初代『ゴジラ』(1954)は、アメリカでどのようにアメリカ版Godzilla, King of the Monsters!(『怪獣王ゴジラ』)(1956)となったのだろうか。どのように新しい映像が付加され、編集され、修正され、吹き替えられ、変容され、そしてそれが宣伝され、受容されたのか。 また、第二作『ゴジラの逆襲』(1955)、第三作『キングコング対ゴジラ』(1962)および第四作『モスラ対ゴジラ』(1964)もアメリカ版においてどのような修正・編集が加えられ、受容されたのか。本章は、初代作品をはじめとする昭和シリーズ前半4作品の受容について相対的に検討したい。また、それらの作品群を同時代の核や怪獣を描きヒットしたアメリカのサイエンス・フィクション映画の作品群と比較・対照する。
<第2節 Godzilla, King of the Monsters!『怪獣王ゴジラ』(1956)、『ゴジラ』(1954)>
■2.1 辛辣な批評と記録的なヒット アメリカ版ゴジラの制作・配給の鍵を握るのは、ボストンを拠点にした配給会社のジョセフ・レヴィーンである。東宝から映画『ゴジラ』(1954)の版権を購入したジュエル・エンタープライズのリチャード・ケイとハロルド・ロスがレヴィーンのもとに映画を持ち込んだのである。彼は、映画業界では、マーケティング戦略においてパイオニア的存在であった。映画市場をテレビ番組に普及させたのも彼である。 アメリカ版のタイトルはGodzilla, King of the Monsters!であり、日本では文字通り『怪獣王ゴジラ』と訳されている。この『怪獣王』の監督にアメリカ人のテリー・モースが採用されたのである。