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2011.05.06
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カテゴリ: お役所システム
 将来、生活困難に陥ることが確実な、無収入もしくは低収入のワーキングプアとか壮年パラサイトシングルをサポートする制度はないとのことで・・・・・

つい先ほど触れた「フレンチ・パラドックス」が日本社会のヴィジョンを描いているとするなら、この本はもっと緊急な、トリアージュでいうなら赤、日本社会にレッドカードを突きつけているようなものである。


「ワーキングプア時代」山田昌弘著、文芸春秋社、2009年刊
p40~41

<ワーキングプアを救う制度が存在しない> 
 「フルタイムで働いても人並みの生活ができないほどの、低収入の職にしか就けない」 「自分を扶養してくれる家族が存在しない」
 この二つの条件が重なった場合、現在の社会保障・福祉制度では、彼らをサポートする手立てがない。
 現在の日本社会では、いわゆる経済的セーフティネットとして、「生活保護」「最低賃金」「雇用保険」の三つの制度が存在している。しかし、この三者とも、現代社会に特徴的なワーキングプアに対応できない。日本では、セーフティネットが多重に用意されていると発言した官僚もいたが、それぞれの制度は、ワーキングプアが存在しない時代の産物なのだ。セーフティネットが多重に存在しているという事実自体が、逆に、ワーキングプアに対する統一的な対応ができていない証拠なのである。なぜなら、そのすべてから漏れてしまうケースが出てきたからだ。
 まず「生活保護」だが、これはフルタイムで働くことが困難で扶養してくれる家族も存在せず、かつ、一定額の貯金、年金受給権、売却可能な資産などない場合に、税金を原資に支給されるものである。そして、これらの要件を満たすかどうかを、担当役所で調査する(これを資力調査―ミーンズ・テストという)。章の冒頭に示した例のように、収入が少ないからといってもらえるものではない。すると、この制度はワーキングプアとは、ほとんど無関係な制度であることがわかる。自宅も貯金もなく、雇用の場を失っても、無収入でもフルタイムで働くことが可能だとみなされれば、生活保護はなかなか受けられない。現実に職に就いておらず無収入でも、働く意思ありとして生活保護費の支給が打ち切られるケースもある。特に、健康な若年者の場合は、申請してもなかなか認められない。
 当然のことだが、収入がある親と同居している低収入の若者は、生活保護を受給できない。また、現在の死活保護は、あくまで、病気や高齢、ひとり親で子供が幼いといった理由で、フルタイムで働きたくても働けない人のためのものである。それゆえ、本当に働けないのかどうか、調査が行われるのである。働けるのに働く場がない、働いても収入が少ないといった人々を救い出す制度ではないのだ。


p48~52

<親と同居する未婚者の世代的特徴> 
 日本では、低賃金で不安定な仕事に就いている若者の多くは、未婚で親と同居し続けることによってワーキングプアに転落することを免れている。つまり、中高年の親が、低収入の若者の社会保障・福祉制度の代行をしているのである。しかし、親はいつまでも生きているわけではなく、多くの場合、親の方が先に亡くなる。親に生活をサポートされているからといって、問題がないとはいえない。
 まず、時代的な変化を述べておこう。日本でフリーターなど低賃金で不安定な非正規雇用が増大したのは、1990年代後半である。その時期に学校を卒業(または中退)した若者は正社員として雇用されない人が多く、非正規化の被害をもっとも受けた。彼らは、1970-75年生まれで、いわゆる団塊ジュニア世代とほぼ重なり、今では、ロストジェネレーション、略して「ロスジェネ」とも呼ばれている。彼らの親世代である団塊世代は、当時50歳前後で、年功序列賃金慣行のおかげで父親の収入は相対的に高く、雇用は安定しており、持ち家率も高く、経済的に豊かな状況にあった。家庭の中に、低収入の未婚の息子や娘の生活をサポートする余裕が十分にあったのである。それゆえに、日本社会では、この時期には、若者の不安定雇用が社会問題とならなかった。若者のワーキングプアが社会問題として取り上げられるようになるのは、親自体の経済状況が悪化したことで子をサポートできないケースや、地元で職がないため、都市部や大工場がある場所に移動してきた一人暮らしの若年男性が増大する、2000年代後半になってからである。

 日本社会では、結婚まで親と同居し続けるのが一般的で、成人未婚者の親との同居率は、おおよそ8割である。そして、現在、未婚率が高まり、2005年時点で30代前半の男性では47.1%、女性では32.0%に達している。その結果、20歳から34歳までの親同居・未婚者は、2007年時点で約1100万人いる。
 親と同居している男性の中でも、収入が安定している人は、結婚して離家する割合が高い。そのような男性と出会った女性も結婚して離家する。しかし、収入が相対的に低く不安定な男性は、結婚相手として選ばれにくく、自立して生活することは難しい。一方、女性も、定職に就く男性の絶対数の不足から、未婚のまま親と同居し続ける人数が増える。また、女性の非正規雇用率は男性よりも高く、平均収入も低い。その結果、相対的に低収入の男性と、結婚相手に恵まれなかった女性が、親と同居し続けることになる。
 親と同居している若者も当然年を取る。その結果、現在、壮年の親同居未婚者が数を増しつつある。総務省統計研修所の研究官の分析によると、2007年現在、35歳から44歳(1963-1972年生まれ)までの親同居未婚者は全国で264万人に達し、当該人口の14%となっている。図を見ればわかるように、近年、その人数は急速に増加し続けている。その理由は、1990年代後半に低収入の非正規雇用に就かざるをえなくなった若者が年齢を重ね、壮年世代に突入したからである。いまの30代前半までの若者の雇用の大幅な改善が見込めないなら、その数は今後ますます増えていくだろう。


p55~57

<年金パラサイト・シングルをサポートする社会保障・福祉制度がない>
 将来、生活困難に陥ることが確実な、無収入もしくは低収入の壮年パラサイトシングルをサポートする制度はない。それには二つの理由がある。
 まず、現行の制度は、親の年金に依存して生活する低収入、無収入の壮年が存在することを想定していない。壮年であれば、結婚して仕事か家事をして生活をしているか、もしくは、一人暮らしであることが制度の前提になっている。
 もう一つは、社会保障の単位が基本的に「」に置かれていることである。年金等の収入がある親と世帯を同じにしていれば、親の収入に依存してでも人並みの生活を送れているから、福祉の出番はない。将来、親が亡くなったときに生活困難に陥ることは予測できても、現に生活に困っていない人をサポートする制度はない。
 もしも一人暮らしで収入が低く、生活に困っているなら、就労支援や生活保護にひっかかってくるだろう。また、親と同居していても、親の収入が低ければ、これも社会福祉の対象となるだろう。しかし、収入のある親と同居し生活している限り、その問題性は潜在し、表に出てこない。

 親との同居によって問題が隠されるのは、未婚者に限らない。私は、離婚調査をしていたときに、離別後、実家に帰って親と同居するケースが多いことが気になった(私の調査では、離別後に親と同居する女性は40%、男性でも30%に達している)。私がインタビュー調査した中では、ある乳児を持つ母親が離別して実家に帰ったとき、定年退職した自分の父親が再就職して、母子の生活を支えてくれたという。このケースでは、子供を母(つまり子の祖母)に預けている間に自分は就職活動をし、正社員として就職、数年後、自立して生活できるようになったという。これも親が母子家庭の生活保障と就職活動中のサポートを政府に代わって肩代わりしていることになる。正社員としての就職先も見つからず、親の年金に依存して生活する母子もかなり多くなっているに違いない。
 現実の貧困が親との同居によって「一時的に」隠され、問題が先送りされているのだ。







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Last updated  2011.05.06 09:34:17
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