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芥川賞4連敗! の始まりの作品です(笑)。
落選し続けている作家の作品を、なぜ追いかけて読んでいるのか? まあ、そういうふうに尋ねられそうですが、面白いからですね。何が面白いのかというと、 「作家の方法意識」 です。
あからさまなのですね(笑)。 たとえば、 「旅する練習」 では、姪と歩いた旅を作家である叔父が記録しているという設定でしたが、この作品集にある 「生き方の問題」 の書き出しはこうです。
歴史を遠ざけよ。同時性の状況に立つのだ。これが基準である。私が同時性を基準にして物事を裁くように、私もまた裁かれるのである。背後に流れる無駄話はすべて幻想だ。
キェルケゴール
貴子様
これを読まなくちゃ ― 今まさに貴方が読み始めた、世にも珍しいエピグラフ付きの手紙を、そんなふうに認識したのはいつだった?今日か昨日かそれよりずっと前か。
かと言って、僕はその答えを知りたいわけじゃないし、そもそもこの手紙が貴方の家の郵便受けに届く日(二〇一八年七月七日)も知っている。なにしろ僕自身がそのように指定する張本人だし、今貴方がこうして読んでいるということは、僕が立派にやり遂げたってことに違いないんだから。(単行本P7)
ご覧のように、この作品は 「僕」 が、父方のいとこの 「貴子さん」 にあてた 手紙 です。単行本で、ほぼ 90ページ 、全文、
一通の手紙!
です。ボクが あからさまな「方法意識」 と呼んだのは、とりあえずそういう書きかたです。 わざわざ キェルケゴール なんか持ち出しているのも、 手紙の書き手 である 僕 という登場人物と 作家自身 の、それぞれの意図が重ねられていて、読みながらの
ハテナ?
の答も複数化するはずですね。 それが、どうしたといってしまえばそれまでですが、手紙の小説化、小説の手紙か、といえば、有名なのは、例えば高校のときにお読みになったことがある(だろう)、 漱石 の 「こころ」 ですが、教科書に掲載している部分というのは 全編手紙 ですね。
で、授業では 「覚悟」 とか 「精進」 とか、登場人物の、哲学的、宗教的、人間性を象徴するような 「ことば」 にこだわって
「知ってるか? わかるか?」
と、いたいけな高校生を脅す方が多いのですが、そんなことより、死ぬ前になって 「ある人間」
が、なぜ 手紙
を書くのか、なぜ、その場面、あの場面を(いろいろありますが)思い出すのか、そしてそれを書かねば気がすまないのか、という、 人間の記憶
、あるいは、 生きてきた時間に向き合っている態度
に対する興味は、高校生にだって、案外、 リアル
で、そうなると、作家が、何故、登場人物にその場面を思い出させるのかという問いをも成立するわけで、教室も盛り上がって、なかなか面白かったのですが、この作品も、まあ、そういうことをあれこれ思わせて面白いというわけです(笑)。
この 作品
の 手紙
の場合は、どっちかというと ラブレター
のようなものですが、当の 貴子さん
に伝えたいのか、 小説の読者
に伝えたいのか、訊き質したいような内容もあって驚きます。まあ、それはそれで面白いのですが、なんというか、 「旅する練習」
もそうでしたが、 オチ
をつけたいようなのですね。結果、わけのわからなさが解消してしまうというか、そのあたりが ???
でした。
でも、その結果、
いいお話でした!
という後味でしたがね(笑)。それでいいのかなと思わないでもないのですよね(笑)。で、次は表題作の 「最高の任務」
ですが、それは その2
に続きます(笑)。また読んでね(笑)。
追記
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