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2023.10.26
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​小島渉「カブトムシの謎をとく」(ちくまプリマ―新書)​ ​​​​​​​​  市民図書館 の新書の新刊の棚で見つけました。2023年の8月に出た本です。 「カブトムシの謎をとく」小島渉 という背表紙に目がとまって、手に取って表紙を眺めて、裏表紙裏の著者略歴を見ると、 1985年 生まれ、 東大の大学院 を出た ​博士さん​ で、 山口大学 の先生のようです。 38歳 のようです。わが家の 愉快な仲間 の誰かと同じくらいの年恰好で、まあ、それにしても カブトムシ です(笑)。​​​​​​​​
​​​​​  60年 ほど昔、 小学校3年生 の時に ファーブル昆虫記 に夢中になったことが浮かんできました。覚えているのは セミ フンコロガシ(カナブン) の話です。もう一度パラパラやって借りてきました。​​​​​
​​​ 下に貼った 目次 をご覧になればわかりますが、 第1章 カブトムシ研究者への道 と題されていて、自己紹介です。かなりディープな昆虫少年だったようですが、この1節にウーンとなりました。
 水生昆虫を探しに行くと、ヘビにもよく出会いました。よく目にしたのはシマヘビとヤマカガシです。そのうちヘビの美しさに魅了され、見るたびに捕獲し、写真として記録するようになりました。カエルもお気に入りの動物の一つでした。普段見かけるのはトノサマガエル、ヌマガエルやアマガエルなどの普通種でしたが、一度だけ大きなヒキガエルを捕まえたのをよく覚えています。(関東の人には信じられないかもしれませんが、奈良県の平野部ではヒキガエルはなかなか見られません)。ヒキガエルを捕まえたら確かめたいことが一つありました。それは、耳腺と呼ばれる目の上のふくらみから分泌される毒液の味です。耳腺を圧迫すると、図鑑に書いてある通り、乳白色の毒液がにじみ、少し舐めてみると強烈な苦みを感じ、天敵への防御効果を身をもって理解できました。私が幼少時に行った思い出深い“実験”の一つです。(P18)

​  ​​ ​おいおい・・・ ですね(笑)。だいたい、 ヘビが美しい とかいう感覚についていけませんが、

​ヒキガエルの毒液を舐めるって、きみ!​ ​​

​  という感じです。イヤー、困った中学生ですね。​​​ ​​​​​ まっ、そういうわけで、すっかり引き込まれて、久しぶりの昆虫記体験でした。語り口はご覧のとおりで、まあ、理系の青年の作文ですが(エラそうでスミマセン)、 カブトムシが何を食べ ていて、 カブトムシを食べるのはいったい何者か (想像つきます?)ということに始まって、現代昆虫学の現場報告は、なかなか面白くて、一気読みでした。
 後半では アゲハ蝶 コガネムシ の話に広がっていくのですが、高校生ぐらいを相手に

​「昆虫学の世界へ!」​​

 ​ という優しいお誘い(?)の気持ちが充満していてなかなかうれしい本です。​​​​​
​​ とはいうものの、誘われても、今更な 69歳の老人 ​「ものしり・うんちくネタ」​ に出合うたびにポスト・イットを貼るのに夢中でしたが、語る相手がいないことに、ハタと気づいて、チョット落胆の読書でした。​​ ​​​​​​ 折角なので、この場を借りて、ちょっとだけ、付け刃の うんちく です。 カブトムシの食べ物 は樹液だそうで、 クヌギの木 がメインですが、今、関東地方に広がっている ナラ枯れ の原因でもあるそうです。それから、 カブトムシを食べる のは カラス、タヌキ!、ハクビシン、野生のネコ だそうで、角とか頭の部分は食べ残して胴体を食べるのだそうです。​​​​​​
​​ 老人は、ナラの木を枯らしてしまうほどの カブトムシの群れ があることにカンドーでしたが、現代社会から見える虫たちの世界と、虫たちの世界から見える現代社会の姿の両方が、相変わらず昆虫少年を続けていらっしゃる、まあ、実に奇特な学者さんの視界には広がっているようで、ただの オタク・ブック では終わっていませんね。
 お若い方々が、こんな本があることに気づいて、面白がってくれるといいなと、いや、ホント、マジに思いました。​​

  目次
まえがき

第1章
 カブトムシ研究者への道/昆虫に夢中/思い出の池/魅惑の図鑑類/鳥への情熱/進化生態学との出会い/昆虫を研究対象に/山口の自然環境

【コラム】台湾での生活
第2章
 カブトムシはどんな昆虫?/カブトムシの分類/カブトムシの種数/カブトムシは本当に1種類?/カブトムシの一生/成虫の短い寿命/幼虫の餌/オスの角と大きい体/ユニークな配偶行動/カブトムシと人間との深いつながり/都会派のカブトムシ/カブトムシは希少種だった?

【コラム】ナラ枯れとカブトムシ
第3章
 幼虫のくらし/幼虫の餌の質が成虫の体の大きさを決める/発酵の進んだ餌の見つけ方/卵の大きさと成虫の大きさ/幼虫が成長するしくみ/幼虫はなぜつねに最大速度で成長しないのか/幼虫はいつ蛹になるのか

【コラム】〝大きさ〟って何?
第4章
 カブトムシを食べたのは誰?/散らばる死体の謎/犯人はカラス?/もう一つの天敵/カブトムシはおいしい?/食べられたのはどんな個体?/大型の個体は食べられやすい/高い捕食圧

【コラム】タヌキが捕まえたのは?
第5章
 活動時間をめぐる謎/小学生による大発見/1通のメール/面白い着眼点/「自由研究」から「学術論文」へ/You are never too young to be an ecologist/なぜ昼まで居残るのか/シマトネリコでは物足りない?/さらなる調査/オオスズメバチとカブトムシ/オオスズメバチを排除する/法則はシンプルだとは限らない

【コラム】屋久島での大発見
第6章
 カブトムシの生態の地域変異/遺伝か環境か/謎多きオキナワカブト/ユニークな屋久島のカブトムシ/九州のカブトムシ調査/短い角の進化史に迫る/素早く成長する北日本のカブトムシ/カブトムシの成長を記録する/成長速度を解析する/北海道の外来集団は進化しているのか/素早く成長するためのメカニズム/卵の大きさの地域変異/大きい卵を産む理由

【コラム】調査の間の楽しみ
第7章
 昆虫はどのように天敵から身を守るのか/石垣島のジャコウアゲハ/恐れ知らずな有毒種/警戒心の強さ比較/場所を変えて調査/甲虫の〝硬さ〟は鳥からの防御に役立つ?/ウズラ以外にも通用するのか/食べてもらう工夫/鳥からの捕食回避/【コラム】逃避開始距離で警戒心の強さは本当に測れる?

【コラム】毒蝶は体温が低い
あとがき 引用文献
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最終更新日  2023.11.08 13:16:39
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