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2015.02.08
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カテゴリ: アート
 カフカ賞受賞作家・閻連科(イエンリエンコー)さんがインタビューで「暗黒の現実直視し、隠された真実描く文学は国境を越える」と説いているので、紹介します。

なお、インタビュアーは気鋭のチャイナ・ウォッチャーでもある吉岡桂子記者です。

イエン
(閻連科(イエンリエンコー)さんへのインタビューを2/06デジタル朝日から転記しました)




Q:昨秋、プラハであったフランツ・カフカ賞受賞の記念講演は、幼いころの飢えの記憶から切り出しました。1960年ごろの大躍進政策がもたらした大飢饉ですね。
A:私の記憶は、樹皮やカオリンという粘土を食べてはいけないよ、という母の言葉とともに始まります。2、3歳でした。中国では自然災害と呼ばれていますが、明らかに政策によって3千万人が死んだのです。

Q:その内幕を暴いた自著は発禁となっているのに、あえて、なぜ?
A:私は自分の経験と記憶を重視する作家です。暗黒の歴史も現実も直視する立場をはっきりさせました。

Q:貧しさゆえの売血で、エイズウイルスの感染が広がった河南省の村の話にも触れました。いまは重版できなくなっている本を執筆する際に取材で通った村ですね。
A:講演は中国の主要な新聞や雑誌には載らなかったが、微信(中国版ライン)を通じてあっという間に広がりました。中国知識人の思想は携帯電話のなかでは解放されている。
 中国人は改革開放政策で衣食が足りるようになり、いくばくかの小金も得ました。その成果は評価できますが、多くの代償を払いました。自然破壊は誰の目にも見えます。しかし、もっと大きな見えない代償は人間性の破壊です。

Q:数千年かけて築いた感情や道徳の秩序、人間の尊厳の尺度が、解体、崩壊し、消え去ろうとしている、とまで講演では語っています。
A:お金が全てにとってかわった。お年寄りが道に倒れていても助けようとしない。起き上がって『お前が倒した』と言いがかりをつけられ、お金をせびられると面倒だからですよ。倒れた人がみんな、そんなことをするわけではない。問題なのは、助けようとしない人の気持ちに中国人なら共感してしまうことです。

 ささいなことかもしれないが、おそろしいことです。拝金主義が社会をゆがめていると分かっていてもお金という物差しを捨てられない。そして権力は枯れた花すら咲かす勢いです。北京でアジア太平洋経済協力会議(APEC)が開かれたとき、海外の賓客を迎えるにあたって汚れた空が青く変わったでしょう。

Q:車や工場を規制しました。
A:権力は空の色まで変えられる。これがいまの中国です。

    ■     ■
Q:文学に何ができるでしょうか。出版するには、当局の意向を意識して書かざるを得ないはずです。
A:文学には世の中を変える力はありません。魯迅が100人いても、中国政府の政策文書ひとつさえ作れない。しかし、社会の問題に無関心ではいられません。改革開放で天と地が入れ替わったように変わった現実から逃げずに向き合い、どう描いていくか。私は、隠された真実や論理を感じ取り、描き出す手法を10年でも20年でも考えたいと思います。

Q:新作の「炸裂志」は、閻さん自身がある地方都市の歴史を編纂するという架空の設定で、お金と権力にまみれた激動の30年をユーモアをまじえて描いていますね。架空だからこそ描けるものがある、と。
A:あれも構想に十数年。書き始めれば、たいてい半年です。

Q:天安門事件は作品に取り上げていませんね。民主化を求めた運動が弾圧され、知識人が政治から手をひいたことで、拝金主義が加速したように思います。米ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した「国家が仕掛ける記憶喪失症」という評論で、中国政府が隠す歴史のひとつとして天安門事件に触れていましたが。
A:書けないとか書きたくないじゃない。文学として価値ある物語が熟すまで待ちたい。私は当時、人民解放軍にいました。26年所属していただけに軍は何を考えていたのか、気になっています。本当のことが見えるか分かりませんが、暗黒に順応してしまわないように(作品を)中国の闇を照らす懐中電灯としたい。

    ■     ■
Q:2012年秋、日本政府による尖閣諸島国有化に反発する反日デモに連動して、北京の書店の一部から日本の本が消えました。村上春樹さんが領土問題であおられるナショナリズムを「安酒の酔いに似ている」と表現し、「魂が行き来する道筋を塞いでしまってはならない」と朝日新聞に寄稿しました。
 これに対し、閻さんは米紙や雑誌アエラを通じて、返信のような文章を寄せましたね。「理性を!」と。

A:あのとき中国の若い作家と一緒に日本を訪れ、日本の作家と交流する予定でしたが、直前に取り消されてしまった。中国では有名作家も知識人も、ある種、集団として沈黙を守った。知識人としての良識に背いた鈍感さが恥ずかしくなりました。

Q:閻さんは「文化、文学が冷遇され消滅するとき、(国の)面積など何の意味がある」と訴えました。
A:中国の作家には、政治問題に関心を持つべきではないという共通認識があります。自分を守れ、しゃべりすぎるな、と。先人が残した経験と教訓でもあります。でも、ひとりの知識人として、この問題に無関心でいいのか、と思ったのです。

Q:東アジアではナショナリズムが共振し、いまでも「安酒」に酔っているように見えます。
A:中国人は、中国政府を疑っているし、信用していない。むしろ軽蔑している面もあります。にもかかわらず中国政府が語る対日関係の歴史観を信じているように見えるのは、少し複雑な事情があります。まず、日本は中国と戦争をした相手です。国土にも心にも傷を残した。第二に、この反感の広がりを中国政府は許し、ときどき(統治に)利用している。第三に、日本の問題を使って自分の中にたまったあらゆる不満を吐き出そうとする人たちもいます。

 しかし、中国の民族主義はゆっくりとだが、好転していると思う。

Q:酔いがさめつつある?
A:外交関係が悪化しようが、日本から中国へ来る人が減ろうが、日本へ行く人は増えています。しかもインターネットに楽しそうに感想を書きこんでいる。日本の人たちは礼儀正しい、親切だ、地下鉄は便利だ、風景はきれいだ、と。自分が触れた日本への感情を発信しています。

 私たちが見逃してはならないのは、これほど中日関係が複雑なときに、民間が密接な関係を保っていることです。あなた方は政治をする、私たちは経済や文化で交流する、と分けて考えている。中国人はだんだん成熟してきています。

Q:村上さんが塞がってしまうかもしれないと心配した心をつなぐ道は、開いていますか。
A:村上作品を好きな人は、日本との間に何があろうと好きでいます。その意味で、彼の小説の意義は、小説そのものを超えている。文化や文学には、政治の対立を抑えたり和らげたりする役割があります。

Q:日本を含めて海外の作家で影響を受けた人はだれですか。
A:川端康成や三島由紀夫、安部公房は私だけでなく、中国の同世代の文学者に影響を与えています。川端のこまやかな女性の描き方、安部の奇抜な発想。そして大江健三郎の複雑な知識人的作品。徳田秋声を好んで読んだ時期もあります。

 ガルシア・マルケスの『百年の孤独』も、中国文学に大きな変化をもたらしました。海賊版を含めれば、中国でどれだけ売れたか。私もとても好きです。農村を包む神秘性という共通点を感じるからです。

 こうした作品は、世代を超えて読み継がれていく。日本と中国の間で、ともに読まれる文学が増えていくことは、人々が心をつなぎあわせる根っこになるでしょう。

    *
閻連科:1958年、中国・河南省の農村で生まれた。邦訳著書に「愉楽」「丁庄の夢」「人民に奉仕する」など。中国の老舎文学賞、魯迅文学賞受賞。

<取材を終えて>
 日本の著作が中国語に訳される機会は増えているが、その逆は多くない。中国における言論の自由の制限は、国境を超えて読まれる作品をうみだす力をそいでいる。そんななか、閻さんの作品は日本のほか、米、英、仏、独、スペイン、イタリア、イスラエル、韓国、ベトナムなど20以上の国・地域で出版されている。

 閻さんは「想像を超えた非常に奇妙で不条理な事件が日々、起きる」中国を「文学の資源の宝庫」と言う。「複雑なことが現実」と受けとめ、二分化を避ける。発禁処分を受けた作品も、単純な批判や暴露ではない。闇も光も、歴史も今も、丸ごと抱えて歩む人の強さを感じた。(編集委員・吉岡桂子)

フランツ・カフカ賞と魯迅文学賞を受賞した作家となると、シュールというか、ノーベル賞級の作家なのかもしれませんね♪
中国で政府と折り合いをつけて生きていくことは、大変なんでしょうね。

中国、権力と文学 イエンリエンコー2015.2.06







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Last updated  2015.02.08 16:58:14
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