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2018.04.18
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カテゴリ: 気になる本
図書館で、『愛と日本語の惑乱』という小説を借りたのです。
日本語を題材にした小説といえば、水村美苗や筒井康隆あたりならあり得るだろうけど・・・
清水さんで大丈夫?と危惧されるのです(笑)

でもね、先日の日記 『小説家になる方法』 でも触れたように、清水さんのパスティーシュ路線なら、案外と読めるんですよ♪
NHKの日本語委員会らしきものが登場するけど、経営委員会のような政治的なものは出てこないわけです。清水さんでは場違いになるもんね。



日本語

清水義範著、ベストセラーズ、2008年刊

<「BOOK」データベース>より
愛は言葉か、言葉が愛か?恋多き大女優と同棲するコピーライターが、失われつつある愛に惑乱し、奇妙な言語障害に陥っていく爆笑長編。

<大使寸評>
著者は日本語の乱れ方とか言語障害に注目しているのだが・・・
こういうテーマに関しては、名古屋発のインスピレーションは快調です♪

とにかく、日本語を題材にしてパスティーシュ小説を書ききる筆力を評価したいのです。
rakuten 愛と日本語の惑乱


ではその、広告コピーとか、タブーの表現とか、いけてるヵ所を紹介します。

<第2章 バイバイ!尻ぬぐい> p53~55より
 その論理で、教授は次のような広告コピーにも腹を立てる。
 「まだ、モバイってないの?」
 モバイルという名詞はある。可動性の、という意味の英語だが、コンピュータ用語としては、オフィスや自宅以外の場所で、通信回線を用いてコンピュータを操作することを言う。だが、モバイルは片カナ4文字でそう書くところの名詞だ。モバイる、という動詞では断じてないのである。モバイルをモバイるにして、活用させて使うなんて犯罪的でむちゃくちゃだと教授は嘆きまくるのだった。

 そして最後に、高田教授は言葉の意味を逆にしてしまう罪悪を語る。
 このやり方のいちばんわかりやすい例が、「こだわる」という言葉だと教授は言う。「こだわる」とは、小さなことにとらわれる、つまらないことに気を奪われる、という意味であって、本来悪い意味の言葉である。「まだあんなことにこだわっているのか、小さい男だな」などと使うのが正しいのである。ところが最近では、何かに特別の思い入れがある。という意味に使われることも多くなっており、「私は道具にこだわるほうなんだ」というような言い方が出てきている。
 そして、広告コピーに、
 「男はこだわる」
 というのがあることを教授は嘆くのだ。まるで自慢なことのように堂々とそう言われても、わかっている人には何をバカなこと言ってんの、ということなのだ。男ならば些事にはこだわらない、というのがまっとうな日本語だからだ。
 だが、コピーの影響力は大きくて、だんだんと多くの人が、「こだわる」をいい意味に使いだす。そのように、日本語が壊れていくのだ。

 そして高田教授が最後に取り上げる困ったコピーがこれである。
 「バイバイ!尻ぬぐい」

そういえば、大使は「こだわる」をいい意味に使っているが、これは本来は誤用だったんですね。

近いうちに自費出版と夢想する大使にとって、出版社と摺り合せるこの章は参考になります。

<第3章 東大出とビンボー症> p69~73より
 初校ゲラというものを預って、この先1週間で著者校をしなければならないのだ。本を出版するには必ずしなければならない作業なのだ。
 「そこで次に、いくつかある表現上の問題なのですが」
 と言って宮本は、ゲラを手に取った。そのゲラには色つきの付箋が七夕飾りの短冊のようにいっぱいついていた。その付箋を頼りにあるページを開き、野田に見せる。
 「ここに『看護婦がびっくりして』という文章がありますね。これ今は普通、看護師と言うことになっているんです」
 ゲラの「看護婦」という部分から鉛筆で線が引いてあって、ページの余白に「看護師では?」と書いてあった。
 「そうか、この頃は看護師っていうんだ。でも、まだ看護婦っていう言い方のほうがピンとくるよね」
 「ですから、必ず直さなくちゃいけない、ということではないんです。たとえば70歳くらいの老人が、台詞の中で『看護婦を呼んでくれ』なんて言うんだったら、そこは看護婦のほうがリアリティがあるかもしれません。でもここは地の文ですし、今の普通の用語を使った方がいいのでは、という指摘です。どうしてもいやだ、ということなら、このママでもいいのですが」
 「どうしてもいやだということはないけど」
 「作家の先生で、看護師という言葉は使いたくない、という人もいらっしゃるんです。その先生は地の文の看護婦を、すべてナースという表現になさいましたけど」
 「そこまで看護師がいやだってわけでもないんで、こだわるつもりはないんだけど。どうするか考えてみます」
 「お願いします。それから、これはちょっと微妙な問題なんですが」
 と言って宮本は次の付箋のページを開いた。
 「ここに、『千葉の田舎者』という表現があります。これは少し差別的な表現ではなかろうか、ということを考えなければいけないんです」

 「ああ…、田舎者という言い方がマズいわけですか」
 校閲者は田舎者という言葉から線を引いて余白のところに「少し差別的表現では。出身者トカ」と書いていた。
 しかし、その指摘には納得のいかない気分になる野田だった。

 「あの、これはわざとふざけて言ってるギャグのようなもので、本当に千葉の人は田舎者で困ったものだ、とか思っているわけではないんですけど」
 「ええ、遊んだ言い方だということはわかります。その箇所の少し後ろに、『そうしたら、返事をしたのがやっぱり千葉だ』という文章がありまして、親しみがあるからこそ、ふざけて強調しているんだな、と思います。しかし、千葉の田舎者、と決めつけてありますと、これを千葉県の人が読むと気分を害するんじゃないだろうかと、気をまわすわけです」
 「でもこれをね、千葉の出身者と直したほうが、かえって千葉県民に失礼じゃないかなあ。言葉が正確だと、ふざけて言っているだけだという感じが消えちゃって、本気でバカにしてるみたいになるでしょう」
(中略)

 宮本はそういうことを、泣き出さんばかりの苦しげな表情で言うのだった。



(アルツハイマーとか、坊主とか床屋とかストレートに書くと、あまり良くないようです)

このあと、名古屋発のパスティーシュ路線は、男女関係や芸能界ゴシップなどに突き進んでいきます。
なかなか守備範囲が広くて・・・ええでぇ♪
長かった下積み時代の修練が、今の作品に昇華されていることは喜ばしいことですね。
もう「カスリの清水くん」とは呼ばせない、既に小説作家ですもんね。

なお、帰って調べてみると、この本を借りたのは二度目であることが判明しました。
どおりでなんか既視感があるわけだ(イカン イカン)





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Last updated  2018.04.18 08:12:48
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