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2019年01月26日
チェコ鉄道事情四度続(正月廿四日)
承前
二つめは変動する運賃である。同じ区間の同じ座席でも、季節によって、同じ週でも曜日によって、同じ日の中でも時間帯によって、高くなったり安くなったりする。購入の時期による価格の変動は、あるのかもしれないが、現時点では確認できていない。この価格変動制は、レオ・エクスプレスもより極端な形で追随し、チェコ鉄道でも最近部分的に取り入れられている。全席指定ではないチェコ鉄道が、競合する私鉄の走っていない路線でも便指定の割引を行っているのは、立ち乗りを減らすために乗車率の低い時間帯の便に乗客を誘導する目的もあるのかもしれない。
先週末に所用でプラハに行くのにレギオを使ったのだが、全体的に昨年の同時期より高くなっている印象で、便によっては一番安い席でも199コルナになっていた。これではチェコ鉄道の便を指定した割引乗車券と大差ない。一番安い時期の安い便であれば100コルナぐらいですむこともあるからほぼ倍である。実際に乗ったのはビジネスで、行きは399、帰りは299と、100コルナも差があった。便によっては499というのもあったかな。ペンドリーノは2等で290コルナだったから、コーヒー、紅茶を考えると399なら許容範囲ではあるのだけど、499は微妙である。
三つ目は、座席のグレード間の格差を目に見える形でつけたことである。チェコ鉄道の電車にも1等席と2等席の区別はあって、1等の運賃は2等の二倍ぐらいなのだが、ペンドリーノでも座席の色が赤になるぐらいの違いしか見えない。多少一人分のスペースが広くなっているにしても、見てわかるほどではないし、以前1等に乗った人の話では、取り立ててサービスがいいというわけでもないようだ。だから、チェコ鉄道の電車では2等席が満席でも、1等席を利用する人はあまり見かけない。使うとすれば、混雑が予想される電車で確実に座るためという理由だろうか。
それに対して、レギオジェットでは、現在の一番下のローコストは、通路の両側に2つずつ、一列に4つの座席が並び、一人当たりのスペースはチェコ鉄道の古い客車と大差なく、座席も写真で見るだけでも安っぽさを感じさせるもので背を倒すこともできない。車内サービスは一切なく、水と新聞だけはセルフサービスでもらえるが、車内販売は利用できない。プラハ−オロモウツ間は、一番安い時期の一番安い時間帯で100コルナぐらいだが、一番高いのは200コルナ以上で、チェコ鉄道の運賃を越えることもある。
二番目のスタンダードは、座席の広さは変わらないが、質が格段に上がり、前の座席の背には映画を見たり音楽を聞いたりすることができるモニターがついているという航空機的なつくりになっている。ただし、向かい合わせになっている4人がけの席もあるので、その設備を利用できない場合もある。コンパートメントの場合には6人掛けで、8人掛けだった昔のチェコ鉄道の車両よりは、一人分のスペースは広いはずなのだけど、実際に座ってみるとそんな印象は全くない。コンパートメント自体が狭いのだろうか。
車内サービスは、普通に利用でき、水や雑誌新聞は配布に来るし、リンゴジュースとアメリカンコーヒーかミントティーなんかも出るのかな。コンパートメントの席だと、もらっても置き場に困るのだけどさ。運賃の幅は130コルナぐらいから300コルナ超までで、ペンドリーノより高い場合もある。
たしか、参入当初は、ローコストは存在せず、一番安いのはスタンダードだったのだが、一度、安いというのと、話の種にとで利用したことがある。その後長らく使用しなかったことからも、あまりいい印象は抱かなかったことは確実なのだが、乗客は多く、混んでいたから、安さを求める人たちが多いのも事実なのだろう。客層のせいか、せわしない、落ち着かないという感じで、座席も窮屈だったし、これなら、多少高くてもペンドリーノを使った方がましだと思ったのである。
その上のリラックスは使用したことはないが、ビジネスと同じ車両に置かれているので、様子を見たことはある。座席はペンドリーノと同じで通路を挟んで片側は二人掛け、反対側は一人掛けになっていて、ところどころ向かい合わせになっている席もある。席の作りはスタンダードより上で、ペンドリーノよりも広そうである。
一番上のビジネスとのサービスの違いがどのぐらいあるのかは知らないが、問題は価格差で、料金を比べて、これならビジネスでいいやと考えてしまうことが多い。せいぜい50コルナの差では試す気にはなれない。ひどいときには150コルナの差があることもあるようだけど、そういう高い時期はプラハ行きを避けてしまうのが人情というものである。
2019年1月24日23時55分。
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2019年01月25日
チェコ鉄道事情続三度(正月廿三日)
実は、ペンドリーノ導入後、レギオジェットの前に、プラハ−オロモウツ−オストラバ間を結ぶ路線に参入ようと計画した企業が存在する。たしか2006年ぐらいにリベレツのほうでローカル線を運行している会社が、ドイツから中古の機関車と客車を購入して参入することを計画し、12月に改定される時刻表に載るところまで行ったんじゃなかったか。結局機関車を使用するための認可が下りずに計画を撤回することになった。
当時はまだ、ペンドリーノも空席が目立っていたから、時期尚早ということで、チェコ鉄道を守るための手が動いたのかもしれない。時刻表を見たときに朝のオストラバ行きか、夕方の戻りかに、チェコ鉄道の電車よりもいい時間帯の便があったから、期待したのだけどね。今から考えると、仮に参入が実現していたとしても、採算が取れずに2、3年で撤退していた可能性もある。
そんな事情もあったので、後にスチューデント・エージェンシーが子会社のレギオジェットを設立して鉄道事業への参入を発表し、時刻表に載ったときも、実現はしないだろうと悲観的に見てしまったのを覚えている。しかし、12月の時刻表の変更すぐには実現しなかったものの、翌年の秋ぐらいに初めてのレギオジェットの電車が走ったのだった。これは、タイミングがよかったというのが一番大きいだろう。
レギオジェットが参入したのは、7両編成で1便あたりの座席数を増やせず、車両の数の関係で一日の運行回数にも制限のあるペンドリーノの輸送力に限界が見え始めたタイミングだったというと、現実を理想化しすぎかもしれないが、レギオジェットの参入も、それに少し遅れてのレオ・エクスプレスの参入もこれ以上ないぐらいのタイミングだった。チェコ鉄道がペンドリーノとそれに伴う路線の高速化によって、多少高くても速さと快適さを求めるという客層を開拓することに成功し、レギオジェットやレオ・エクスプレスは、その客層をターゲットの一つにして参入したが、同時に二社の参入によって鉄道の利用客がさらに増えたのも事実である。
さて、黄色い高速バスの運行で知られていたが、実は旅行会社として航空券や宿泊の手配、国外ツアー旅行なども手がけているスチューデント・エージェンシーが、チェコの鉄道に持ち込んだのは、単なる価格競争ではなく、航空業界的な手法で、レオ・エクスプレスも当然のようにそれに追随した。
一つは、ペンドリーノと同様の全席指定である。チェコ鉄道の場合には、ペンドリーノであっても普通の乗車券に、座席指定券を購入するという形をとり、座席指定したペンドリーノに乗り遅れた場合には、乗車券を使って、次の座席指定のいらない特急、急行に乗ることができるのに対して、レギオジェットとレオ・エクスプレスの乗車券では、座席指定した電車以外には乗れず、別の便に乗る場合には、改めて乗車券を買い直す必要がある。
事前に乗車券を買う場合には、予定の変更の可能性も考えると、面倒だけど、駅について空席があったら買うという買い方なら、窓口で適当に席を決めてくれるから面倒はそれほどでもない。空席がない場合もあるけれども、窓口の脇に空席情報が表示されていて、あと何席残っているかわかるようになっているので、なければチェコ鉄道の乗車券を買えばいいだけである。チェコ鉄道なら空席がなくても通路に立っていることができるし。
全席予約を活用しているのはレギオジェットで、予約状況を見ながら客車の数を増やすことがままある。切符を買ったときには8両目が一番後だったのに、実際に乗ろうとしたら9両目、10両目が追加されていたなんてこともあった。さすがに予約を受け付け始めてから車両数を減らすことはないだろうが、便によっては最初は車両を少なめにしておいて、予約が埋まりそうになったら車両を追加するということもありそうである。
それに対して、レオ・エクスプレスはペンドリーノ的に電車の編成が決まっているのか、いつも同じ車両数で走っているような印象がある。以前一度乗ったときに使った座席予約画面で、どの便も同じ座席構成だったような記憶もあるし。チェコ鉄道の場合には、特急、急行は全席予約ではないので、レギオジェットほどの融通は利かないが、長年の利用客の傾向データを持っているので、それに基づいて車両を増やしたり減らしたりしている。増やす数には限界があるので、座れない乗客が出ることもあるけど、逆に言えば席はなくても移動だけは確実にできるのである。これはチェコ鉄道の強みと言っていいのかな。
終わらない。
2019年1月23日23時30分。
2019年01月24日
チェコ鉄道事情続続(正月廿二日)
話をペンドリーノに戻そう。ペンドリーノが走り始めた当初、それまでの特急と比べても、所要時間が大きく短縮され、座席も当時の急行や特急に使われていた古いコンパートメント式のものに比べれば、ずっと快適だったが、乗客はそれほど多くなく、最初のころはなかなか増えなかった。原因の一つは、鳴り物入りで導入したせいか、チェコ鉄道が必要以上に特別扱いしてしまったことである。
まず座席指定券がないと乗れなかった。当時から急行(R)、特急(EC/IC)は無料で座席指定することが可能だったが、座席指定などせずに乗る人が多かった。実際には乗車券を買うついでに座席も決められたから特に面倒ではなかったのだが、座席指定券が必要だという注記をみて面倒だと思う人はいたはずだ。
そして、その座席指定券が高かった。オロモウツ−プラハ間は運賃が250コルナぐらいだったと思うが、座席指定券が200コルナもしたので、普通の急行に乗るのの倍近くかかったわけである。当時毎週一回オストラバに通訳の仕事をしに通っていたが、帰りによくペンドリーノの最終便を利用していた。当然運賃よりも座席指定券のほうが高かったわけで、会社で交通費を出してくれていなかったら、ペンドリーノの利用は避けていた可能性も高い。
考えてみれば当時は、特急に乗るのにも特急料金が60コルナ必要だったのだ。カテゴリーが上のペンドリーノの追加料金がそのぐらいしてもおかしくはなかったのだろうが、割高感は否めなかった。始発のオストラバ中央駅で自分が乗った車両に他の乗客は一人もいないなんてこともあったし、満席で乗れないという状況は想像もつかなかった。その後チェコ鉄道は、特急の追加料金を廃止したが、ペンドリーノの追加料金は、廃止したり、再導入したり、値段を上げたり、下げたり、試行錯誤をしていた。適正な額を模索していたのだろう。一時期は、年に二、三回ペンドリーノを利用して、利用するたびに値段が変わっていた。
それから、ペンドリーノの乗車券専用の窓口を設置して、発券システムも独立したものにしたのも、少なくとも最初のうちは逆効果だった。このシステムが不安定で、頻繁に落ちていたのである。駅で切符を買おうとすると、乗車券だけ買わされて、座席は適当にあいてるところに座ってなんて言われることもあった。ペンドリーノ自体に不具合が起こって、真冬に暖房が効かなかったり、トイレのドアが凍り付いて開かなくなったりなんて、冗談だろと言いたくなるようなこともあった。
その後、オストラバに行かなくなってしばらくして、オロモウツの駅でペンドリーノを見て、乗客が多いのにびっくりしたことがある。プラハから乗ろうとして満席で乗れなかったこともあるし、チェコ鉄道の目標は数年がかりで達成されたということになろうか。乗客が増えたのは追加料金が安くなったというのもあるが、速くそして快適になった電車に、利用客が戻ってきたという面のほうが大きい。発券システムも含めて安定して運行されるようになり、ペンドリーノ導入のための路線の改修のおかげで遅延が大幅に減ったというのも、これまで時間のかかりすぎる鉄道を避けていた人たちが鉄道を利用し始めた理由になっているだろう。
また、ペンドリーノの利用客が増えた理由の一つとして、プラハにおける発着駅がホレショビツェから中央駅に変更されたことも考えられる。かつては、ペンドリーノ以外にもモラビアの方に向かう特急の中に、ホレショビツェから出る便があって、駅を間違えると乗れないということもあったのだが、現在ではすべて中央駅に集約されているため、近距離の各駅停車を除けば、とりあえず中央駅に行きさえすれば乗れるようになって、利用しやすくなっている。
かつてチェコ鉄道では乗客獲得のためにさまざまな模索をしていた。現在でも残っているのは、インカルタと呼ばれる会員証みたいなカードで、年会費(確か3年で300コルナ)を払うと、すべての乗車券を25パーセント割引で買うことができ、提携しているお店で割引を受けることもできる。会費の高い50パーセント割引になるものもあるのかな。
迷走していたのは団体割引で、当初は10人以上とか20人以上のグループに適用されたと記憶するのだが、一時期は二人から適用されることになって、二人目以降は、正規の運賃の50パーセントということになっていた。現在では二人からということはないはずである。往復割引も以前はあったけれども、今は往復で買っても、別々に買っても差はないと思う。土日の特別割引のSONE+とかいうのもあったなあ。以前はあちこちで大々的に宣伝していたのに、最近全く聞かなくなったから廃止されたかな。
そんな、鉄道の乗客増加を目指したサービスの中で一番効果があったのが、ペンドリーノの導入による所要時間の短縮と、現在でも引き続いて行われている新しい(一部外国の中古もあるけど)機関車、客車の導入による快適さの向上だったと言っていいだろう。そして、利用客が増えつつある中で、さらなる拡大を目指して導入されたのが、チェコ鉄道と私鉄が同じ路線を走るという政策だった。
終わらないので、もう一回か二回。
2019年1月22日22時35分。
2019年01月23日
チェコ鉄道事情続(正月廿一日)
もう一つ指摘しておかなければいけないことは、現在のレギオジェット、レオエキスプレスの成功の前提として、チェコ国内の鉄道網路線の近代化、高速化があるという点である。かつて、1990年代から2000年代初頭のチェコの鉄道網は、長期にわたって設備投資が滞っていたこともあって、老朽化が進み遅延するのが当然になっていた。線路も電車も高速走行に耐えられる規格ではなかったので、遅延なく走っても、オロモウツ−プラハで、速いものでも3時間以上、下手すれば4時間近くかかるという状態だったのだ。車両も老朽化して、暖房はあっても冷房はなく、清掃なども適当で、快適さとはほど遠い存在だった。その結果利用者離れが起こっていたといってもいい。
オロモウツ−プラハ間は、高速道路が開通していないため、当時は鉄道と自動車の所要時間が同じぐらいだったが、高速道路を使ったスチューデント・エージェンシーの直行バスが走っていたプラハ−ブルノ間は、バスを使ったほうが遥かに早く、快適でサービスもよかったらしい。値段も安かったのかな。そのため、途中の停車駅を利用する人はともかく、プラハからブルノ、その反対はバスを使う人の方が多かった。
仮にこの高速化が行われる前の時点で、レギオジェットやレオエキスプレスが、参入していたとしたら、現在ほどの成功は収めていなかっただろうことは断言できる。所要時間が大幅に短縮された上で、サービスや乗り心地が改善されたからこそ、鉄道に利用客が戻ってきたのである。
チェコの鉄道網の近代化、高速化はなかなか進まなかったのだが、転機を挙げるとすれば、チェコ鉄道が、高速化、時間短縮の切り札として、イタリアのペンドリーノの導入を決定したことだろうか。2000年前後のことで、当時ですらイタリアの十年以上前の最新列車とイタリアから来た日本人に馬鹿にされていたのだが、実際は旧型のペンドリーノであっても、その能力を十全に発揮できていないのだから、最新型を導入してもまったく意味がなかったのである。
一番最初にペンドリーノの試験運転が行われたのはプラハから北に向かう路線で、なんと各駅停車に使われていた。せいぜい数十キロのスピードで走らせながら本格的な運行に向けて問題点の洗い出しを行っていたのである。同時に導入が予定されていたプラハ−パルドゥビツェ−オロモウツ−オストラバ間では重点的な路線の改修工事が行われていた。老朽化し、また高速走行を前提として敷設されていない路線では、ペンドリーノでも時速100キロをいくらか超える程度の速度しか出せなかったのである。
線路そのものだけでなく。山間部では新たにトンネルを開削して、スピードを極端に落とさなければならなかった区間のカーブを緩やかにしたり、高速運行に向けて安全装置の設置も進められたんだったかな。全線を通じて最高時速160キロで運行できる規格で改修が進められた結果、ペンドリーノが実際に運行を始めた2005年ぐらいの時点では、プラハ−オロモウツ間を特急ECが3時間弱で結ぶところを、ペンドリーノは2時間30分ほどで走っていた。例によって遅れることも多かったけど。その後もあれこれ改修が続けられ、現在では最短で2時間2分と、もうすぐ2時間を切るところまで短縮が進んでいるのである。
路線の改修、高速化によって、ペンドリーノ以外の電車も時間の短縮が進み、停車駅が多い急行でもプラハ−オロモウツ間を、3時間以内、特急は2時間半以内で結んでいる。チェコ鉄道の所有するペンドリーノの数に限りがあるため、日によってはSCペンドリーノが走るべき時間に、普通の特急の機関車と客車を使った特急ICが走ることがある。現在ではペンドリーノでなくても、最高時速160キロで運行できるようになっていて、所要時間は途中の停車駅の数によって左右されると言っていい。ただし、レギオジェットの機関車は最高時速140キロらしく、これがチェコ鉄道の特急より時間がかかることがある理由のようだ。
この最高時速160キロというのは、チェコの鉄道網の整備、高速化の一つの基準になっていて、モラビアだと、ペンドリーノが走る区間以外にも、ポーランドからオストラバを経由してウィーン、ブラチスラバに向かう電車が走るプシェロフ−ブジェツラフ間、ブルノからウィーン、ブラチスラバに向かうブルノ−ブジェツラフ間も、特急、急行は最高時速160キロで走行している。車両によっては車内にモニターがあって、速度表示がされているので、速度を確認することができる。さすがに駅の構内を最高速で走るわけにはいけないから常時160キロというわけではないけど。
この話もうしばらく続きそうである。
2019年1月21日23時10分。
チェコのとは見た目が違うなあ。
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2019年01月22日
チェコ鉄道事情(正月廿日)
最近発見したのだが、昨年の11月に こんな記事 が出ていたらしい。「東洋経済」という雑誌の記事は、ヤフーの雑誌のところでたまに読むことはあるのだが、これは古い記事だったので雑誌のページにまで行って読んだ。新しいヨーロッパの鉄道における全体的な傾向について書かれた同じ著者の記事に紹介されていたので、珍しく検索をかけてまで読んだ。
日本で「ヨーロッパの」と枕をつけると、たいていドイツ、フランス、イギリスあたりの事例を元に、それがヨーロッパ全体に適用されているかのような、読んで損したと思う記事を書く人が多いのだけど、この著者の記事は、旧共産圏にまで目を配った本当の意味でヨーロッパについての記事だった。過去のレギオジェットについての記事にも期待して読んだのだが、期待を裏切らない内容で、読み応えもあった。
ただ、チェコの鉄道運営会社が価格競争に走っているような印象を受けかねないチェコ鉄道のコメントが紹介されていたので、チェコの鉄道における競争が単なる運賃の値下げ競争ではないことは書いておきたい。私鉄のほうが旧国鉄のチェコ鉄道より安いとは言い切れないのである。
まず、大前提として、チェコの鉄道は、一部の路線を除けば赤字である。国や地方の補助金をもらいながら運行しているのが、チェコの鉄道である。もちろん、国や地方が補助金を出すのは、住民の足を確保するのと同時に、運賃が高くなりすぎるのを抑えるという目的もある。運賃が高くなると利用者が減り、さらに赤字が膨らみ、廃線の恐れも高まる。
現時点で補助金の対象外となっているのは、チェコ鉄道の国際列車(大抵はEC)とチェコ国内の特急(SCとIC)、レギオジェットなどの私鉄の特急だけで、それ以外は、長距離を走る急行(RやEX)には国の、各駅停車には地方の補助金が補助金が出ている。両方からの補助金が出ているものもあるかもしれない。車両に運輸省や地方がお金を出していることが明記されている場合もあって、こんなのわざわざ書かせなくてもいいだろうにと思わされてしまう。
補助金を出しているからか、地方もチェコ鉄道に対して強気に、時刻表の改正や利用車両の改善などあれこれ要望を出たり、補助金の額を上げるようにチェコ鉄道側から要望があったり、それに国が口を出したり、巻き込まれたりで、必ずしも全く問題なく運営されているというわけではないが、国費で(地方の補助金ももともとは国庫から地方に分配された予算の中から出されている)、鉄道事業を支えているというのがチェコの現実なのである。
現時点ではほぼすべての補助金の出る路線をチェコ鉄道が運営しているが、昨年末のニュースで、何年か後からの補助金つきの運行会社の入札が行なわれ、プラハ周辺の中央ボヘミア地方は、ドイツ鉄道の子会社のアリバが、モラビアのブルノとオストラバを結ぶ区間はレギオジェットが落札したと言っていた。
ちなみにチェコ国内で最初に走った私鉄は、チェコ鉄道が補助金をもらっても採算が取れないと投げ出した路線の運行を引き受けたものだった。たしか北ボヘミアの小さな町から国境を越えたところにあるドイツの町を結ぶ路線だったと記憶する。かつてのオーストリア時代に敷設された鉄道の中には、現在の国境線を出たり入ったりしながら走っているものがあって、かつては国境管理の関係上途中の駅に停車しなかったり、停車しても乗降不可だったりして、大変だったろうと思わせる。この路線もそんなものの一つじゃなかったかな。今はEUで何の問題もなくなったけど。
それから、シュンペルクからベルケー・ロシニのほうに向かう路線は、1997年にモラビアを襲った水害で壊滅的な被害を受けチェコ鉄道では復旧をあきらめてしまった。それに対して住民の足の確保のために沿線の町が共同で、路線を復旧し運営会社を設立して10年以上にわたって運行し続けていた。これも、私鉄である。現在では再びチェコ鉄道による運行に戻っているけれども。
つまり、チェコにおける最初の私営の鉄道会社の参入は、チェコ鉄道の競争相手というよりは、小回りの利かないチェコ鉄道では対応しきれない部分を補完する役割が求められていたと言える。同じ路線をチェコ鉄道と私鉄が走るということはなく、ごく一部の路線を私鉄が運行していたにとどまる。国鉄民営化直後の日本のJRと地方のローカル線を運行した私鉄の関係と似ていると言えば言えるか。
長くなったので以下次回。
2019年1月20日24時。
2019年01月21日
四度ハンドボール男子世界選手権2019開幕(正月十九日)
グループCはもう一つの開催国デンマークの入ったグループなのだが、首都のコペンハーゲンではなく、ヘルニンクで試合が行なわれている。ヨーロッパからは他にノルウェー、オーストリア、アフリカのチュニジア、南米のチリ、アラブのサウジアラビアという構成である。予想はデンマークとノルウェーの勝ちぬけは確実で、おそらくサウジの勝ちぬけはないというところまではいったのだけど、そこから先が見えなかった。オーストリアは今大会に出場しているヨーロッパのチームの中では、一段劣る印象があるし、チュニジアは自国開催の際に上位に進出したことがあるとはいうもののドイツでどこまでやれるか不明だし、チリは予想もつかない。
結果は、ミケル・ハンセンを擁するデンマークが全勝で1位、二位はスカンジナビアの正統派ハンドボールの一角を担うノルウェー。三位には最終戦でオーストリアを下したチュニジアが入った。4位はチリ、5位はオーストリアで、6位は予想通りサウジアラビアだった。オーストリアならチェコのほうが強いぞと思うくらいなので、プレーオフのくじ運がよくての出場だったのだろう。
外国の、つまりはチェコ以外のハンドボールの選手の名前はなかなか覚えられなくて、テレビで中継を見ながら、以前見たことは覚えていても選手の名前が出てこないことが多い。でも、デンマークの中心選手、ミケル・ハンセンの名前はさすがに覚えていた。フランスのたしかカラバジッチも覚えていたけど引退したから、現時点で肯定的な意味で名前を覚えている唯一のハンドボール界のスーパースターがハンセンだといっていい。マケドニアのラザロフも覚えているけど、ハンセンと違って、この選手には反感を抱くことの方が多いからなあ。
最後のグループDの会場がコペンハーゲンになったのは、橋を渡ればすぐスウェーデンから観客が応援に来られるからに違いない。ということで、このグループの勝ち抜け候補その1はスウェーデンである。ヨーロッパのチームはもう一つハンガリーしか入っていないので、ここも勝ちぬけが予想された。残りはエジプト、アンゴラのアフリカ二国に、アルゼンチンとアラブの笛の主役、カタールである。最悪がアラブの笛を生かしたカタールの勝ち抜けだが、個人的には大会前の親善試合でチェコと引き分けたアルゼンチンが二次リーグに進出することを願っていた。
結果的にはこのグループが一番の混戦で、すべてのチームが勝利を挙げている。スウェーデンは強さを発揮して全勝。二次グループ以降は個人的にも応援するつもりである。それは、ゴールキーパーの名前がパリチカ、つまりチェコ系の選手だからである。何でもおじいさんの代にスウェーデンに亡命したらしい。2位はハンガリーだが、3位に入ったエジプトと引き分けているため、二次リーグに持ち越す勝ち点はどちらも1点ずつである。
このグループの最終順位に大きな影響を与えたのは、最終戦のアルゼンチンとカタールの試合だった。得点経過を見ると、最大5点あった差を追いつかれたカタールが、最後に1点とって勝っている。疑えばいくらでも疑えるのだけど、いや、アラブの国の試合結果に関しては、特にアラブの国が勝った場合には、ついつい疑わずにはいられないのが、ハンドボール界の現状なのである。
グループCとDの上位三チームからできる二次グループIIの会場はヘルニンクになる。持ち越す勝ち点は以下の通り。
デンマーク 4
ノルウェー 2
チュニジア 0
スウェーデン 4
ハンガリー 1
エジプト 1
ここからは、開催国デンマークと、隣国スウェーデンが準決勝に進出すると予想しておく。願望も含めた優勝予想はスウェーデンである。チェコ系の選手が確実にいるのはこの国しかないしさ。
一次グループ敗退チームは、それでさようならではなく、プレジデントカップと呼ばれる順位決定戦に回るのだが、ABの同じ順位の国、CDの同じ順位の国が試合をした後、勝った同士、負けた同士で試合をして順位を確認させる。4位の会場はケルン、5位、6位はコペンハーゲンが会場になっている。日本には是非朝鮮似非合同チームに勝って、21位決定戦に回って欲しいものだったのだけど、逆転負けを喫してしまった。
スケジュール表 を見てもよくわからないのが、2次グループの5位同士、6位同士で争う、9位、11位決定戦がどこで行われるかである。5位と7位の決定戦は決勝と同じヘルニンクで行われるみたいだけど。
2019年1月19日23時25分。
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2019年01月20日
三度ハンドボール男子世界選手権2019開幕(正月十八日)
日本ではほとんど話題になっていなさそうな、ハンドボールの世界選手権、日本代表も三試合目以降は結構いい試合しているし、たまには出場国とか、大会のフォーマットなんかを紹介するのもいいかもしれないと考えて書き始めたのだけど、その目的は3回目にしてようやく達成できそうである。とはいえ、記事を上げるのが、一次グループが終了して二次グループが始まった日の夜になるというタイミングの悪さである。
今年の大会は、2017年の女子の世界選手権を開催したドイツと、隣国デンマークが合同で開催することになっている。出場国はこれまで同様、24カ国だが、一次グループの上位3チームが、二次グループに進出し、二次グループの上位2チームが準決勝に進むというフォーマットに変更された。これは昔のフォーマットに戻ったのだという。前回まで一次グループで上位4位に入れば次のステージに進めていたのと比べると、一次グループの重要性が増したと言っていいのだろう。
グループAは、開催国ドイツの入ったグループで、試合会場は首都ベルリンである。他にこのグループに入ったのは、前回優勝のフランス、予選のプレーオフでチェコを破ったロシア、バルカンハンドボールののセルビア、リオオリンピックでは意外な(失礼)強さを見せたブラジルに、政治的にスポーツを悪用する南北朝鮮である。
開始前の予想では、フランスと開催国のドイツの二次グループ進出は確実だと見ていて、三つ目の席を、できればアジアの韓国が占めてくれればと思っていたのだが、似非合同チームは全戦惨敗で最下位に沈むがいい。ということで、ブラジルに期待することにした。ヨーロッパチームばかりが上に進むのではつまらなすぎる。バルカンのチームにはとっとと消えて欲しいし、ロシアにはチェコが負けた恨みがあるのである。
結果はドイツ、フランスは、4試合目終了時点で勝ち抜けを決め、最終戦で結果、朝鮮を下して勝ち点を6にしたブラジルの勝ちぬけが決まった。ブラジルが勝った時点では、後の試合でロシアが勝てば勝ち点で並ぶ可能性があったが、同勝ち点の場合には当該チーム同士の対戦結果が優先されるはずなので、この時点でブラジルの勝ちぬけが決まった。夜の試合では、ロシアがフランスを追い詰めたものの最後に逆転負けしたので、勝ち点が並ぶこともなかったのだけど。
最終順位は1位フランス、2位ドイツとなったが、二次グループに持ち越す勝ち点は、勝ち抜けチームとの対戦結果だけなので、ドイツもフランスもともに3点で、ブラジルは0点となる。グループ4位はロシア、5位はセルビア、6位は朝鮮というこちらが期待したとおりの結果になった。
日本が入ったグループBの会場はミュンヘン。このグループには、スペイン、クロアチア、アイスランド、マケドニアのヨーロッパ四国に、アラブのバーレーンが入っている。最初に見たときは、スペインの勝ち抜けは確実だと思ったのだけど、他はクロアチア、アイスランド、マケドニアのどこが上に行ってもおかしくない。希望はバルカンハンドボールの権化、マケドニアの敗退である。ドイツが会場だからバルカンの笛は吹かれないと信じたい。
日本は勝てるとすればバーレーンだろうけど、アラブの国に勝てるかなあ。アジアでの大会よりはましだけど、アラブの笛ってのはハンドボールにはつき物だから。大会前にポーランドで、チェコ代表が日本と試合をして負けているのだけど、怪我人病に続出でベストメンバーじゃなかったから、その結果をもとに、日本がヨーロッパのチームに勝てるかもと期待するのは無理があった。2017年の女子のように番狂わせを演じてくれればそれはただただ嬉しいだけだけど、難しいだろうなあ。
結果は、対戦順の関係でクロアチアが3戦目で勝ち抜けを決め、4戦目でスペインが続いた。残りの3席目はアイスランドとマケドニアが直接対戦で決めることになった。その結果、勝ったアイスランドが勝ち抜けを決め、マケドニアは4位で敗退。5位になったのは、ともに全敗で迎えた最終戦で日本にちょっと怪しい逆転勝ちを決めたバーレーン。怪しいとは言っても得点経過からの憶測で実際に見たわけではないので、これ以上批判するのはやめておこう。
このグループAとBの上位三チームずつが集まって、二次グループIを構成する。会場は、ベルリンでもミュンヘンでもなくケルン。両グループとも移動することになるから公平といえば言えるのかな。二次グループ開始の時点で一次グループから持ち越した勝ち点は以下の通り。
フランス 3
ドイツ 3
ブラジル 0
クロアチア 4
スペイン 2
アイスランド 0
このグループからは、一次グループ終了時点で、世界選手権で23試合無敗を続けているフランスと開催国ドイツの準決勝進出を期待しておこう。ちなみに準決勝はドイツのハンブルクで行なわれ、決勝と3位決定戦は、デンマークに移ってヘルニンクで行なわれる。あちこち移動が大変な大会である。
2019年1月18日23時30分。
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2019年01月19日
ハンドボール男子世界選手権2019開幕続(正月十七日)
ハンドボールについて書くつもりが、金氏朝鮮の所業に腹を立てるあまり、あれもまたハンドボールについてではあったけど、今大会のハンドボールそのものについては書きそびれてしまった。一次グループもおわりに近づき、二次グループに進出するも決まりつつあるので、気づいたこと、気になることをいくつか書き留めておこう。
一番大事なのは、これもハンドボールそのものとは直接関係はないのだけど、新たな特徴的なハンドボール用語を覚えたことである。その前に、ハンドボールの中継を見ていると(聞いていると)、「trhák」が連発することは指摘しておかねばなるまい。日本のハンドボール用語だと速攻という身も蓋もない言葉で表現されるプレーが、一つ目のトルハークである。
もう一つは、得点差のつかない均衡したゲームで、片方のチームが連続して得点を決めて突き放すような状況を指す。大抵はキーパーの好セーブや、相手のミスから、トルハーク1を連発して、スコア上もトルハークになるということが多い。本当に強いチームは終盤まで競っていても、最後にトルハークを決めて勝つものである。ちなみに日本代表はやられるほうね。
テレビで見られた月曜日のスペインとの試合は、スペインのトルハーク2は、キーパーを中心に守備で頑張ってぎりぎりで防いでいたけど、トルハーク1は何度も食らっていた。日本側のトルハーク1は、後半に1本あったきりだったし、攻撃が、コンビネーションで相手を崩すところまではいっても、シュートが決まらないというのが多くて……。
この試合、日本がスペイン相手に前半はリードして終了するなど大健闘だったのだけど、会場の観客もチェコレビの解説者も、アウトサイダーの日本の予想外の頑張りに大喜びで、なぜかクロアチアのファンたちが熱心に日本を応援していたし、見ていて本当に面白かった。スペイン相手にあれだけロースコアのゲームに持ち込めたのだから、あの1点差に詰め寄れるはずだったペナルティが決まっていれば……。何とか勝ち点につなげてほしかったなあ。チェコが出ていないこの大会、日本を応援するしかないのだから。
いや、でも、これだけトルハークが連発されるのに、トルハークという言葉のスポーツでの意味を知らないチェコ人がいるというのはどういうことなのだろう。ハンドボールほどではないにしても、陸上や自転車、スキーなんかでもしばしば出てくるんだけど、新しい言葉を身につけることを意識しつつ中継を聞いている学習者とは違って、チェコ人は集中してコメントを聞いていないということなのかもしれない。一番よく使われるハンドボールの試合の中継を見ている人が少ないというのも理由のひとつだろうけど。
話をもとに戻そう。新たなハンドボール用語である。日本国内でも地域によって、いや同じ県内でも学校によって使う言葉が違うというのはよくあるのだが、「ロシア人」とか「ロシア風フェイント」という言葉を使っている人たちはいるのだろうか。チェコ語では、「Rusák」でセンターの選手が、ディフェンスの選手を抜くのによく使うフェイントを指す。
最初にこの言葉に気づいたのが、ロシアとセルビアの試合だったので、文字通りロシア人、ロシア選手のフェイントと理解していたのだが、ロシア人を「Rusák」と呼ぶのは、あまり褒められたことではないので、元ハンドボール選手の解説者が使うならともかく、チェコテレビのアナウンサーが使うのにはどことなく違和感があった。
そうしたら、「ロシア選手がロシア人を使ってセルビアのディフェンスを抜いた」とか、「ロシア人のロシア人は効果的だ」みたいな、ちょっとありえんだろうという表現も出てきて、最後は「セルビアの選手がロシア人を使ってロシア選手をかわした」とかいうのを聞いて、ロシア人はロシア人ではなくて、あるプレーを指しているのではないかということに思い至った。最初は別な言い方で「ruský náznak」だか、「ruská kuli?ka」だかいうのを聞いても、フェイントだと理解できなかったんだよなあ。でもこのアナウンサー、ロシアの試合だからということで、意図的にこの「ルサーク」を連発していたはずである。おかげで新しい表現を覚えたからよしとしよう。使う機会はなさそうだけど。
このフェイント、80年代の中学レベルのハンドボールではほとんど見かけなかったので、日本で何と言われているか知らなかったのだけど、探してみたら出てきた。とりあえず これ 。「リバースフェイント」、うーん、聞いたことないなあ。ディフェンスの前でボールを持った手を大きく振り回すことになるから、松脂使用禁止だった中学生じゃあできなかっただろうなあ。
また、本題からは外れていってしまった。
2019年1月17日23時10分。
2019年01月18日
ハンドボール男子世界選手権2019開幕(正月十六日)
二年に一度のハンドボールの世界選手権が、ドイツとデンマークで始まった。チェコ代表はプレイオフでロシアに負けて出場できなかったのだけど、チェコテレビが放映権を手に入れていたらしく、毎日、1試合か2試合中継してくれている。チェコの出ない世界選手権を中継するぐらいなら、去年のヨーロッパ選手権を、チェコチーム大活躍だったし、中継してくれればよかったのにとつい怨み節も漏れてしまう。
チェコのハンドボール協会のホームページで、世界選手権の中継を報じる記事を読んだところ、ヨーロッパ選手権がチェコテレビで中継されなかった事情が書かれていた。ヨーロッパ選手権のチェコでの放映権は、長期的に有料放送のスポーツ専門局が握っていてチェコテレビには手が出せないらしいのだ。世界選手権のほうは、ヨーロッパ以外の国の代表も出場することで、特に1次リーグの試合が一方的になることが多いから、民放は手を出さなかったのだろうか。チェコテレビは、去年のチェコ代表のセンセーショナルな活躍を見て、出場権を逃すことはあるまいと放映権を獲得したものかもしれない。
チェコは出ていないとはいえ、世界レベルのハンドボールを見られるのは嬉しいので、初日の木曜日(10日)のドイツでの開幕戦は、仕事を早めに切り上げてまで見た。正確には貧血か、体を冷やしすぎたせいかで、テレビが見られそうにない常態だったのを、何とか快復させたというのが正しいのだけど。とにかく冬の寒さにはうんざりである。
開幕戦の中継を見始めてさらにうんざりさせられることになったのが、この記事を書くのが遅くなった理由である。開催国のドイツが開幕戦に出場するのはいい。その対戦相手がアウトサイダーのアジアの国だというのもいい。それが、北でも南でもない「Korea」というのはどういうことなのか。中継のアナウンサーによると、南の韓国がアジア大会で3位に入ることで出場権を獲得し、そのチームに北が追加の選手を送り込むことで合同チームの出場ということにしやがったらしい。
こんな愚行は、無駄に政治化して腐臭を放つIOCの専売特許かと思っていたが、国際ハンドボール連盟も愚かさと悪しき政治性では引けをとらないのだった。開催国に対する、判定における過度の配慮とか、メインスポンサーたるアラブ諸国に対するごますりとか、運営の不敗を象徴する事例を挙げていったらきりがない。アジアのハンドボール連盟に比べたら多少はましだけど、これは比べる相手が悪すぎるだけである。
二つ以上の国別協会で、合同の代表チームを組織したり、合同のリーグを運営したりするのを禁止しているサッカーと違って、ハンドボールはその辺の縛りは緩い。だから、合同チームを作ること自体にとやかく言うつもりはない。ただ、合同チームで世界選手権に出場したいのなら、予選から合同チームで臨むべきなのだ。それを、ごり押しで合同チームの参加を認めさせ、北朝鮮の選手の分だけ、登録メンバーもベンチ入りメンバーも増やすというのだから、話にならない。
予選の段階から長期間一緒に苦労することで、北と南の選手たちの相互理解が深まったり、南北統一に向けての意志が強まったりすることはありえるけれども、それも北の選手がお客さんのように試合結果に関係のないところで短時間だけ出場するというのではなく、戦力として勝ち抜けに貢献するか、戦力が落ちることを覚悟で常に出場させて、南の選手がカバーすることで勝ち抜けを決めるかした場合だけだろう。
そういう形での合同チームであれば、外野の人間も応援しようという気になるのだが、この試合では、ドイツに一方的に負けているのを見て自業自得だとしか思えなかった。韓国の選手たちは自分たちが出場権を獲得した大会に、北の選手が政治的な理由で出場できることになり、そのため自分の出場時間が減りかねないことについて、心の底から納得しているのだろうか。
南北朝鮮の、朝鮮半島統一を掲げれば何をしてもかまわないという姿勢には、反感しかわかない。この手の所業を美談に仕立てるマスコミも信用ならない。去年のオリンピックの女子ホッケーもそうだが、今回の件もどう考えても政治によるスポーツの悪用以外の何物でもない。それを許すスポーツの側の罪も大きいのだが、一番許されないのは両国の政府である。この手の大会から追放するのが正道だと思うが、それが期待できない以上は、今年の12月に熊本で行われる女子の世界選手権で、このような大愚行が繰り返されないことを祈るしかな。提案されても拒否するのが開催国としての責任である。
2019年1月16日23時30分。
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2019年01月17日
読者?(正月十五日)
ブログ関係でちょっと新しい展開があった。ちょっと前のことなのだが、ブログの管理ページに入ったら「読者」のところに数字「1」がついていたのである。読者になるとかいう機能があるのは知っていたけれども、それが何を意味するのかよくわからず放置してあったし、これからも放置する予定なのだけど、せっかくなので、登録されていたブログを覗いてみた。
ブログを始められたばかりの方のようで、文書の書き方指南のような本が何冊か取り上げられていた。ブログの文章を書く参考にということなのかな。個人的には、所謂文章読本の類はほとんど読んだことがなく、三島由紀夫の文章読本について、栗本薫が「グイン・サーガ」のあとがきで言及していたのを覚えているくらいである。
このブログの文章も、行き当たりばったりで書いているので、時間があるときには全体の結構とか考えるけど、余裕がなくて細切れに書くことも多く、そうなると、最初と最後がなんだかずれているということも多い。同じようなことを繰り返すのはもちろん、同じ表現が頻出するのも問題である。推敲しろよというのは簡単だけど、締め切りに迫られて、自分が設定しているだけだけど、ついつい次を書くのを優先してしまう。
そういえば、どこかでこれまで書いた文章を全面的に推敲しなおして、最初の記事から間違いを修正したり、よくわからなくて放置した記事にタグをつけるというのをやってみたりしようかとも思ったのだが、開始から三年以上の月日を経て1000以上も積み重なった駄文の山に、ため息をつくしかない。せめて、チェコ語に関する記事だけでも何とかしようかなあ。参考にしてくれている人はいないわけではなさそうだし。
そんなでたらめな文章を書き散らしている人間が、唯一ちゃんと読んで、書かれていることを少しは意識しながら文章を書いているのが、黒田龍之助師の『大学生からの文章表現』(ちくま新書、2011)である。副題に「無難で退屈な日本語から卒業する」とあるように、型通りの文章を書かないことを考えさせてくれる本である。小学校から高校まで、作文が嫌いだったのは、型にはまった文章を書くことが期待されていたからかと、この本を読んで納得してしまった。
内容は、著者が大学で行なった文章を書くことをテーマにした授業の再現で、実際に学生たちが書いた文章の、修正前、修正後も上げられていて、文章を書く際の参考にならなくはないのだが、読むのが楽しくて、特に参考にしようなどと考えては読んでいないので、この本に書かれたことが、我が文章にどのぐらい反映されているかというと、心もとない。
一つだけ、意識していることがあるとすれば、日本人の書く文章は「思う」を使いすぎだという指摘(正確にどんな書き方がされていたかは覚えていない)だろうか。これは、あれこれ文章を書いていた大学時代は意識して、「思う」を使わないようにしていたのだが、チェコに来てからはすっかり忘れていて、本書を読んだあとに、自分が書いた文章を読み返して、「思う」の多さに頭を抱えたことがある。
読んだ直後、一時は、一つも使わずに文章を書こうと肩に力が入っていて、余計な時間がかかったり、不自然なわかりにくい文章が出来上がったりしていたが、最近は、そこまでこだわらずに、「思う」を使えるようになっているのではないかと思わなくもない。自分の文章を客観的に評価する能力はないから確信はないのだけどさ。
一般的な、文章の書き方指南を批判的に取り上げていたのも覚えている。その手の指南書で書かれるであろう、一つ一つの文を短くして簡潔に表現したほうがいいってのが不可能に近い人間としては、師の意見に大賛成だった。文章にはリズムというものがあって、短文ばかりを積み重ねていくのは単調になりがちである。だからといって我が文章のように長文が果てしなく続くというのも読みにくいことは重々わかってはいるのだけど、せっかく書くとなると、ついつい文を長くしてしまうのである。これはもう性としか言いようがない。
ということで、文章を書くための本の紹介だった、のかな。カテゴリーはブログではなく別のところにしよう。
2019年1月15日23時55分。