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2022.03.13
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カテゴリ: 気になる本
図書館に予約していた『ザリガニの鳴くところ』という本を、待つこと9ヶ月ほどでゲットしたのです。
動物学者の著者が著した初めての小説らしいのだが、サスペンスをからませたところなど、なかなかの本である。





ディーリア・オーエンズ著、早川書房、2020年刊

<商品の説明>より
ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見された。人々は真っ先に、「湿地の少女」と呼ばれているカイアを疑う。6歳のときからたったひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか? 不気味な殺人事件の?末と少女の成長が絡み合う長篇

<読む前の大使寸評>
動物学者の著者が著した初めての小説らしいのだが、サスペンスをからませたところなど、なかなかの本である。

<図書館予約:(6/04予約、副本17、予約315)>

rakuten ザリガニの鳴くところ


22歳になったカイアを、見てみましょう。
p298~300
<31 本 1968年>
 錆ついた郵便受けは、父さんが切った木の杭に載せられて、名もない通りの突き当りにぽつんと立っていた。そこに入っている郵便物といえば、どの家にもどっさり投函されるたぐいの広告ばかりで、カイア宛てには請求書も来ないし、女友だちや年老いた叔母から楽しい手紙が届くということもなかった。そんなわけで、かつて一度だけ送られてきた母さんの手紙を除けば、カイアにとって郵便物はとくに意味のないもので、郵便受けを何週間もほったらかしにするということも決して珍しくはなかった。

 しかし、チェイスとパールの婚約発表から1年以上が過ぎたころ、カイアは22年間の人生で初めて、毎日欠かさず熱い砂の小道を歩いて郵便受けを覗きにいった。そして、ある朝ついに、そこに分厚いマニラ封筒が届いているのを見つけたのだった。なかには、新刊の見本版として刷られた“キャサリン・ダニエル・クラーク著『東海岸の貝殻』”が入っていた。カイアはひとり息を呑んだ。残念ながらそれを見せる相手はいなかったが。

 カイアは海岸に座り、1枚1枚、すべてのページに目を通した。最初にテイトが出版社に連絡を取り、その後さらに何枚か絵を提出したあと、出版社はカイアと手紙のやり取りを始め、契約書を送ってきたのだった。貝殻の標本については、すでに何年もかけて絵も文章も完成させていたため、担当編集者のミスタ・ロバート・フォスターは見本版に添えた手紙こう書いていた。この本は最速記録で出版されることになるだろうし、二冊目の鳥の本もすぐに出せるだろうと。彼は前金の五千ドルも同封していた。もしそこに父さんがいたら、悪い脚をもつれさせたあげくにひっくり返り、袋の酒をまき散らしていたことだろう。

 そしていま、カイアの手元には校正の済んだ完成版があった――筆で描いた線も、入念に選び抜いた色も、自然に関して考察した文章も、そっくりそのまま印刷された1冊の本が。そこには、貝殻の内部に棲む生き物の絵もちゃんと載せていた――彼らが何を食べ、どう動き、どのように後尾するか。人は貝殻には興味を示しても、なかで生きている生きもののことは往々にして忘れてしまうからだ。

 カイアは誌面に指を這わせ、それぞれの貝殻を発見した海岸や、季節や、朝焼けに思いを巡らせた。それは家族のアルバムのようなものだった。
 それから何ヶ月のものあいだ、ノース・カロライナ州の海岸沿いはもちろん、南のサウス・カロライナ州やジョージア州、フロリダ州、それに北のニュー・イングランド地方の海岸沿いでも、カイアの本は土産物屋や書店のウィンドゥに飾られ、あるいは平台に積み上げられることになった。出版社によれば印税小切手は半年ごとに贈られてくるらしく、毎回、数千ドルにはなるだろうという話だった。


『ザリガニの鳴くところ』2 : ジョディ1952年
『ザリガニの鳴くところ』1 : 母さん1952年





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Last updated  2022.03.13 10:08:09
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