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2013.09.11
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カテゴリ: 気になる本
「街場の中国論」という内田先生の本を図書館で借りたのだが・・・
2007年に初版、2011年に増補版を刊行したこの本は、今では図書館でしか手にできない本でした。

 この本で、内田先生が「負けしろ」という専売特許の概念を披露していて、またまた目からウロコが落ちたのです。

<真の国力は「負けしろ」の多さで決まる>よりp21~22
 真の国力というのは「勝ち続けることを可能にする資源」の多寡で考量するものではない。「負けしろ」を以って考量するものである。
 どれほど外交内政上の失策を犯しても、どれほど政治的無策が続いても、それでも法治が継続し、内戦が起こらず、テロリスト集団が形成されず、略奪や犯罪が横行しない「民度的余裕」において、日本は世界最高レベルにある。その意味で、日本は中国に対して(中国以外のどの国に対しても)外交上、圧倒的に優位にあると私は考えている。
 外交上、「一手も打ち間違えるわけにはゆかない」という緊張が日本人には求められてはいない。かなり打つ手を間違えても、それが統治システムそのものの崩壊の危機にまでゆきつくことはない。もちろん、その「ゆるさ」のせいで、権謀術数に長けたマキャベリストが出てこないという弊はあるが、「凡庸な人間でも外交ができる」という利のほうがはるかに大きいと私は思う。
 中国政府は領土問題で、「一手も打ち間違いができない」というタイトな条件を課せられている。日本政府はそのような国内事情がない。つまり、日本は尖閣諸島の領土問題については「軍事的衝突では一歩も譲歩しない」ような喫緊の理由がないということである。
 中国政府は「領土問題では一歩も譲歩しない」という政府の姿勢を国内的にアピールできれば、とりあえずは外交的得点になる。さらに強押しして、日中関係が本当に破綻した場合、日本市場において「中国製品ボイコット」が起き、日本の資本や生産拠点が中国大陸から引き上げられた場合の経済的ダメージは中国の方がはるかに大きい。そのことは中国政府も十分に理解しているだろう。だから、領土問題について、中国政府にはこれ以上「深追い」する気はないと私は見ている。「深追い」して、見た目は華やかだが実現の困難な外交的目標を示した場合、それを履行できなければ中央政府の威信を低下させることになる。自分で自分のフリーハンドを制約するような無意味なことは、合理的に考える為政者はしないだろう。
「贖罪と賠償」はおおかたの中国ウォッチャーが見ているように国内向けの(とくに党内保守派に対する)アピールであると私も思う。


今となっては、トウ小平の「先富論」はかなり罪深い考えであったと、共産党幹部でさえも自覚したのではないかと憶測するのですが。

<北京オリンピック>よりp49~50
 毛沢東がアヘン戦争以来百年の屈辱を晴らして、中国に国際的威信を回復させた事実は、その無数の失政を差し引いても評価されなければならない。そして、それを可能にしたのは、「貧しい同胞への愛と共感がすべての施策を動機づけなければならない」という原理を(実行されたかどうかは別として)毛沢東は譲らなかったからである。
 先富論はたしかに原理的には効率的な分配のために構築されたメカニズムであった。私はその点ではトウ小平の善意を信じている。けれども、「貧しさへの共感」「貧しさへの有責感」を失った先富論は効率的な収奪を正当化するイデオロギーにたやすく転化するであろう。そのことの危険性に当代の中国の為政者たちはどれほど自覚的であるか。
 あまり自覚的であるように、私には見えない。
 私が北京オリンピックについて感じる不安はこの「富の収奪と偏在を正当化するイデオロギー」の瀰漫(びまん)に対してである。
 北京オリンピックでは、伝統的な街路である胡同(フートン)がそこの住民のライフスタイルこみで取り壊されたけれど、そのことに対する懐旧や同情の声は中国メディアではほとんど聴かれなかった。こんなふうにして、オリンピックを機に北京から中国の前近代性をはしなくも露呈するような要素は一掃されるのであろう。けれども、それと同時に「中国の前近代性をはしなくも露呈するような要素」に対する哀惜と懐旧の気分もまた一掃されるのだとしたら、私は中国人に対して、その拙速を咎めたいと思う。

 以上、内田先生の穏やかな口ぶりであるが、よく読めばかなり激越な非難であることが分かります。


【街場の中国論】
中国

内田樹著、ミシマ社、2011年刊

<「BOOK」データベース>より
尖閣問題も反日デモも…おお、そういうことか。『街場の中国論』(2007年刊)に、新たな3章が加わった決定版。中国の何がわからなかったのかが見えてくる一冊。
【目次】
1 街場の中国論(尖閣問題・反日デモ・中華思想/中国が失いつつあるもの/内向き日本で何か問題でも?)/2 街場の中国論 講義篇(チャイナ・リスクー誰が十三億人を統治できるのか?/中国の「脱亜入欧」-どうしてホワイトハウスは首相の靖国参拝を止めないのか?/中華思想ーナショナリズムではない自民族中心主義/もしもアヘン戦争がなかったならー日中の近代比較/文化大革命ー無責任な言説を思い出す/東西の文化交流ーファンタジーがもたらしたもの/中国の環境問題ーこのままなら破局?/台湾ー重要な外交カードなのに…/中国の愛国教育ーやっぱり記憶にない/留日学生に見る愛国ナショナリズムー人類館問題をめぐって)

<大使寸評>
 この本で、内田先生が「負けしろ」という専売特許の概念を披露していて、またまた目からウロコが落ちたのです。
 6年前に書かれた本であるが、内容はそんなに陳腐化していないのが、鋭いというべきか。

rakuten 街場の中国論







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Last updated  2013.09.11 00:07:58
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