買収直後であれば、スラビアファンを喜ばせたに違いないこのニュースだが、現状を考えると、ファンの心理は微妙であろう。中国資本が手を出す前のスラビアは、破産寸前で成績もどん底に低迷していたのが、あれから数年でプルゼニュとチェコ最強チームの座を争い、チャンピオンズリーグの本戦に出場するまでになっているのである。
 一説によると、中国資本が手放す予定のスラビアを買収しようとしているのは、カタールの王族の一人らしい。ついに中東のオイルマネーがチェコのスポーツに流入する可能性が出てきたのだ。ハンドボールにつぎ込んでくれと思ってしまうのは、優勝チームさえ金銭的な理由で、ハンドボール版チャンピオンズリーグに参戦できない実態を知っているからである。今年は女子のモストが参戦しているから以前よりはましになってはいるのだけどさ。スポーツ間格差が大きすぎる。

 このゼマン情報に対して、スラビア側は具体的な発表は何もしておらず、つまり、肯定も否定もしていないのだが、ガセなら中国資本の代理人のトブルディークが即座に否定のコメントを出しそうなことを考えると、あってもおかしくない気はする。前のオーナー企業の社長が逮捕されたか何かで姿が見えなくなったという時点で、きな臭いものはあったし。

 それでもう少し情報を探してみたらあった。そのネット上の記事によると、中国資本が、ビジネスとしても最も成功を収めている中国からチェコへの投資であるにもかかわらずスラビアを手放そうとしているのは事実らしい。ただし、その理由は、ゼマン大統領が主張するようなプラハに対する復讐ではなく、以前から計画されていたものだという。
 その記事によると、中国側が問題にしているのは、スラビアを最初に買収した中国企業の社長が、実はゼマン大統領の経済顧問にも任命されていたのだけど、詐欺罪だったか、汚職だったかの廉で中国で逮捕されたことらしい。実は逮捕されたのかどうかも定かではなく、ゼマン大統領が中国を訪問したときにも、登場しなかったことで憶測が流れたのだったかな。その後、スラビアのオーナー企業を政府系の会社が引き継いだことで、恐らく粛清されたのだろうということになった。

 とまれ、そんな共産党政権によって排除されなければならなかった人物が主導したプロジェクトは、長く継続する気がなく、買い手が現れればすぐに手放す予定だったのかもしれない。買い手なしに手放して撤退するのは、ゼマン大統領の顔をつぶすことになるから避けていたということだろうか。そして、買い手として現れたのがカタールの王族というから、チェコとしては喜びにくい。
 もう十年以上前の話だが、アラブの王族がプラハに居を構えていて、金をばら撒いて未成年の女子を自宅に連れ込んであれこれよからぬことをしていたというので摘発されたことがある。同じ人物が来ることはないだろうけど、そういう先人がいると警戒してしまうものである。あの捕まったアラブの王族は、外交取引で国に帰ることが許されたんだったか。その後のことはニュースになっていないけど、無罪放免にはなっていないはずだ。

 イギリスのどケチオーナーから始まって、金満中華資本、オイルマネーとスラビアのオナーの変遷というのも、なかなか一筋縄では行かない。意外なことに金は出すけど口は出さない現在の中華オーナーって悪くないんだよなあ。口を出さないのではなくて、オーナー企業が変わったせいで、事情がわからなくて出せないだけかもしれないけど。
 チェコと中国の間では、他にもいくつかスポーツに関して協力を進めている。例の中国のアイスホッケーチームの話とかさ。いずれも中国の強化につながっているから、プラハに対する復讐なんてくだらない理由だけで中止ということにはならないだろう。ゼマン大統領はありえると言っているみたいだけど。
2019年10月17日20時。









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