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2021.09.30
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カテゴリ: 中国
図書館に予約していた『チャイニーズ・タイプライター』という本を待つこと6日という速攻でゲットしたのです。
圧巻の言語技術文化史ってか・・・これは読むしかないでぇ♪






トーマス・S・マラニー著、中央公論新社、2021年刊

<「BOOK」データベース>より
中国語タイプライターの“不可能性”から繙かれる圧巻の言語技術文化史。漢字についての発想の転換や戦時中の日中関係、入力や予測変換といった現在につながる技術の起源まで、波瀾と苦渋に満ちた展開を鮮やかに辿る。

<読む前の大使寸評>
圧巻の言語技術文化史ってか・・・これは読むしかないでぇ♪

<図書館予約:(7/17予約、副本1、予約3)>

rakuten チャイニーズ・タイプライター



訳者による解説を、見てみましょう。
p319~321
<訳者解説>
 数年前にドイツの安宿に泊まっていたとき、同宿のバックパッカーに話しかけられたことがある。私のパソコンに興味を示し、日本語のキーボードを見てみたいという。ところがいざ見せてみると、何やら怪訝な表情を浮かべ、そこで会話が終わってしまった。思い返せば、もしかしたら日本のパソコンのキーボードには漢字がズラリと並んでいると期待していたのかもしれない。

 実際にそこにあるのは、欧米のものとほぼ同じ、QWERTYのキーボードだ。現在の私たちはこのQWERTYのキーボードを使い、変換機能を駆使して日本語を入力することに慣れ親しんでいる。しかし、限られたキーしかないキーボードと、無数にある漢字がこうして結び付けられているのは、実は想像力の飛躍の賜物に他ならない。その想像力の出自を、コンピューター以前の技術であるタイプライターに遡って明らかにしたのが本書である。

 著者のトーマス・S・マラニーはスタンフォード大学歴史学部の教授で、中国史を専攻としている。本文中でも少し言及されている前著では、各集団がどの民族に帰属するかを確定させるために共産党政権が行った「民族識別工作」を主題とした。科学技術史に目を転じた本書により、優れた東アジア史研究の成果に与えられるアメリカ歴史学会のフェアバンク賞を2018年に授与されている。

 本書の主軸をなすのは、西洋のラテン・アルファベットを基にして作られた「近代」の象徴としてのタイプライターと、中国語との間にある距離感である。その隔たりゆえに中国語そのものに「問題」があるとみなされ、それを克服するための「パズル」が形作られることになる。

 常に西洋の「本物」のタイプライターを意識しつつ、この「パズル」を解こうとしていく人々の群像を描いていくなかで、漢字についての発想の転換や戦時中の日中関係、入力や予測変換といった現在につながる技術の起源に至るまで、さまざまな話題が展開されている。タイプライターというモノを起点としつつ、それの単なる発明史をはるかに超える射程を持った本であり、関心や専門を問わず広く読まれるべき1冊である。

 堅実な実証に基づくアカデミックな研究であるとはいえ、ウィットに富んだ文体と多彩なエピソード(そして興味深い図版の数々)は読んで飽きることがなく、特段の前提知識がなくても難なく読み進められると思う。とはいえ、大部の著作ではあるので、読書の手引きとするために、全体的な枠組みに関わる序章から第2章までに特に重点を置きながら、蛇足を承知で概要を示しておきたい。

 「序論 そこにアルファベットはない」の話の「つかみ」となっているのは、オリンピックの入場行進に関する話題である。奇しくも、2020年夏に開催されるはずであった・・・そしてこの解説の執筆時点では2021年夏に開催されることになっている東京オリンピックでは、入場行進を50音順で行う予定であると報じられている。

 1964年の東京オリンピックでは、英語表記のアルファベット順であった。この変化は、海外の観衆を戸惑わせるかもしれない。とはいえ、理解不能というほどではないだろう。日本語がわからないとしても、50音という音による配列である以上、近い発音から始まる国々は行進順も近いので、一定の規則性があることがわかるはずだ。

 これとは事情が異なったのが、2008年の北京オリンピックである。このときは、漢字の画数順による行進であったため、音を聞くだけではほとんど不規則に感じられるのだ。ここで浮き彫りになるのは、アルファベット(一つの文字が一つの音素と対応する文字体系)を持たない中国語の特異性である。

 ここで正確を期して記すならば、日本語の仮名は音節文字と呼ばれるものの一種であり、やはり厳密にはアルファベットではない。とはいえ、文字が発音を表す表音文字であり、たかだか数十種類の限られた文字の組み合わせであるという点では、アルファベットと同類である。世界の主要言語のなかではただ一つ中国語だけが、表音文字を全く使わず、標語文字である漢字のみを使用している。したがってここでは、東洋と西洋というよりもさらに先鋭的な対立軸が表れている。

 とはいえ、漢字の文字数が多いということそれ自体に、問題があるわけではない。それが「問題」であるとみなされるようになるのは、タイプライターをはじめとするアルファベットを基礎とする技術が西洋で生まれ、それを中国に導入しようとするなかで様々な困難に突き当たってからのことだ。

「第1章 近代との不適合」では、タイプライターという文脈に即しつつ、序論での議論がさらに展開されている。まず初めに示されるのは、西洋人が想像で描いた中国語タイプライターの数々である。何千何万ものキーがある巨大なキーボードを必死に操作する姿が描写されている。当然、実際にそのようなものを作ったり操作したりすることはできないわけで、「中国語タイプライター」の不可能性を示唆する風刺に他ならない。

風刺画


 実はタイプライターが発明された当初は、ほかにもさまざまな形態があったが、徐々に単一の形に収斂されていき、技術改良によりシャム語やアラビア語のような非西洋の言語もそれで扱えるようになった。その結果としての均一化された想像力から見れば、キーボードのあるタイプライターこそが普遍的なタイプライターであり、中国語はそれに適合しない唯一の言語であるということになる。

 そしてこのことが、中国語の後進性を示す「客観的な」な証拠として援用されたのである。逆に言えば、中国の人々にとって、中国が近代に生き残ることを示すためには、何としても中国語タイプライターを作る必要があった。

『チャイニーズ・タイプライター』1 :同文同種同タイプライター





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Last updated  2021.10.01 13:23:50
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