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2018.04.19
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カテゴリ: 気になる本
図書館で、『愛と日本語の惑乱』という小説を借りたのです。
日本語を題材にした小説といえば、水村美苗や筒井康隆あたりならあり得るだろうけど・・・
清水さんで大丈夫?と危惧されるのです(笑)

でもね、先日の日記 『小説家になる方法』 でも触れたように、清水さんのパスティーシュ路線なら、案外と読めるんですよ♪
NHKの日本語委員会らしきものが登場するけど、経営委員会のような政治的なものは出てこないわけです。清水さんでは場違いになるもんね。



日本語

清水義範著、ベストセラーズ、2008年刊

<「BOOK」データベース>より
愛は言葉か、言葉が愛か?恋多き大女優と同棲するコピーライターが、失われつつある愛に惑乱し、奇妙な言語障害に陥っていく爆笑長編。

<大使寸評>
著者は日本語の乱れ方とか言語障害に注目しているのだが・・・
こういうテーマに関しては、名古屋発のインスピレーションは快調です♪
とにかく、日本語を題材にしてパスティーシュ小説を書ききる筆力を評価したいのです。
rakuten 愛と日本語の惑乱


漢字の読み方について野田さん(小説の主人公)がイラついているので、見てみましょう。
p116~119
<第5章 イライラのそのわけは>
 SHKの放送用語委員会がまたあり、野田は律儀に出席した。昼までですむ会議で、なんとか都合はつくのだ。ただしその日は、シナリオライターの大久保ゆかりと、日本国語研究会会長の岩永保昭が欠席していた。

 会議のその日のテーマは、<中国の地名・人名の読み方について>だった。前もってレジュメが送られてきており、それに目を通していたので、どういう問題なのかは理解していた。日本では、世界中の国の中で中国の地名・人名だけは特別のルールで読んでいるのである。

 中国以外の国の中で中国の地名・人名などは、現にその国の人が発音しているのをなるべく忠実に(でも、大きく違ってしまっているケースも多いのだが)片カナで表記し、そのように読むようにしている。

 ところが中国だけは、これはその国が漢字を使っていることが理由なのだが、その漢字を日本式の音読みで読む、というやり方なのだ。つまり、毛沢東を、もうたくとう、と読むのだ。中国人がその名を、マオ・ツォートンと読んでいることは無視するのだ。というわけで、せっかく二つの国が同じ漢字を使っているのに、読み方は日本風にしてしまうので、口に出して言ってみると相手には伝わらないのである。

 韓国(北朝鮮も)の場合は、ルールが違う。たとえば金大中という人物の名をかつては、きんだいちゅう、と読んでいたこともあるのだが、今はそれをキム・デジュンと読んでいる。
 なぜ韓国が相手だとむこうの読み方にし、中国が相手だと日本式音読みにするかというと、それには相互主義という原理が働いているのだそうだ。つまり、中国の人は日本の地名や人名をむこうの読み方にしてしまうのだ。

 たよえば野田敦という名を、中国人はイエティエン・ドゥンと自分たちの読み方にしてしまうのだ。だからこっちも、毛沢東はもうたくとう、と日本式に読んじゃうぞ、という意趣返しみたいなことになっているのだ。

 その点、韓国では野田のことは、ノダと読んでくれる。だからこちらも、キム・デジュンとか、ノ・ムヒョンなどと片カナで書いてそう読みますよ、ということだ。

 そして、原則はそういうことなのだが、これにいくつかの例外がある。まず、中国の地名で、あまりに有名で中国式読み方が伝わってきているいくつかの例外は、むこうの読み方にする。たとえば上海や香港は、シャンハイやホンコンにするのだ。

 もちろんこのやり方は数々の疑問点を生じさせる。西安ぐらいだと、原則のせいあんと読むべきか、例外のシーアンと読むべきか迷ってしまうのだ。SHKでは今はせいあんだが、そろそろシーアンじゃないだろうか、という声も出ているそうだ。

 もうひとつの大きな例外は、中国の中でも漢民族ではない少数民族の人の住む街、つまりそういう人々の作った地名は、漢字の日本式音読みにしないで、原地発音を写した片カナ読みにすることになっているのだ。チベットとか、ウイグルとかいう自治区の名や、カシュガルなどという地名がそういう例外だ。

 この方式はSHKの方式であって、別に国の決まりではない。現在、世界地図を買ってみると、ウーハン(武漢)とか、チョンチン(重慶)などと原音と漢字の表記になっているものが多いが、SHKのニュースではそれらは、ぶかん、じゅうけいと読む決まりなのである。山東省はさんとうしょうであって、シャントンしょうとは読まない。

 そこまでわかったところで、野田は、そのやり方は絶対に混乱するぞ、と思った。外国の地名や人名を、ほかの国が自国語風に読むというのは少し横暴でもある。
(中略)

 第一、その方式で行くには面倒なことがいっぱいあるはずだ、と野田が思っていたら、その実例がSHK側から報告された。汽車で旅して中国の田舎を巡る、なんていう紀行番組だって今は作られる時代だ。その時、まったく無名の小さな村へだって行く。その場合スタッフは、そこが漢民族の村か、少数民族の村かを調べるのだ。そして、少数民族の村だった場合は、原地の人が発音している通りに片カナで、コイチャン村、などと表記すればいいのだが、漢民族の村だった場合は、使われている漢字を調べる。

 この時、中国ではものすごく簡略化した略字を使っているから、それを昔の正字に直さなければならない。そしてその字を日本式音読みにして、貴江村、などと紹介するわけだ。
 そんな努力をして、その土地の人にわからない村の名前を作らなければならないのだ。

ウーム 地名、人名の音読みに関しては、こんな悩ましい問題があったのか・・・
中華思想に対抗する上では(日中双方のメンツが関わるので)、NHKの放送用語委員会に頑張ってもらう必用が、ありまんな。

『愛と日本語の惑乱』1





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Last updated  2018.04.19 00:16:40
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