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2020年10月13日

バビシュ首相迷走1(十月十日)





 バビシュ首相は、春の武漢風邪流行の始まりのころ、チェコでも感染者が出始めた時点で、非常事態宣言を発した。その際の演説では、非常事態宣言を発したことに関しても、非常事態宣言下で導入される規制に関しても、すべては自分の責任だと断言した。うまくいっているときは自分の手柄にして、問題が起こると他者に責任を押し付けるような発言をすることの多かったバビシュ首相が、武漢風邪の流行という問題に際して、自分が責任を取ると言い出したことに、驚く思いをした人も多かったはずだ。

 それがおかしくなったのは、国境の閉鎖、外出禁止令などの対策が功を奏して、感染者の数が減り始めたころ、そろそろ規制の解除が日程に上がってもいいのではないかと思われ始めたころのことだった。すでにハマーチェク氏がプリムラ氏に代わって対策本部の指揮を執っていたかな。とまれ、専門家である衛生局が感染状況を見て決めることだから、政府に規制の解除をしろと言われても、困るなんてことを言い出した。


 その後、規制解除を求める勢力の圧力に負けて、専門家の意見をどこまで聞き入れたのかは知らないが、徐々に規制を解除し、夏休みになると、外国への旅行もほぼ無制限、マスクの着用の義務も廃止するなど例年とあまり変わらない状態にまでなった。そのころには、武漢風邪の流行を抑え込んだとばかりに政府の対策のおかげで武漢風邪に勝ったとまで自画自賛していた。野党は春の対策の導入や、その後の解除のやり方が場当たり的で、このままでは第二派が来たときにも対策が遅れると批判していたのだが、批判する前に数字を見ろとか言って威張っていたのがバビシュ首相である。

 プラハのクラブの深夜パーティーで100人以上の集団感染が発生した際にも、操り人形であるボイテフ厚生大臣に、無軌道な感染の拡大は起こっていないと言わせ、同時に経済を止めないという理由で、深夜営業の禁止や、座席数以上に客を入れることを禁止するような、9月の半ばになってから導入された対策も導入されなかった。

 9月が近づいて、休暇で国外の感染地帯に出ていた人たちが職場や学校に戻る前に、ボイテフ厚生大臣がこっそり再導入しようとしていたマスク着用の義務を、大臣が発表する横から口を出して、導入させなかったのもバビシュ首相である。規制については専門家が決めると言っていたはずなのに、横車を押して決定を変えさせた結果、流行の拡大が止まらなくなったのである。この頃は、チェコは感染症の押さえ込みに成功したという神話によっていたから、人々が望まない規制の導入には踏み切れなかったのだろう。これに限らず、バビシュ首相の意向と、現実に必要な対策のスリ合せに腐心していたボイテフ厚生大臣大変だっただろうなあ。調整型の政治家としては、実はそれなりに有能だったんじゃないかという気もしてきた。

 その後、バビシュ首相の予想を超えて、いや期待を越えて患者の数が増え始めると、それまでは、チェコは世界でも感染症対策に成功している国だという主張を突然変えて、状況が非常によくないことを認め始めた。君子は豹変するとは言うものの、それまでの反省もなく、皆が規制を解除して経済の再スタートが必要だというから、規制を解除したらこうなったんだなんて言い訳を述べていたような気がする。確かに野党も含めて規制の解除を求めていたのはそのとおりだけど、最終的に決定したのは政府であって、その責任を負うべきも政府のはずなのだが……。
 長くなったので次回に続く。
2020年10月11日22時。












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