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2019.03.22
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カテゴリ: アート
図書館で『江戸の想像力』という本を、手にしたのです。
ぱらぱらとめくってみると、思いのほか画像の多いのが楽しい本である。
この本のデータは1992年刊の文庫本のものだが、借りたのは1986年刊のハードカバーでした。






田中優子著、筑摩書房、1992年刊

<「BOOK」データベース>より
近世的なるものとは何だったのか―。平賀源内と上田秋成という同時代の異質な個性を軸にしながら、博物学・浮世絵・世界図・読本といったさまざまなジャンルの地殻変動を織り込んで、江戸18世紀の外国文化受容の屈折したありようとダイナミックな近世の〈運動〉を描いた傑作評論。1986年度芸術選奨文部大臣新人賞受賞作。

<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくってみると、思いのほか画像の多いのが楽しい本である。
この本のデータは1992年刊の文庫本のものだが、借りたのは1986年刊のハードカバーでした。

amazon 江戸の想像力

カギ見当・引き付け見当(木版画)


中国文化、特に中国版画に触れたあたりを、見てみましょう。

<五 連の生み出したもの>
 技術上一番問題になったのは、一色ずつ色を重ねてゆく時に、わずかでも互いに色が重ならないようにすることである。むろんはみ出してもならないし、余白が残ってもならない。これを解決した人物については、大田南畝と滝沢馬琴だけが記録を残している。浮世絵の研究者たちも、他に資料はもたないらしい。ただし両者がそれぞれ違うことを書いているので、どちらが本当なのかわからない。

 大田南畝は『一話一言』にこう書いた。芝神明前に江見屋という地本の問屋があった。そこの三代目の主人・上村吉右衛門が1744年、色摺りをする時に板に紙を置く位置を示す「見当」を付けることを思いついた。

 この時から、見当のことを上村という。これに対して、馬琴は『燕石雑志』にこう書いている。1765年ころ、中国の彩色摺りの真似をして、彫師の金六という者が何とかという摺師をさそって見当というものを工夫し、初めて多色摺りを試みた。

 どちらに軍配をあげるか、これ以上追求するつもりはない。なぜなら、1644年に京都で発刊された中国の暦の本の翻刻『宣明暦』の二色摺りの挿絵にも、見当の痕跡が見られるというし、見当のことを別にすれば、やや粗雑な彩色摺りなら長崎で作られたり、京都で藍絵というものが行なわれたり、中国の算術の本の翻刻の挿絵や、俳諧師たちの句集の表紙に用いられたりしているのだ。

 つまり多色刷り東錦絵は突然生れたのではない、という証拠なのであって、確かに見当を思いつく彫師は何人かはいたであろうし、たとえ寡色摺りでもカラー版画を作りたいという版元や、それを注文する富豪たちは、何人もいたはずなのである。彼らのうち誰が本当の源かを探るのは、苦労のわりに意味がないだろう。

 さて、このような技術的問題が彫師によって解決されたとして、次の大きな難題は強靭な紙である。多色摺りの回数に耐えるために、越前、四国伊予、備中三好などで漉かれた奉書紙が必要だった。いくら金はあっても、生産量が追いつかなければ手にはいらない。中国・四国地方の、耕作面積の少ない土地では、幕府―藩の長期的な産業方針によって、紙生産のマニファクチュアが確立してきていた。

 船による流通は、西の紙を、大坂だけでなく江戸に大量に運ぶことも可能にしていた。その背後には農村の解体や、産業労働力を農村で確保するための専売制度や、それに対する度重なる紙一揆などがあって、その結果として、江戸の金持ちたちは奉書紙を手に入れた。

 こうして、巨川とその周囲の俳諧仲間たちの経済力があって、東錦絵はその条件を満たしていったのだった。

 しかし、経済力や技術だけで錦絵ができるわけでもない。実際の完成に導くまでの動機の源はいったいなんだったのだろうか。ひとつは強い中国文化への憧憬である。この時代の中国志向は従来のような学問や権威志向とは少々違って来ている。もっと感覚的な一致であり、知識で中国を知るというより、日本の中で中国の色彩感覚、言葉の感覚、リズムを呼吸しているのだ。現代でいえば、西欧文化の知識の受け入れ方より、アメリカ文化の呼吸の仕方に似ている。

 この変化は、日本が二千年かけて中国文化と接するのは学者だけではない。むしろ大量の町人たちが中国文化に接触した。したがってその接触面は、従来より感覚的な側面にならざるをえない。

 また、中国そのものがむかえている、明・清文化の都市的、大衆的、感覚的、実践的側面に、もうひとつの理由がある。したがって、中国の都市の商人たちのになっていた白話小説(口語で書かれた大衆小説)を、日本近世の人々は面白いと思い、そこから読本を作ったのだった。漢詩文からは洒落本と狂詩と狂文を作った。清の写実絵画を日本画の伝統の中に大きく取り入れた。そして、中国版画の色彩感覚と技術から、東錦絵の可能性を追求することになったのだ。

 いつ日本に入ったかはわからないが、明末から清初にかけての、五色摺りの挿絵のはいった戯曲や画伝や絵の本が現存することを、三田村鳶魚が伝えている。


紙の質にしろ、版画の技量にしろ、いずれも本家の中国を凌いでいるのが・・・
いかにも日本らしいでぇ♪





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Last updated  2019.03.22 14:41:36
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