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2024.11.21
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カテゴリ: メディア
時として陳舜臣さんの穏やかな歴史観が懐かしくなるわけで・・・
以下のとおり復刻して読んでみようと思う次第です♪
とにかく、陳舜臣さんは神戸市民としては同郷の文学者でもあるわけだし。

*********************************************************
図書館で『道半ば』という本を、手にしたのです。
なんか既視感のある本であったが、まあいいかと借りたのです。帰って調べてみると9ヶ月前に借りていました。で、(その6)としています。


道半ば

陳舜臣著、集英社、2003年刊

<「BOOK」データベース>より
歴史を語りつづける作家が自らの20世紀を綴る注目の自伝エッセイ。ペルシャ、オリエントへの憧憬。歴史のうねりの中で培った豊かな精神。作家としてデビューするまでの若き日々。
【目次】
幼い日々/海岸通の家/中山手と北長狭/進学/水害の前/舞い落ちる旗/太平洋戦争まで/戦いはじまる/海を渡る人たち/上八時代〔ほか〕

<読む前の大使寸評>
神戸や台湾を描いた陳舜臣のエッセイ集であるが・・・これもミニブームといっていいんでしょうね。

rakuten 道半ば


満州国や日本に渡った台湾人を、見てみましょう。
p92~95
<海を渡る人たち>
 同性は結婚しないというしきたりは、そのころでもかなりきびしく守られていた。近親の結婚をできるだけ避けることは、科学的のもうなづける。だが、いくら血が近くても、姓がちがえば構わないというのだから、考えてみるとおかしいのである。

 父の妹の幼は徐家に嫁いで、月雲を生んだ。たいへん近い関係だが、月雲の姓は徐だから、結婚はタブーではない。

 だが、姑母は事の真相を知らなかったのである。
 月雲姉さんには恋人がすでにいたのだ。しかもそれはかなり早くからであった。私が中学2年のとき帰省した頃は「目下恋愛中」であったらしい。彼女の家は旧仔林といって、新荘の町はずれにあるさびしい地域にあった。なにもない所なのに、若い男が、自転車に乗ったりして、そのあたりを徘徊していたそうだ。美人の月雲姉さんがお目あてであったらしい。

 かんじんの彼女は、台北二中を卒業して、満州医大に進学した余錫乾氏と将来を誓い合うようになっていたのだ。これで台湾に住みたくない、といった彼女の真意がわかった。知らぬは親ばかりなり、であったわけである。

 当時、満州国には謝という姓の台湾出身者が、政府の閣僚級になっていて。その関係で台湾人が何人か要職についていた。余氏の父親はそのうちの一人だったのである。余錫乾氏が満州医大をめざしたのは、じつは余家が新京にあったからなのだ。
 満州国政府につとめていた彼の父親余逢時氏は、台湾では書家として、誰でもその名は知っている名士であった。

 彼はもともと悪筆家だったが、一念発起して、毎日、水にむかって筆をふるったので、ついに希代の名筆といわれるようになったそうだ。
 姑母さんはおろおろして、神仏に娘の将来を占ってもらったりした。だが、月雲姉さんの覚悟はきまっていた。
 「潜水艦が出ようと、何が出ようと、私は満州へ参ります!」
 決然と言いきったのである。

 ・・・一人娘は、言い出したら、聞く耳をもたない者が多いわ。甘やかされて育ったから。
 父は月雲の満州行きについて、ぽつりとそう言った。

 なお私の刎頚の友となった何既明君は、私たちの遠縁だといったが、それは月雲のところの徐家を介してのつながりである。
 私が大阪外大を繰上げで卒業するころの出来事で、昭和18年の後半、日本の近海もかなり浪が高くなっていたのだ。

 月雲姉さんと反対に、日本から台湾にむかう人たちもいた。
 台湾はいうまでもなく日本領であったが、そこに住む人たちは、完全な日本人とは認められなかった。入学試験のところでも述べたようにはっきりした差別がある。

 なかには差別されて、却って幸いだというものもあった。それは国民の義務とされた「兵役」がないことである。純血主義の日本は、台湾人の兵士などは安心して使えなかったのだ。

 という制度はあった。読んで字の通り、軍隊の人夫である。兵士ではなく、軍に使役される「苦力」にほかならない。
 志願制ということになっているが、各郡役場に強制的に人数を割りあてるのだ。事変が始まると、軍夫は中国戦線各地に送られた。志願(実は強制徴用)して「入隊」するときは、内地の出征兵士の壮行会に似た行事さえおこなわれた。

 私は軍夫の壮行っを送る歌の一節をいまでもおぼえている。
 赤いタスキの誉れの軍夫
 うれし ぼくらは日本の男

 台湾の天才的作曲家のトウ雨賢が作曲した、「雨夜花」の節によって歌われた。あまりにも哀しい歌である。

 正式に台湾に徴兵令が布かれたのは、小磯内閣のときで、実施は昭和20年からだった。だが、軍人(軍夫ではない)の志願制はその前からおこなわれていた。
 大学高専在学生の徴兵猶予が取消され、日本人の学生が「学徒出陣」で軍隊に入ったとき、同じ学生の台湾人は徴兵がないけれど、志願を強制されて軍服の人となったのである。
 私はすでに繰り上げ卒業して「学徒」ではなくなっていたが、大阪外大の一級下であった楊克智君はそれに該当して軍隊に入ることになった。彼と同期の司馬遼太郎君は学徒出陣兵で、結局、両君はおなじころに兵営の門をくぐったのである。


『道半ば』1 :過ぎ行く牧歌時代p218~220
『道半ば』2 :神戸空襲前後p127~132
『道半ば』3
『道半ば』4 :2月28日事件p243~247
『道半ば』5 :学究時代p109~114
『道半ば』6 :満州国や日本に渡った台湾人p92~95

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■2018.08.24XML
『道半ば』6
https://plaza.rakuten.co.jp/foret/diary/201808240002/





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Last updated  2024.11.21 00:06:09
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