蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

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2005/08/15
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カテゴリ: 韓流ドラマ&映画
「ああああ、痛・・・」

倒れた拍子に打ったのだろうか。右ひざをかばっていた。

駆け寄ったソンジェは、彼女の腕をとり、そっと助け起こした。
「すみません」
彼女が言う。
ソンジェは何も答えず、自転車を起こし、買い物袋からちらばった果物を拾った。
『彼女は僕のことを覚えているだろうか?』
それだけが気がかりだった。

自分からは名乗らないつもりだ。ソンジェは賭けにも似た心境でいた。
自転車を起こし、落ちたものを拾ってしまうと、もうすることがなくなった。
さてどうしたものかと考えていると、女性は早口でこう言った。
「あ、ありがとう。昨日も親切にしていただいて、今日もまた・・・」

ソンジェの心の中に、温かいものがフワリと広がった。
『僕のことを覚えていてくれた!もう僕は彼女にとって透明人間のような存在ではないんだ』
心の中の喜びを隠すように、ソンジェは彼女にそっけなく会釈すると歩き出した。

『僕も彼女のことを覚えているって、どうして言わなかったんだろう?ほんとうは、もう少し彼女といたい。話をしたいんだ』

ガチャン。
「あ、やだ・・・。何これ」
彼女の声に、ソンジェは振り向いた。自転車のチェーンがはずれているようだ。


「ごめんなさい、迷惑かけっぱなしで」
『そんなこと言わないで。僕は少しでも長く貴女のそばにいることが出来て喜んでいるんだ。チェーンがはずれてくれたことに、むしろ感謝しているくらいだよ』
手は忙しくチェーンを直しながら、ソンジェは横にいる彼女に神経を集中させていた。
あの甘い花の香りが、再び鼻をくすぐる。ソンジェは体の芯が熱くなってきた。

ようやくチェーンが元の位置に戻った。ペダルを手で回してみる。車輪が軽快に動き始めた。

彼女は少女のようにはしゃぎ、ソンジェに手を重ねて、ペダルを回し始めた。
柔らかな手の感触に、ソンジェはますます体が熱くなるのを感じていた。
彼女も自分の大胆な行動に驚いたのだろう。あわてて手を離すと、照れたように横を向く。
ソンジェは今だと思った。
「あなた・・・、コンビニ?」
さも今気づいたかのように、彼女に告げる。
「やっと気づいてくれました?」
『今気づいたんじゃないんだよ。僕は貴女のことを探していたんだ。会いたいって、ずっと思ってきたんだ』

あれほど会いたいと念じ続けてきた女性が、今目の前にいる。そしてソンジェに向かって笑顔を見せてくれている。
あの甘い香りに包まれているうち、ソンジェは彼女への想いがどんどんふくらんでいるのを感じた。体が熱い。
このまま彼女のそばにいたら、彼女を抱きしめてしまいそうだった。
ソンジェはTシャツを脱いだ。自分でも何をしているのかわからなかった。気が動転していたのかもしれない。
ソンジェが無造作に置いたTシャツを、彼女は手に取った。
「これよかったら洗って返しましょうか?」

ソンジェの心臓が、またトクンと音を立てる。
「あ、でもどうやって渡したらいいのかしら」
そう呟く彼女に、ソンジェは言った。
「明日また会いましょう」
「ええ、じゃあまたここで。今ぐらいでいい?」
問いかける彼女にソンジェは頷きながら言った。
「ヤクソク」
「ええ、約束」
彼女の眩しい笑顔を見ながら、ソンジェは歩き出した。
『明日また彼女に会える!』
ソンジェの心は喜びで一杯だった。






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最終更新日  2005/08/16 01:01:22 AM
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