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2011.05.16
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カテゴリ: 気になる本
「バカ組・利口組」に二極化した新しいタイプの階層社会が出現しつつあるというキャッチコピーで内田先生が「街場の現代思想」を著したのは2004年である。
 格差がさらに広がった今、この本の「フリーターについて」という章を読んで感慨を覚えるのです。

「街場の現代思想」内田樹著、文春文庫、2008年刊(2004年単行本の文庫化)

<フリーターについて>p139~141
 あらゆる政治的・経済的ファクターについては(レーニンが言うように)「量的変化が一定の段階を超えると質的変化をもたらす」という原則があてはまる。フリーターのような「低賃金で高品質で、いつでもカク首できて、そのくせ商品略奪もしないし、労働組合も作らないで、静かに失業を受け入れてくれる市民たち」が一定数存在することは雇用調整上はたいへんに好ましいことである。
 しかし、「一定数」いるのは資本主義にとって好ましいフリーターとはいえ、それがあるパーセンテージを越すと資本主義の危機をもたらす恐るべき存在に変容する。
 だって、そうでしょ?
「低賃金」であるということは「可処分所得が少ない」ということなんだから。
 市場経済のプレイヤーたちは、「安いコストで商品サービスを提供する」ことで利益を得るわけだが、「買ってくれる人」がいなけりゃ、そもそも市場そのものが立ちゆかない。
 フリーターは「貧乏」である。「貧乏人」は家も買わないし、車も買わないし、国債も買わないし、預貯金もしない。フリーターという低賃金労働者を収奪することでささやかな浮力を得た日本経済は、低賃金労働者を収奪し過ぎたことによって、今度はわれとわが首を絞めているのである。行政や財界が焦っているのは、それに気づいたからである(今頃気づくのもどうかと思うが)政府が「若者自立・挑戦戦略会議」(すごいネーーミングだな)を召集してフリーター問題の対策に本腰を上げたのは2003年の6月の話である。
 企業の方はもう少し対応が早かった。エスキモーに冷蔵庫を売り、貧乏女子大生にヴィトンのバッグを買わせるのが資本主義の骨法である。メディアで煽って、貧乏フリーターたちのなけなしの可処分所得を絞り尽くすことなど朝飯前だ。だから、消費者金融のTVCMでは「コンビニや道路工事で働くフリーターたち」が「未来を担保にして」バイクを買ったり、ストラトキャスターを買ったりして微笑んでいる姿をばんばん流している。
 たしかに、売り手の側に「手段を選ばない」非情さがあれば、フリーターを自己破産覚悟の消費行動に駆り立てて、マーケットのサイズを短期的に拡大することはできない話ではない。
 だが、そのようにしてフリーター諸君を「絶対的窮乏」のうちに追い込むことで、結果的に日本資本主義はさらなる危機を招来することになる。
 貧乏なフリーターは再生産しないからである。

 「結婚しても今の生活レベルは下げたくない」とか「お金のない人とは結婚しません」と公言してはばからない若い女性に私たちの時代は事欠かない。どのような社会倫理が彼女たちのゆがんだ価値観をサポートしたのか、ここではあえて問わないが、ともあれ、このきわだって拝金的な趨勢の中で、男性のフリーター諸君が配偶者を得るチャンスはきわめて低いと言わねばならない。
 配偶者を得られないと、そのあとどうなるのか。考えるまでもないことである。
 日本の人口が激減するのである。


2001年4月24日に小泉内閣が発足したが、鎌田慧さんはその2ヶ月後にミニコミ誌「記録」6月号で早くも、小泉「構造改革」に警鐘を上げていました。
鎌田さんの「コイズミという時代」(2004年刊)より雇用のあたりを紹介します。

「コイズミという時代」鎌田慧著、アストラ、2004年刊

<弱肉強食政策が日本を失業者だらけに>p15~17
 首相に就任して以来、小泉が強調しているのが「構造改革」である。「構造改革なくして景気回復なし」という発言を、なんどとなく繰り返している。では、景気回復の目玉である経済改革とは、どんなものか。
「構造改革を実施する過程で、非効率な部分の淘汰が生じ、社会のなかに痛みを伴う事態が生じることもあります」
 この発言は、小泉の所信表明演説で語られたものだ。読めばわかるとおり、彼の経済改革は弱者切捨ての論理であり、強者にくみしたグローバリゼーションへのシフトを明確にしている。つまり大企業バンザイ主義である。いかに大企業の暴走をチェックして、国民の生活を安定させていくかという視点を、まったく欠いている。
 さらに驚くべきことには、終身雇用制の抜本的な見直しを厚生労働省に指示している。 
 1.2~3年の期限付き雇用の対象拡大
 2.解雇ルールの明確化
 これらの方針は、生涯雇用を中心にした現在の雇用制度を抜本的に変えてしまう。2~3年の雇用形態が広がるということは、2~3年でクビにされるのが前提の、いわば「一億総臨時工」化となる。解雇が全面的に進められていくことになる。彼の経済改革の本質は、ここに見事にあらわれている。こんな政策で景気が復活するはずもない。
 最近の欧州の政策は、いかに雇用をつくるのかが重要視されている。ドイツやフランスなどで雇用が急速に改善してきているのは、ワークシェアリング、つまり仕事の分かちあいによるものだ。フランスでは、週35時間労働制となり、法定労働時間はさらに週4時間も減らされた。ドイツでも長期失業者の再雇用プログラムが実施され、あらたに雇用された労働者の賃金の半分は、地元の労働局が補助する政策をとっている。
 労働時間を短縮し、その分だけ雇用を増やす。あるいは失業者を公的な仕事によって救う。こうした先進国の分かちあい政策と逆に、小泉の解雇政策は失業者を増大させていくだけだ。
 (中略)
 今回の組閣で経済財政政策担当大臣となった竹中平蔵は、ソフトムードで人気も高い。しかし、もともと森内閣の経済担当顧問として働いていた「教授」であり、現実についてはなにも知らない。金持ち優遇政策も変わらない。ソフトイメージとは裏腹に、極端な弱肉強食主義者である竹中は、労働者をどん底に突き落とすだろう。
 小泉政権が掲げる前近代的な政策が「構造改革」という名によってもちあげられているのは、マスコミの犯罪行為である。
 内閣誕生当初のご祝儀記事はいつもの例だが、そろそろ小泉内閣の問題点を書かなければ、ジャーナリズムなど存在理由はない。 


「街場の現代思想」と、「コイズミという時代」という若干トーンの違う2冊の本を読んで思うのですが・・・・・
これだけ鋭い警鐘が鳴っても、日本はその後どう対応できたのか?という思いと、「酷かった構造改革」という思いがつのるのです。
2004年当時ではフリーターが問題視されていたが、04年に労働者派遣法が改悪され(全製造業に解禁)、セーフティネットはますます綻び・・・・

2004年当時といえば、年功型賃金が成果主義型賃金へ変わりはじめた頃で、その頃せっせとサービス残業にはげむ大使であった。(バカといえばバカだった)

 当時から今に繋がる約10年の雇用対策、少子化対策、年金対策は何だったのか?ということであり、迷走する政治には骨太のヴィジョンが見えないのである。

 鎌田さんが2001年に、そして内田先生も2004年に警鐘を鳴らしていたが、結果はグローバリズムに流されるだけで、二極化は進み、時代は過ぎたわけである。
これまで、アメリカ仕込みの竹中が標榜する「小さな政府」のウソに騙されてきたが、TPPでまたも騙されることのないよう、肝に銘じるとともに・・・・
今は「無駄のない大きな政府」を志向するのです。

若者自立・挑戦戦略会議 がまだ残ってた。・・・
その趣旨はいいのだが、省庁横断的なやる気を見せてほしいものです。

「若者の自立・挑戦のためのアクションプラン」のポイント(若者自立・挑戦戦略会議より)

 1.学校段階からのキャリア教育を推進し、その効果的な実施のため地域レベルにおける連携を強化する
 2.働く意欲が不十分な若年者やニートと呼ばれる無業者などに対して、働く意欲や能力を高める総合的な対策を推進する
 3.企業内人材育成の活性化を促進し、産業競争力の基盤である産業人材の育成・強化を図る
 4.ジョブカフェ、日本版デュアルシステム等を推進し、的確な評価に基づき事業成果の向上を図る
 5.若者問題について国民的な関心を喚起するとともに、国民各層が一体となった取組を推進するため、広報・啓発活動を積極的に実施する





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Last updated  2011.05.17 10:53:13
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Re:酷かった構造改革  
KUMA0504 さん
労働組合は96年に経団連の「二十一世紀の経営戦略」を読んで早くも警笛を鳴らしていました。しかし、正直戦略的に負けたのです。しかし、戦略的に勝つ経験もしました。湯浅誠の「貧困」を目に見える運動にしたことです。我々が戦略的に勝ったのは、これと加藤周一が提案した九条の会だけだと思っています。 (2011.05.17 17:16:35)

Re[1]:酷かった構造改革(05/16)  
Mドングリ  さん
KUMA0504さん
>労働組合は96年に経団連の「二十一世紀の経営戦略」を読んで早くも警笛を鳴らしていました。しかし、正直戦略的に負けたのです。しかし、戦略的に勝つ経験もしました。湯浅誠の「貧困」を目に見える運動にしたことです。我々が戦略的に勝ったのは、これと加藤周一が提案した九条の会だけだと思っています。
-----
<湯浅誠さんも政権内で思っているかもしれないが、脱貧困をどのようにして政策に繋げていくかということでしょうね。
連合の動きもパッとしないが、連合に気をつかう政権与党もパッとしませんね~。 (2011.05.18 11:24:20)

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