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2019.01.07
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カテゴリ: 気になる本
図書館で野坂昭如著『しぶとく生きろ』という本を手にしたのです。
野坂さんといえば戦中派であり、まずなんと言っても『火垂るの墓』である。
この本でもしぶとく生きる術が見られるはずだということで借りたのです。







野坂昭如著、毎日新聞出版、2011年刊

<「BOOK」データベース>より
「3・11」以前から、一貫して言い続けてきた言葉が「3・11」以後、揺るぎないものとして身にせまる。作家は何を見つめ、何を語るのか。この人の生き様に学ぶ。

<読む前の大使寸評>
野坂さんといえば戦中派であり、まずなんと言っても『火垂るの墓』である。
この本でもしぶとく生きる術が見られるはずだということで借りたのです。

rakuten しぶとく生きろ



野坂さんの食料や中国に対するご意見を、見てみましょう。
p108~111
<食の自給率>
 中国の富裕層の間で日本の米が高く売れている。この度の輸出全面解禁により、日本の米は中国に流れ、日本人が米を食えなくなるのではとマスコミが騒いでいる。
 だが、戦争中を思えば何でもない。こと食いものになると、すぐ戦争中を引っぱり出すのはぼくの悪いクセだが。

 気まぐれにもてはやされているのは、今のところ一部の高給ブランド米だけであるが、もし我々が食べているものを常用するようになれば、ひょっとすると飢えるのは我々かもしれない。
 米を真剣に考えてこなかったぼくらが招いたこと。戦後、アメリカの求めるまま、食生活を変えてきた。日本の農をつぶしながら外国からの輸入を続け、気が付けば自給率は主要先進国最低。

 この自給率の計算法はいろいろあって、39%というのは机上の空論、甘いもいいところ。現在の日本人の好みでいえば、20%を切るだろう。敗戦後の日本で飢えを凌げたのはアメリカのおかげ。その裏にはアメリカの戦略があった。国内にたまっている物資を安く買い上げ、物資不足に悩む日本に配る。日本人のアメリカに対する敵意は失せた。

 パンをはじめアメリカ型食事をすすめ、「米を食べると頭が悪くなる」「文化生活はパン食より」と大々的に宣伝。そのうち、日本の伝統食は失われた。そして現在、アメリカからの輸入が無ければ一食も成立しない。この点でも、日本はアメリカの植民地に違いない。

 高成長をとげる中国も、農産物の多くを輸入に頼っている。彼の国の領土は広いが、耕地はごく限られているのだ。我が外食産業を支えてきた中国の農産物は、日本に売れば金が儲かったからに他ならない。
 中国産食品に対する不信感がつのったからといって、それに代わるものが無ければ、すぐには手を切れない。だがある日突然、向こうが手を切ってくる場合はある。

 1960年前後に、かつてない大飢饉の経験をもつ中国は、食いものについて日本人より関心が高い。近代化が進む一方、人口増加、恒常的水不足、環境破壊、大気汚染、格差社会、さまざまな問題をはらみながら変革を続ける中国。世界中誰も無視出来ない存在だ。
 その中国が、もし飢えるようなことがあれば、何がおこるかわからない。近くの日本としては、気を配らざるを得ない。

 ほとんどの戦争の始まりは食いものからだ。食料不足、あるいはその脅えにある。
 自国の民を飢えさせることなく、食いものをまかなえる国が残る。最低でも七分通り自国でまかなうことが出来れば独立国といえるだろう。日本国家はいわれるまま農を捨てた。

 農家は国からの保護という名のワナにかけられ、減反政策をはじめ、農村援助の数々を受けてきた。これにより、農家の知恵の伝承は途絶え、草ぼうぼうの休耕田ばかり増えた。日本人が多くの米を食うようになったのは明治のはじめ。それまで、稗、粟、麦、大豆、そして少しの米、いわゆる五穀だった。

 明治6年、徴兵制度によって国民男子二十歳以上が兵士になることで、庶民に米を食う習慣がうまれた。軍人になって初めて米を腹一杯口にした経験は珍しくなかった。これが、米を常食とする民族につながるが、古来より我が国では、水田経営が盛ん。稲作は日本人の営為のすべてを司る。あらゆる行事、文化と密接に結びつく。
 米は食べるだけではない。米は神さまでもある。一千年先は無理でも、三十年先、五十年先のことならば、およその見当はつく。つく以上、考える努力をするべきだろう。もはやその日暮らしは通用しない。

 昭和十五年、ぼくは小学四年生の春から、地域によって差はあったものの、一般に米が配給になり代用食が多くなった。
 それでもまだいい方。戦争が終わった中学の夏以後、それすら手に入らない。まさに食うや食わずの日々を過ごした。こういった経験は、ぼくの年頃ならごく当たり前。ぼく自身の米との付き合い方は、ちょっと極端なのかもしれない。このままいけば日本人すべて餓死すると、本気で憂い、食いものにこだわってきた。

 1966年、日本の米が余った。新聞記事にある米が余ったという文字を目にして、愕然とした。余れば次は足りなくなるという強迫観念がある。当時、ぼくの心配は一笑され、周りには伝わらなかった。

 ぼくは田舎を訪ねまわり、農家の現状を聞いて歩いた。一時は、自分で田んぼを持ち、米も作った。ぼくなりに農の大事さを言い続ける義務があると思い込んでいる。こんなに自然に恵まれ、水も豊かな土地を捨ててはいけない。バチがあたる。
 大人のせいで、二度と子供達を飢えさせてはいけない。
                           2008年5月23日


ウン 妹さんを飢えで失った野坂さんが説く自給率だけに、怨念というか強く迫るものがあるでぇ。それから、筋金入りの反米の人である♪





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Last updated  2019.01.07 08:37:44
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