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2024.02.14
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カテゴリ: メディア
高村薫の「リヴィエラを撃て」という小説が忘れがたいのであるが・・・
このハードボイルドな小説を女性作家が書いたとは、まったく恐れ入ったのです。


*********************************************************
年越し用に借りたぶ厚い「リヴィエラを撃て」を、半月ほどかけてやっと読破しました。
で、最後の感想をしたためておこうと思うのです。

ネタバレになるが、香港返還交渉とか、ワシントンでのロビー工作資金がこの小説の鍵になるわけで・・・・
極めて今日的なテーマを扱っていたわけです。(ああ もろにネタバレでんがな)
97年以降の香港は、中国官僚にとって賄賂のなる木なんだそうで・・・・
今、ジャーナリストがここをつつくと、命がいくつあっても足りないのでは(笑)


【リヴィエラを撃て】
リビエラ
高村薫著、新潮社、1992年刊

<「BOOK」データベースより>
国際政治の楽屋裏を発狂させた男〈リヴィエラ〉。夥しい諜報戦士たちの血を吸込んだこのコードネームは、一人の天才ピアニストに死を賭した東京公演を決意させる。顔のない東洋人スパイをめぐって、東京・ロンドン・ベルファストに繰り広げる、流血の頭脳ゲーム。

<大使寸評>
この本では、歴史的背景、政治的背景もアクションもしっかり描いてあるので、なかなかマッチョというかハードボイルドなわけです♪
特に、中華の闇で揺れる日米英の政府中枢など、もろに大使のツボを突いています。

Amazon リヴィエラを撃て




p512~513
「閣下。失礼ですが、殺人の捜査権は警察にあります。一人の市民が路上で蜂の巣にされたのが殺人でないというなら、この国に警察はいらないことになります。捜査は警察が厳正に行い、結果を報告します。公表するか伏せるかを決めるのは、内閣です。しかし、その前に何よりまず捜査です」
 もう1秒タイミングが遅れたら、ブーイングの応酬になっていただろう。だが、一瞬早く、首相がこくりと一つ頭を縦に振ったのだった。
「分かった・・・。分かったよ。バーキン殺害の捜査は警察がやりたまえ。正直なところ、私もいろいろな意味で興味はある。しかし、だ。ともかく国というものは、すべての機関が協力しあって機能しているものだということを、ここにいる諸君全員がもう少し考えてもらいたい。正義はけっこう。機密もけっこう。しかし、ケンカは最悪だ。何より重要なのは、国政がスムースに運ぶことなのだ。どこからどのような報告が来ようと、私は首相の立場で判断させてもらう。そういうことで、情報部も了解してもらいたい」
「あの手島修三は、私どもの活動にとって有害な人物です」と《6》が言った。
「公爵夫人の旅券違反を捜査しに来たというのは、たしかに困ったことだ」と首相。
「いえ。東京の警視庁はそんな捜査は行っていません。先日申し上げたように、彼は日本外務省の要請を受けてバーキンの情報を探りにきた男です。86年から3年間、こちらの日本大使館に一等書記官として赴任していたが、中身は諜報担当です。ペルソナ・ノングラータとして、国外退去処分にしたいと思います」と《6》は抵抗した。
「判断するのは私だ。で、君の方は?」首相は《5》の長官に首を振った。
「確かに、手島はバーキンから機密に関する情報を入手している可能性があります。追放する前に尋問の必要があります」と《5》は答えた。
「警察は?」と首相。
「追放などとんでもない。尋問など、さらにとんでもない。わが警視庁の威信にかかわります。手島は現時点で、バーキンの事件の捜査に不可欠の証人です。こちらの捜査が終わるまで、指一本触れてもらっては困ります」
 首相は四人の男を見渡して何度目かの溜息を吐いた。
「・・・よし。私が決める。追放などという不穏当な話は無しだ。そういう特殊な目的で派遣されてきた人物なら、尋問も効果は期待出来ないだろう。だが、情報部の懸案も分かるので、警察は責任をもって手島某を日本行きの飛行機に乗せたまえ。本日の便が間に合わなければ、明日の早い便で、分かったかね?」


日本では、《5》や《6》が存在しないので、このような応酬にはならないだろうが・・・公安警察、警視庁の対立はあるのかもしれないですね。組織の詳細はよく知らないけど。
この本で公僕の正義が語られるあたりです。

p521~522
「手島さんを評価しない奴らが、この国をこんなふうにしたんだ」と坂上は呟いた。
「違う」と手島は首を横に振った。「坂上、それは違う。・・・僕はただ敗北したのだ。僕は今回、痛切に感じたことがある。当たり前のことなのだが、不正も権力なら、不正を暴くのも権力だということだ。僕はイギリスで友人をひとり失った。素晴らしい能力と正義感の持主だったが、不幸にして彼は権力は持っていなかった。だから殺されたんだ。力を持たない正義ほど虚しいものはない。多分、一介の個人の正義は敗北するしかないのかも知れない。・・・とはいえ、たとえそうであっても戦うことをやめないのが、人間の良心なのだろうけどね」
「手島さんの良心と正義感は、私たち課員の道標なんです。信じて下さい」
「カカシじゃなかったのか」と手島は照れ笑いした。
「まあ、道標だと言ってもらえて僕は嬉しい。だが、道標に従って先へ進むのは君だ。坂上、今は僕の忠告を聞いてほしい。まず《リヴィエラ》を忘れてくれ。それから、上級職のキャリアを無駄にするな。権力を目指せ。最後に・・・僕をもう上司だとは思わないでくれ」

ネタバレになるので書きませんが・・・・
小説は、北アイルランドでの穏やかな後日譚で終わることになります。

国家とはつまるところ権力なんだろう。その権力には正義もあるし不正義もある。
不正義を見逃すことのできない頑固な人間が、多かれ少なかれどの国にもいるのが救いと言うか、希望でしょうね。
・・・・すべからく文学は、希望を描いてほしいものです。

スパイ小説を紡ぐには国家観とか、国益とか、ロビー工作とか、防諜組織に関する知識とか、外せない業界的知識が必要なわけだが・・・・
女性作家で、この難行に挑戦した蛮勇・・・・というか作家魂がすごいですね♪


amazon高村薫
1953(昭和28)年、大阪市生れ。
1990(平成2)年『黄金を抱いて翔べ』で日本推理サスペンス大賞を受賞。1993年『リヴィエラを撃て』で日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。同年『マークスの山』で直木賞を受賞する。1998年『レディ・ジョーカー』で毎日出版文化賞を受賞。2006年『新リア王』で親鸞賞を受賞。2010年『太陽を曳く馬』で読売文学賞を受賞する。他の著作に『神の火』『照柿』『晴子情歌』などがある。


フィリップ・マーロウがつなぐ輪

『リヴィエラを撃て』1
『リヴィエラを撃て』2
『リヴィエラを撃て』3





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Last updated  2024.02.14 00:04:30
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