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はじめに 文中に 朔太郎の順序 とあるのは「中略」の文中で 萩原朔太郎 が
戦後の現代詩を主軸にして詩歌の全般を取り上げて短い解釈を試みた。本稿は、現代の詩歌を表現としての特徴をもとにして出来るかぎり類別し、それぞれの共通点を読解しようとするものである。当然のことながら、類似性が目立つ作品の方から取り出すことになるので、必ずしも詩史の新旧は問題としていない。また何を特徴として類似の基準とするかも、同質かどうかにこだわることもしなかった。新聞連載という性格から、どこまでも詳細にわたることができるし、どこで中断されてもそれなりの完結感を保てるよう工夫したつもりだといえる。そして、距離感をおなじにするために、はじめて個々の詩人に「さん」という敬称を用いた。訊ねられたり、吉本さんも紳士的になりましたねとからかわれたりしたので特記しておきたい。
中略
小説作品が着飾った盛装姿だとすれば、詩は身体の骨格であり、その身体にやや古風な伝統的な衣装をじかに身につけたのが古典詩の世界と言うべきかもしれない。それが朔太郎の順序の本意かもしれない。わたしはまず朔太郎かもしれない。わたしはまず朔太郎からはじめられた「現代詩」について短い説明を試みてから、多様な個々のブロックの読解に入ってゆこうと思う。
二〇〇三年四月 吉本隆明
「文芸ジャンルを順序として詩、批評、小説、その他の散文」と考えていたという記述に基づいています。
たとえば成熟ということ 2025年 の今、 コムデギャルソン=少年のように というブランドで一世を風靡した 川久保玲 の話とか懐かしい限りですが、 「床下」との交通を忘れた日本の現在 というふうな言葉がふと浮かんできますね。ここでは文学者の成熟の話題ですが、この文章が書かれてから20年、例えば映画館に通いながら「日本映画」とか見ていて、共通して感じる底の浅さには、個人の好みを越えた原因というか理由というかが、つくり手自身にも気づかれないままあるのかもしれませんね。
たとえば成熟ということでもいい。
日本の文学者は年を取るごとに洗練され、技術的にもうまくなっていくのだけれど、逆に当初持っていた魅力は失っていく。詩人も小説家も、ほとんどがそうではないか。表現者として成熟するということがなかなか難しくて、ある程度のところで、まとまってしまう。と吉本さんは言う。
内容ぜそんなふうになるのか。いろいろなふうに言い換えてもらった。
つまり、ワキが甘くなるからだという。ワキを締めたまま表現を深めていくのが、日本の文学者にはとても難しい。ドストエフスキーなら「甘いもヘチマもない」。夏目漱石は日本ではまったく例外的な作家で、年を追うごとに世界が深まっていく。ずっとワキが締まったままだったという。
ワキが甘くなるのは文学以外の世界とのつながりが弱くなるからだとも説明できる。自分の世界の中で技術的に固まっていって、その外とのやりとりがなくなってしまうと、作品が瘦せていくということだろうか。
それを吉本さんの言葉を借りれば、床板の上で仕事をするようになるということだ。ドストエフスキーや夏目漱石は、たえず床の下のことを考えていて、しばしば、床板を踏み抜いてしまう。ところが、多くの日本人の文学者は床の下のことなどわすれてしまって、床の上で作品を洗練させていく。
この問題について説明しながら、川久保玲さんのことにも触れて下さった。彼女もワキが甘くならない。ワキが甘くなると、日本のファッションデザイナーの場合、日本人の体形から遊離してしまうのだという。なにか日本人の体形に合わせようとしてしまうのだ。川久保さんのデザインは絶えず床の下との交通ができているので、そんな無理が起こらない。
いたって散文的な私が、一年間、吉本さんの自宅に通い続けながらうかがったのは、たとえばこんな話だった。(以下略)(P204~P205)
谷川俊太郎 田村隆一 塚本邦雄 岡井隆
俳句という表現 夏石番矢 吉増剛造
歌詞という表現 中島みゆきと松任谷由実 宇多田ヒカル
優れた詩の条件 俵万智 佐々木幸綱と寺山修司 角川春樹
暗喩の詩人、直喩の詩人 野村喜和夫 城戸朱理
「戦後派」の表現 鮎川信夫 近藤芳美 西藤三鬼 吉岡実 谷川雁
入沢康夫と天沢退二郎 茨木のり子 永瀬清子 清岡卓行 大岡信
構成者後記
追記
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