蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

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2005/08/27
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カテゴリ: 韓流ドラマ&映画
恭一にもらったメモを頼りに、ソンジェはソンウのアパートを探していた。メモに書かれている住所は新宿区の大久保駅近くだ。

メモを見ながら歩いていると、韓国食材店が目に入る。店の前にキムチが量り売りされていた。
ソンウへのお土産にするため、ソンジェはペチュキムチとカクテキ2つずつ買った。
『これを肴にして、今夜はソンウと飲み明かしたいな。積もる話もたくさんあるし・・・。ソンウが日本に来てからの苦労話を聞いてやりたい。ソンウは僕を家族の中で一番信頼してくれていたんだから。』
ソンジェは、ソンウが家出した時のことを思い出し、再び心が痛んだ。
『ごめんよ、ソンウ。あの時お前の力になってやれなかった僕を許してくれ。そうだ、ソンウに会ったら、一番にあやまらなくては。それが言いたくて、僕はここまで来たんだから』
今日彼に会えてあやまることができれば、心の底に溜まっていたソンウへのすまない気持ちが、解消される。そしてこれからは思い切りソンウの力になってやれるのだ。
ソンジェは足どりも軽く、メモに書かれた住所にやって来た。

「ソンウ、ソンウ、僕だよ、ソンジェだよ」
応答がない。留守のようだ。
『仕方がない、ソンウが帰ってくるまで、ここで待とう』
ソンジェはキムチの入ったビニール袋を持ったまま、廊下に立っていた。

しばらくして廊下を歩いてくる足音が聞こえた。
『ソンウ?』
振り返ると、そこには髪の長い女性が立っていた。ケナリの花を持っている。
ソンジェはその花を見て、彼女がソンウの恋人だと確信した。ソンウもソンジェ同様に、ケナリの花が好きなのだ。
彼女は、ドアの前にいるソンジェをまじまじと見ていた。
ソンジェはあわててドアから一歩下がる。
女性はソンジェに背を向け、ドアの鍵を開け始めた。

「アンニョンハセヨ・・・わたし、ソンジェです」
ソンジェは彼女の警戒を解こうとして、声をかけた。
「・・・お兄さん?」
「はい。ソンウいつ帰りますか?仕事いつ終わりますか?」
そうソンジェが言った途端、女性は部屋に入ってしまった。

玄関に立ち、部屋の奥を見て驚いた。
タンスの上に白い布が掛けられている。その上にはソンウの写真があった。その隣に白い箱がある。そして・・・位牌。
「ソンウ・・・?」
「ソンウ、一週間前に病院で息を引き取りました」
機械的な口調で、女性が話しはじめた。
建築現場で突然倒れ、一度は快復しかけたが、再び入院してしまったこと。医者の話ではソンウはクモ膜下出血だったということ。ソンウは望郷の思いに苦しんでいたこと。そして自分の気持ちを一番わかってくれるのはソンジェで、死ぬまでにソンジェに会いたいと言っていたことなど、最後は涙を流しながらソンジェに語った。
ソンジェは頭の中が真っ白になった。
『嘘だ!これは・・・これは夢なんだ。あんなに元気で若かったソンウが死ぬわけない』
しかしいつまで経っても夢は覚めない。
『これは現実のことなのか?ソンウは・・・ソンウは本当に死んでしまったのか?』
ソンウの写真の前まで来て、ソンジェは膝をガックリ折った。
堰を切ったように涙があふれてくる。
『ごめんよ、ごめんよ、ソンウ。遅くなってごめんよ・・・』
ソンジェは写真の中から微笑みかけているソンウに向かって、いつまでもあやまり続けた。

気がつくと、葉子の家の前にいた。
『葉子さん!会いたいよ・・・。僕はどうしたらいいの?ソンウが、ソンウが死んでしまっていたんだよ。僕に会いたいと言いながら・・・。』
葉子の顔が見たかった。いや顔を見るだけではなく、声が聞きたかった。凍りついた心を、温めるように慰めて欲しかった。
そして彼女に抱きしめられたかった。
ソンジェの悲しみをすっぽりと覆い隠すように、きつく抱きしめて欲しかった。

風が強く吹いた。葉子の家のベランダに置いてある鉢植えが倒れ、大きな音を立てる。
窓が開いて、葉子が出てきた。倒れた鉢を直している。ふと彼女の視線が、こちらに向いた。
ソンジェの姿をみとめると、驚いて立ち尽くす。
『葉子さん!』
ソンジェは心の中で叫んだ。
部屋の中から声がして、誰かが出てきそうになった。
ソンジェは葉子の家の前から離れる。

バス停に続く道を歩く。
『葉子さんには家族がいるんだ。僕が苦しい時、勝手に彼女に頼ってはいけない。でも、葉子さん、僕は今本当に辛いんだ。この気持ち、一人でどうすればいいんだろう・・・』
すぐにバスが来た。
ふらふらとバスに乗り込む。
バスが動き出した時、視線を感じたような気がしたが、ソンジェはもう外を見る元気もなかった。






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最終更新日  2005/08/28 01:16:10 AM
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