蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

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2005/08/23
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カテゴリ: 韓流ドラマ&映画
その夜、ソンジェは一睡も出来なかった。葉子の気持ちを確かめるためについた小さな嘘。少しでも葉子がソンジェの帰国を悲しんでくれれば、思い切って花瓶を渡すこともできただろう。ただのプレゼントではない、ソンジェの気持ちのこもった花瓶。それを渡しさえすれば「帰国は嘘なんです」と言おうと思っていた。

ソンジェは嘘をついたことを後悔した。
窓の外が明るくなってきた。夜が明けてきたらしい。
ソンジェは布団の上に座り、長い間考えていた。

『やっぱり公園に行こう。葉子さんが来てくれるまで、公園で待っていよう。僕にできるのは、それだけだから』
ソンジェは立ち上がり、身支度をし始めた。

ひんやりとした朝の空気が心地良い。ソンジェは火照る心を抱えたまま、公園への道を急いだ。心の中では、葉子が来るという思いと、来ないという思いが、お互いにけん制しあっている。
カバンの中に入っている花瓶を、ソンジェはそっと取り出してみた。葉子にもらった青い花瓶とほぼ同じ形だが、葉子をイメージして花瓶の口に小花模様を散らした。

『葉子さん・・・』
甘い痛みが胸を貫く。ソンジェは再び花瓶をカバンに入れた。

キキキキーッ!
急に鋭い音がして、ソンジェは目の前が真っ暗になった。


どのくらい時間が経ったのだろう。ソンジェは目を開いた。頭が痛む。消毒薬の匂いのする白い部屋。枕もとには恭一がいた。
「おい、ソンジェ、気がついたのか」
「き、恭一さん。僕は・・・どうして・・・ここに?」
「事故に遭ったんだよ。公園の近くの道路で、お前、大型バイクに轢かれたんだぞ。覚えてないのか?」
「ええ・・・」
ソンジェは頭をおさえながら、思い出そうとした。
『あっ、花瓶!』

「どうしたんだ?ソンジェ」
恭一の言葉にも耳を貸さず、ソンジェはベッドの周りを見渡した。
油と土に汚れたカバンが、ベッド脇に置いてある。急いで中に手を入れる。
花瓶は無傷でカバンの中に納まっていた。
『よかった・・・』


病室の扉が開いて、担当医が入ってきた。
ソンジェも恭一も、その医者の顔を見て驚いた。

数日前、恭一のクレープ屋の前で、ホームレスの老人が倒れていた。恭一とソンジェは老人を病院に運んだ。すぐ治療してくれると思っていたのだが、そこにいた医者は後から運ばれてきた患者を先に治療し始めた。患者に付き添っていた男は、どことなく尊大な感じで恭一とソンジェを胡散臭そうに眺めていた。
ホームレスの老人は、治療が間に合わず、そのまま亡くなってしまった。ソンジェは怒りを押さえきれなかった。
その医者の胸ぐらをつかんで、抗議したのだ。しかし彼はソンジェの手を振りほどいて迷惑そうに一瞥すると、行ってしまった。
あのときの医者が、ソンジェの担当医だったのだ。
彼はとおりいっぺんの診察をすると、看護師と共に病室から出て行った。
「おい、今の医者、この間のあいつじゃねぇか」
恭一も驚いたようだ。

ソンジェは何となく嫌な予感がした。





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最終更新日  2005/08/23 11:48:59 PM
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