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2021.08.11
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カテゴリ: 気になる本
図書館で予約していた『コモンの再生』という本を待つこと7ヵ月でゲットしたのです。
内田先生の希望の書ってか・・・これは読むしかないようです。





内田樹著、文藝春秋、2020年刊

<出版社>より
天下りのマッチポンプ、地方の過疎化、アンチ・グローバル化現象……
コモン(共有地)の再生が日本の活路を開く!
・西部劇『シェーン』が示すコモンをめぐる原理的な主題
・ベーシックインカムの成否を決定づける要素とは?
・トランプ現象とアンチ・グローバリズムの流れ
・マナーの悪い「幼児的」なオヤジのマウンティングについて
・明治維新前の藩制度とフランスのコミューンの共通点
・「自我の支配」から解放される瞑想のやり方……etc.

分断を超えて、新しい共同幻想が立ち上がる希望の書。

<読む前の大使寸評>
内田先生の希望の書ってか・・・これは読むしかないようです。

<図書館予約:(1/05予約、8/06)>

rakuten コモンの再生


内田先生が「核の恐怖」を語っているので、見てみましょう。
p96~98
<1950年代の「核の恐怖」>
『ゴジラ』第1作が公開されたのは、1954年暮れでした。その年の3月に第五福竜丸がビキニ環礁で行われたアメリカの水爆実験で放射能を浴びた。二つの出来事は無関係ではありません。でも、1950年代の「核の恐怖」は、現代人にはもううまく想像できないと思います。

 一つには現代はあまりにも核が日常化してしまっているせいで。もう一つには1945年から後、人類が一度も核兵器を使用していなかったので核があまりに非日常化しているせいで。

 ですから、北朝鮮が核ミサイルを持っていることがわかっても、日本政府の「非核三原則」が嘘だとわかっても、オバマ大統領が提案した核先制不使用政策に安部首相が反対しても、みんなたいして驚かない。核兵器は「あるけど、ない」政治的なカードとしてすっかり手垢がついてしまったのです。

 でも、50年代には「次の戦争では、米ソは核兵器を必ず使うだろう」という予測にリアリティがあった。それを世界中の人々が恐れていた。

 広島・長崎への原爆投下は日本人だけでなく、アメリカ人にとっても衝撃的な事件だったんです。アメリカはそれまでなんとか大義名分を掲げて「正義の戦争」をしていると言い張ってきた。でも、広島・長崎では市街地を爆撃して、一般市民を20万人殺しました。なぜ降伏寸前の日本に原爆投下が必要だったのか、アメリカ人自身も自分を説得できる根拠がなかった。

 事実、終戦直後から、米国内でも、「原爆投下は間違っていた」という厳しい倫理的批判が政府に向けられました。カトリック、プロテスタントの神学者たち、保守、リベラル双方の理想主義者たちから、市民を標的にした無差別爆撃と原爆投下によってアメリカはドイツや日本に対して倫理的優位性を失ったという厳しい批判がトルーマン大統領に向けられました。

 東京裁判でブレイクニー弁護人は裁判の冒頭で、敗戦国が戦争を行ったことそのものを犯罪として断罪する権利は戦勝国にはないと主張しました。もし日本の戦犯たちが戦争を企画実行したことで罰せられるのなら、アメリカの戦争指導部も同じ罪に問われねばならない。このアメリカ人の弁護人は「原爆を投下した者がいる。この投下を計画し、その実行を命じ、これを黙認した者がいる。その者たちが裁いているのだ。彼らも殺人者ではないか」という痛烈な言葉をトルーマンに投げつけました。

 ブレイクニーは軍人で弁護士です。別に左翼でも神学者でもありません。でも彼の言葉はその時点では少しも過激なものではんかった。1946年では、これまでアメリカの掲げてきた正義の理念に照らせば、「アメリカに敗戦国を裁く倫理的優位性はない」というのは「常識」だったのです。46年までは、原爆投下は人類に対する許しがたい蛮行だったという考え方をするアメリカ人がたくさんいたのです。それが一変するのは47年です。

 前陸軍長官スティムソンが「原爆投下でアメリカの兵士100万人の命が救われた」というデタラメな主張を行ったせいで、米国の世論は一気に「原爆投下は正しい」にシフトしました。以後そのまま。
(中略)




初代ゴジラからシン・ゴジラまで語られているので、見てみましょう。
p101~102
<人類滅亡ストーリー>
 現代では「核の恐怖」というのはもうリアリティがありません。だから、そういう足元が崩れるような恐怖感が映像的に表現されることもない。

『ゴジラ』もシリーズ化されると、ゴジラが正義の味方になったり、顔もだんだん可愛くなってしまった。これはシリーズ化された作物すべてに共通する無意識的傾向なので、制御しようがありません。ミッキーマウスだって登場してきたときはワイルドで暴力的で狡猾な鼠だったのに、いつのまにか顔の半分くらいが目玉になって、2頭身のかわいいアイドルになってしまった。「いい人」化シリーズの宿命なんです。

『ゴジラ』もそうでした。原初の異物感をそのまま維持することができなかった。しかたなく、そのつどシリーズを切って「新しいゴジラ」を造形しようとした。『ゴジラ』の新作を作るとすれば、どうやって54年版の恐怖を再現するかが課題になります。行動パターンが理解不能であり、理解も共感も絶する怪物が人間社会を根本から破壊してゆくという物語でなければならない。繰り返しそれが試みられましたが、果して成功していると言えるかどうか。

 54年版『ゴジラ』にあってその後なくなるのは、怪獣が日常生活に踏み込んできて、ささやかな市民生活が破壊されてゆくプロセスの精密な描写です。54年版『ゴジラ』にはそれがあります。逃げ惑う人々、取り残されてゴジラに踏み潰される母娘、ゴジラの接近を直前まで中継放送して、最後に「みなさん、さようなら」と告げて死ぬアナウンサー。個人の力ではどうにもならない巨大な力に固有名を持った日常生活が壊されてゆく。その恐怖はおそらく直近の戦争経験のリアリティに裏づけられています。

 でも、時代が経ち、戦争経験も核の恐怖も稀薄になるにつれて、ゴジラ映画はミニチュアの都市を着ぐるみノゴジラが踏みつぶしてゆくだけの定型に堕してしまった。観客はカメラと一緒に「神の視点」から都市の破壊を見下ろすだけで、もう等身大の市民生活が破壊される場面は描かれなくなった。

 だから、『シン・ゴジラ』は未見なんですけれど、もし原点回帰を考えているんだったら、ゴジラを共感不能、理解不能なモンスターにすることと、市民生活が破壊される具体的な恐怖を描くことが必須だと思います。オリジナル版に迫るには、それしかないと思う。ゴジラの行動が予測可能で、ゴジラの思考が理解可能になったら、もう怖くないんです。ご覧になった方、この予言は当たったか、外れたか、どうでしょう?
(2016年10月29日)





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Last updated  2021.08.11 00:13:56
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