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「よごれた空」 まあ、さほど面白いとも言えないお話しだったかもしれません。こんな風なショート。ショートが 30 話ほど入っています。
ジェット機がすごいスピードで飛びさり、青い空に、白いジェット雲がのこりました。セラフィーノくんは、ときどきそれを見て泣きだし、あいつらなぜ空をよごすんだと、悲しがるのでした。
「もし、ぼくが塀に一本線をひいたら、みんな、ぼくのことをおこるのに、空に線をひくものがいても、だれもなんにもいわないなんて。」
おとうさんは、空にかかれた線は、ちょっとのあいだに、ひとりでに消えてしまうのだからと、セラフィーノくんに説明しました。
「でも。はくぼくでかいた線だって、そのうち消えてしまうよ。」
おとうさんは、飛行機は交通のだいじな手段なんだから、がまんしなくちゃいけないのだと説明しました。人びとは。旅行することがひつようだし、また、うんと遠くの国へ手紙を送るときも、航空便がひつようだ。つまり、飛行機で旅行する手紙のことだがな、などともいいました。
でも、セラフィーノくんはなっとくしようとはしませんでした。セラフィーノくんはいいました。空に線をかくのは、おもに戦闘機などの軍用機だし、あんなのは、ガソリンのむだ使いをして、空を飛びまわるより、じっとしてたほうがましだろう、といったのです。おとうさんは、そういわれると、どうやってもこたえを見つけることができなくなりました。息子のいうことはもっともなことなのです。でもセラフィーノくんをなっとくさせるために、軍用機だって、戦争のときにはひつようだろうといいました。セラフィーノくんは、いまは戦争もないし軍用機なんて、いちばんのよごし屋だ、空にいちばん太い線をかき、いちばんうるさい音をだしていると、いいかえしました。
ある日曜日、セラフィーノくんは、いなかに住んでいるおばあちゃんの家へつれていってほしいと、いいました。おとうさんは、ガソリンが高くつくから、だめだといいました、セラフィーノくんは泣きだし、飛行機がガソリンをみんな使っちゃうから、いけないんだと、わあわあいいました。そこで、おとうさんは汽車でおばあちゃんの家へ行くことにしました。
セラフィーノくんは、おばあちゃんと、長いあいだ、おしゃべりをしました。まだ飛行機がはつめいされていなかった、うんとむかしの時代のことも話しました。
帰りの汽車のなかで、セラフィーノくんは、ずうっとむかしには、空を飛んでいたのは、天使だけだったと、おとうさんにいいました。それから、天使たちは、空に線をかいて、空をよごすこともなかったし、いるさい音をださず、ガソリンのむだ使いもしなかったんだから、ジェット機の不行使より。ずっとしつけがよかったんだ、ともいいました。おばあちゃんがそういったのですから、まちがいのないことなのです。
おまえのいっていることは、ほんとうだと、おとうさんはいいました。たしかに、天使たちは空もとごさないし、うるさい音もたてないし、ガソリンのむだつかいもしない。だがな、と、おとうさんはつけくわえていいました。
「天使たちのなかには、下を歩いている人間の頭に、おしっこをひっかけたやつもいるんだぞ。うんとしつけの悪いやつは、うんちまで落っことしたんだからな。」
その日から、セラフィーノくんは、もう天使のことも、飛行機のことも話さなくなったということです。
追記2024・01・20
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100days 100bookcovers Challenge備忘録 (1日目~10日目)
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という形でまとめ始めました。日付にリンク先を貼りましたのでクリックしていただくと
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