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連合赤軍の弱さと愚かさを高みから非難し愚弄すればするほど、それは生き延びた戦中派の一員に他ならないおのれに戻ってくる。だから吉本氏の無意識は連合赤軍を 「否認」 した、するしかなかったのではないか。 ちょっと注釈的に言いますが、論の中で使われている 「否認」 という用語は、 フロイト が、たとえば幼児が叱られるのを怖がって、濡れたパンツのまま、「お漏らしをしていない」と主張し、そのことを信じ込むというような、心性をいいますが、 吉本隆明 の戦後社会論が、最初に遭遇した落とし穴として出会った事件という、 笠井潔 の判断が書かれていると思います。それは 笠井自身 が 吉本隆明 を揶揄しているというような話ではありません。彼自身とっても大事件であったことは 「テロルの現象学」(ちくま学芸文庫) という評論に如実だと思いますが、ぼくの衝撃は、そこではありませんでした。
おまえたちのようような愚劣な結末を迎える以外にないから、戦中派は戦いを途中でやめることにした。われわれは恥辱に耐え、おまえたちを平和と繁栄のなかで育てようとした。それなのに、なんということか・・・・・。
外来勢力への日本民衆の 「総敗北」 は1945年にも反復され、75年もの長きにわたってアメリカが、 「グラフト」 の存在を塗り隠した超越的支配者として日本列島に君臨し続けてきた。
たとえアメリカの属国であるとしても、若い高卒女子労働者が「アン・アン」を手本にファションを愉しめる豊かな日本であれば肯定できる、肯定しなければならないと吉本氏は、進歩派として発言する 埴谷雄高 に語った。それから40年が経過し、日本の若者は1960年代の学生が求めた本来性の感覚も、80年代の高卒女子労働者が享受した豊かさ生活も失い、しかも「疎外感」を街頭蜂起として流出させるためのノウハウさえも奪われている。21世紀の時代性はどうやら、吉本氏からの三つの引用を原点とした思考では及ばない地点まで達しているようだ。( 笠井潔「吉本隆明と連合赤軍事件」)
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