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2025.08.19
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​柴崎友香「待ち遠しい」(毎日新聞社)​
​​​​​​​​​​​​ ここのところ、 柴崎友香 にハマりなおしています。まあ、なんとなく読み始めた​ 「百年と一日」 (筑摩書房) が、不思議な短編連作だったのですが、実に読みやすくて勢いに乗って2冊目が、今回の 「待ち遠しい」(毎日新聞出版) です。あっちはPR誌の 「ちくま」 に2017年ころの連載されていたようですが、こっちは 毎日新聞 「日曜くらぶ」 とかに 2017年の2月から2018年の3月 にかけて連載された作品のようで、単行本化されて300ページを超えていますから、一応、 長編小説 です。今では 毎日文庫 とかで文庫になっているようですが、ボクが手にしたのは 単行本 2019年 初版 でした。​​​​​​​​​​​​
 で、その腰巻に
​「住み心地のいい離れの一軒家で一人暮らしを続ける 北川春子39歳 。母屋に越してきた、夫を亡くしたばかりの 63歳、青木ゆかり 。裏手の家に暮らす、今どきの新婚 25歳、遠藤沙希 。年代も性格もまったく異なる3人の出会いかはじまった、あたたかく、どこか嚙み合わないご近所付き合い、その行方は」​​
​  ​​​​​​​​​​なんか、これで、この作品のすべてが言い尽くされている気がしますが、ちょっと説明すると、 北川春子さん の住んでいる借家の新しい大家さんが 青木ゆかりさん で、 遠藤沙希さん が、同じ敷地にもう一軒ある 黄色い家 に住む、 大家さんの甥っ子のお嫁さん です。
 で、 作品 には、その 三人 「近所付き合い」 のあれこれが描かれているというわけです。 場所 大阪の郊外 ですね。​​​​​​​​​​

 こんな書き出しです。
​  大家さんのお葬式のときにいちばん泣いていた人だ。
 と、春子は、すぐにわかった。
 和装の喪服に髪もまとめていたあのときと、オレンジ色のブラウスにウェーブのかかった髪が肩まで下りている今とでは、かなり印象が違うが、ドアを開けた途端に、あ、あの人、と葬儀の光景が思い浮かんだのだった。
 見た目からすると、五十代半ばというところだろうか、と春子はは推測した。その人は、玄関先に立ったまま、途切れることなく話し続けている。春子が一言答えれば、十倍くらい返ってくる。
「わたしもね、一人暮らしなのよ。だからね、お互いにね、助け合いましょうよ。心強いわぁ。春子さんは、もうここに住んでながいのよね?」
「五年、あ、六年です。」
​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​ 小説は 春子さん を視点人物して描かれている、所謂、 三人称小説 です。だから、登場するのは、あまり人付き合いのない 彼女の友人 、住居のある町周辺とそこに 住む人たち 彼女 が一度だけ帰る 実家の両親 、勤め先の 同僚 だけです。とりわけ驚くような事件も起きません、あるようなないような日常があるだけです。だから、お嫌いでなければどんどん読めます。読んでいて、時々、出会う​
​「で、どうするの?」 ​​
​という出来事は、おそらくどなたにも覚えのありそうな、それでいて忘れてしまっている、世間や、職場や、家族との軋轢や和解です。
「ふつうに」 という言葉がありますね。​
「ふつうにやってたらいいやん。」
「ふつう、こう考えるで。」
「女性なら、ふつう・・・」 ​​
​ まあ、そういう 「ふつう」 という言葉が、それぞれの 存在 を自由から遠ざけていることにうすうす気づきながらも、ふつうの暮らしをしているという安心感で生活している、あの、 「ふつう」 です。
登場人物たち は、 生きづらさ という、これまた流行り言葉がありますが、自分の生活や考え方のどこかに ふつう でないところがあるということに気付いていて、 生きづらい日々 をそこはかとなく暮らしているのですが、そういう 彼女たち を決して 「正しい」 とか、 「こういう理由で」 とか、批評的というか、上から目線というかで裁断することなしに
​肯定していく作家の文体! ​​
​は見事だと思いました。
 先日、 「私たちが光と想うすべて」 というインドの若い女性監督が撮った映画を見ましたが、この作品でも、 春子たち 「光」 求めて暮らしているとでもいう姿にうたれました。​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​

​ 見上げると窓ガラス越しにカーテンの亜麻色がある。ここに引っ越したときからだから、そろそろ買い替えようか。今度はもう少し明るい色がいい。そう、黄色か黄緑の日差しが透けて見える記事のを買いに行こう、と春子は思った。(P336)​
​​​​  柴崎友香 が描こうとしている 「光」 が、作家自身の 小説世界における立ち位置 人間に対する態度 を感じさせて、共感しました。とてもいい作品でしたよ。​​​​
週刊 読書案内 2025-no077-1150​​


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​​​​​​​​​​​​​​ ​​​  追記
 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で 楽天ID をお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)​​​​

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最終更新日  2025.08.19 10:59:41
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